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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第三章 小さな転生貴族は怪物たちと出会う【少年編2】
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3-9 小さな転生貴族は父親の偉業を知る

※2月28日に更新しました。


「リオン様っ! 貴方は馬鹿なのですか? 友好国の、しかも貴族の令嬢に危害を加えるなんて、一国の王としてやることではありませんよ」

「いや、それは……上には上がいることを……」

「そんなことは関係ありません。獣王であるあなたが亜人に対して友好であることが有名なカルヴァドス男爵家の娘を傷つけたことが問題なんです」

「怪我はさせていないぞ?」

「気絶をさせただけで十分問題です」

「うっ……」


 部下の女性の言葉にシュンとなるリオンさん。

 体格的には圧倒的にリオンの方がでかいのに、怒られている姿を見ているととても小さく見える。

 まるで親に怒られている子供のような姿である。


「ルシフェル様、どうしてこんなことをされたんですか?」

「いや、シリウス君に魔法の真髄を見せてあげようと……」

「それで人様の家の壁を破壊したのですか?」

「いや、それは思ったより威力が出て……」

「壊したんですね?」

「……はい」


 少し離れたところでは部下の指摘に頷くしかないルシフェルさんの姿があった。

 この人が本当に魔族のトップなのだろうか、と疑問に思ってしまうほど情けない光景である。

 部下にココまで説教される王というのも珍しい気がする。

 一国の王なのだから、下手をすれば不敬罪なんてことになりかねないと思う。

 まあ、二人の性格ではそんなことをしないか……


「まったく仕方がないな、父上は。少しは王の自覚というものを持ってほしいものだ」

「ええ、本当ですよ。こちらも興味のあることに対して遠慮が無くなるところは王として治してほしいですね」

「ん?」


 声の方を振り向くと、そこには二人の女性がいた。

 いや、正確に言うならば二人の女性の近くにそれぞれ彼女たちを若くした少女たちもいた。


「えっと、どちら様ですか?」


 俺は思わず気になったので、質問をしてしまった。

 先にこちらが名乗る方が礼儀だと後で気づいたが、質問をした後では遅いので聞いてから告げることにする。

 そんな俺の言葉に女性たちは気を悪くした様子もなく答えてくれる。


「ああ、すまないな。アタシは獣王リオンの長女、リオナ=ビストだ。こっちが妹のティグリス=ビスト、ティリスと呼んでやってくれ」

「私は魔王の娘──長女のリリム=アビスゲートです。この娘が妹のレヴィア=アビスゲートです」


 二人の答えに俺は納得する。

 それぞれの王が来ているのだから、家族がついてきてもおかしくはない。

 まさか一国の王の娘──王女様にいきなり会うとは思っていなかったが……


「ご丁寧にありがとうございます。僕はグレイン=カルヴァドス、カルヴァドス男爵家の次男です」

「ふむ……まったく子供らしくないな。ティリスの方が年上のはずなのに、こっちの方が大人っぽく見えるぞ」

「これは子供らしくないというより、大人び過ぎているんじゃないですか? それでも間違いではないと思いますけど……」


 俺の対応にリオナとリリムがそんなことを言う。

 子供が大人っぽい対応をして問題があるのか?

 ここで文句を言うつもりはないが……

 そんな俺たちの会話に気が付いたのか、シリウスも会話に入ってくる。


「ビストとアビスの王女様方ですね。初めまして、シリウス=カルヴァドスです。グレインの兄で男爵家の長男です」

「まだこちらの方が年相応と言ったところか?」

「少し丁寧すぎるかもしれませんが……ですが、こちらの方がまだ合っていますね」


 シリウスの挨拶に二人はそんな反応をする。

 どうして似たような挨拶をして、そこまで異なる反応をされるのだろうか?


「おい、お前」

「ん?」


 いきなり乱暴に話しかけられ、少し驚いてしまう。

 話しかけていたのはリオナさんの近くにいた少女──ティリスだった。

 まさか初対面の相手にお前扱いをされるとは思っていなかったが、いきなり反論することはしなかった。


「お前、本当にアレン=カルヴァドス男爵の子供か?」

「そうだけど?」


 いきなりの質問に俺は首を傾げる。

 どうしていきなりアレンの息子かどうかを聞かれるのだろうか?

 前世の記憶云々で考えるのであれば半分正しいというのが答えなのかもしれないが、そういうことを聞いているわけではないだろう。

 というわけで、肯定したわけだが……


「そうは思えないな。お前も、お前の兄も……」

「「えっ!?」」


 俺とシリウスは同時に驚いてしまう。

 なんでいきなり非難されたんだ?

 そもそも彼女は一体アレンの何を知っているのだろうか?


「おい……ティリス、いきなり失礼だろう?」

「姉上、私は信じない。あのアレン=カルヴァドス様の息子がこのような軟弱者だなんて、アタシは認めない」


 妹の言葉を窘めるリオナさんだが、自分の言っていることを正しいと思っているのかティリスはまったく聞き入れる様子はなかった。

 というか、「あの(・・)」というのは、どういうことなのだろうか?


「すみません。うちの父親は一体何をしたんですか?」

「ん? 知らないのかい?」


 気になったので質問したのだが、リオナさんはその質問に驚いた様子を見せる。

 いや、他の女性陣も同様だ。

 もしかして、全員が知っていることなのだろうか?

 俺もシリウスも全く聞いたことがないのだが……


「はい。そういう話を両親はあまりしませんので……武勲をたてて叙勲されたという話は聞いたことがありますが……」

「その叙勲された理由だよ。君たちの父親、アレン=カルヴァドス男爵は【巨人殺し(タイタンキラー)】と呼ばれているんだよ」

「「【巨人殺し(タイタンキラー)】?」」


 聞きなれない言葉に俺とシリウスは首を傾げてしまう。

 一体、なぜそう呼ばれるようになったのだろうか?

 そんな俺たちの様子にティリスが質問してくる。


「お前たちはギガンテスという魔物を知っているか?」

「ギガンテス? たしか、かなり巨大な魔物で特級のさらに上──厄災級の魔物に指定されていたはず」

「たしか1体で大きな街を壊滅させかけた伝説がある魔物ですよね?」


 ティリスの質問に俺たちはすぐに答える。

 俺たちは屋敷にある本を読んでいるので、魔物の知識はかなり持っていると自負している。

 この前戦ったグレートヒポポタマスは上級。

 その上が特級でベテラン冒険者がパーティーを組んだとしても撤退を余儀なくさせるほど強いらしい。

 厄災級とは、現れただけで厄災と同じ扱いをされる魔物であり、過去には多くの街を破壊し、甚大な被害を出したらしい。

 その一種に数えられるのがギガンテスなのだが、一体どうしたのだろうか?


「アレン様はそのギガンテスを討伐したことで男爵に叙爵されたのだよ」

「「えっ!?」」


 とんでもない事実を告げられ、俺たちは驚愕する。

 厄災級の魔物が現れることすら珍しいのに、それを討伐したのがまさかのアレンだった。。

 驚かない方がおかしいだろう。


「本当に知らなかったみたいだな。うちの国では有名な話なのだが……」

「アビスでも有名ですよ? 「アレン=カルヴァドス男爵は伝説の冒険者だ」なんて噂が流れて、彼とギガンテスとの戦いの本がバカ売れしていますし……もちろん私たちも読んでいます」

「「……」」


 父親の偉業を他人から聞かされ、俺たちはどう反応していいのかわからずにただただ黙ることしかできなかった。

 まさか自分の父親がそんなにすごいとは思っていなかった。







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