閑話7-16 聖氷と闇炎の姉妹たちの会話
「まあ、時間を稼ぐ分には十分な効果だけどね」
「でも、いずれは大変なことになるんじゃ……」
私の言葉を聞き、クロネが不安そうに呟く。
第二王女様に魔法が効かないことがわかり、相手が物理攻撃に変化する。
そうなった後の第二王女様の悲惨な末路を想像したのだろう。
だが、私はそこまで心配する必要はないと思う。
「正妃様たちが第二王女様の体を傷つけることはないと思うわ」
「どうしてそんなことが言えるの? 正妃様たちにとって、第二王女様は邪魔な存在なんでしょ?」
「まあ、それはそうなんだけど、だからといって利用価値がないわけじゃないのよ?」
「どういうこと?」
私の言葉にクロネが聞き返す。
「利用価値」──その言葉が気になったのだろう。
だが、警戒心は解いていない。
あまりいい意味ではないことをわかっているのだろう。
まあ、実際にいい意味ではないのだが……あくまで最悪の想定ではない、というだけだし……
「【聖属性】を持っている第二王女様は聖教国にとって、【聖女】として祭り上げたい存在なの。そんな第二王女様に危害を加えれば、いかにリクール王国の正妃様といえども、ただでは済まないでしょうね」
「……それはたしかに」
「他の国──特に帝国なんかも、【聖属性】を純粋な戦力として欲するでしょうね。だったら、自分達が使えるように無事に手に入れたいはずね」
「……」
私の説明にクロネはとうとう何も言えなくなった。
なぜか、私を見る目が少し冷たくなっていた。
こんな酷い事を考えていることに幻滅されたのだろうか?
いや、これは私が考えているわけではなく、そうなる可能性があると言うだけの話である。
私が同じ立場だったとしても、そんなことをするつもりはない。
その辺の常識はしっかりとあるつもりである。
「とりあえず、正妃様たちは自分たちの権力を盤石とするために、第二王女様を聖教国か帝国へと送る可能性があるわけ。そうすれば、後ろ盾になってくれるかもしれないしね」
「自分たちの権力のために、一人の女の子を売り飛ばすわけ?」
「まあ、あくまでも可能性だけどね? 少なくとも、国王様がご存命の間はそんなことにはならないでしょ?」
「でも、国王様に何かあったら?」
私が安心させようと告げた言葉もクロネには意味をなさない。
不安げな表情のまま質問してくる。
私は大きく息を吐き、クロネに告げた。
「私がさっきまでしていた説明はほとんど起こる可能性はないわ。だって、国王様が崩御されることなんて、現状でほとんどないんだから……」
「で、でも……」
私の言葉にクロネはまだ心配げである。
そんな彼女に私はさらに説明をする。
「国王様はお父様たちより年下なのよ? だったら、老衰や病気で亡くなる可能性はかなり低いと思うわ」
「でも、他に死んでしまう理由は……」
「誰かに殺されるの? それこそ、ありえないわ」
「なんでそんなことが言えるの?」
「さっきまで説明していたでしょ? 学長がいるからよ。学長は王家の人間を守る契約をしてる……その対象で一番大事なのは?」
「国王様?」
「そういうことよ。自国でも他国でも、国王様を狙っても意味はないのよ。学長がいる限りわね。クロネは学長に守られた国王様を殺すことができる人間がいると思う?」
「……いない?」
クロネは悩みながら答える。
答えながらも、まだ不安に思っているのだろう。
本当に心配症である。
まあ、無謀な人間よりはマシではあるけど……
「とりあえず、あくまでも可能性の話なの。実際にさっき話していたことが起こる可能性は現状で限りなく低い──グレインお兄様もあくまで保険として、魔石を送っただけよ」
「そうかな? 心配しなくてもいいのかな?」
「ええ、そうよ。というか、そもそも私たちがそんな心配をする必要がないのよ」
「なんで?」
私の言葉にクロネが聞き返してくる。
本気で理解していないようだ。
そんなクロネに私ははっきりと告げる。
「私たちがそんなことを考えたって、国王様とかに伝えることができないじゃない。心配するだけ、意味がないのよ」
「あ」
クロネが唖然とする。
まったく考えていなかったようだ。
グレインお兄様が魔石を送ったという推測から、自分達とつながっていると思ってしまったのだろう。
それは大きな勘違いだ。
いくら共通の知人がいるとしても、全くの他人なのだから……
「とりあえず、この話はもう終わりよ。それよりもグレインお兄様にお礼の手紙を書きましょう」
「そうだね」
私は話が終わりとばかりに、机に向かう。
その後をクロネがついてきた。
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