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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第二章 小さな転生貴族は領地を歩く 【少年編1】
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2-15 死んだ社畜は宣言する (追加)


 音のした方へと急いで行くと、そこには5匹の生き物がいた。

 二匹については図鑑ですら見たことはないのだが、三匹のほうの動物については見覚えがある。


「あれは?」

「【ハードウルフ】だね」


 彼女が首を傾げていたので、俺は三匹の方の生き物の名前を言う。

 【ハードウルフ】──灰色の毛が特徴である狼の魔獣のことだ。

 体の大きさは地球で言うところの中型犬と大型犬の中間ぐらいで魔獣の中ではそこまで大きな部類ではない。

 戦闘能力もそこまで高くはなく、1対1であるならば1年ぐらい実戦経験を積んだ新人冒険者でもなんとか倒すことができるレベルである。

 だが、それはあくまで1対1の場合の話だ。

 【ハードウルフ】は単体で行動することは少なく、ほとんどの場合に群れで──最低でも三匹一緒に行動するという生態の魔獣である。

 一匹ではそこまで強くない【ハードウルフ】も、複数になると一気に厄介な相手になってくる。

 群れで戦うことに特化した進化をしてきたようで、単体の時とは比べ物にならないぐらいの戦闘技術を持っており、10匹もいればグレートヒポポタマスすらも倒すことができると言われている。

 単体では【ハードウルフ】は低級に分類されているのだが、5匹以上の群れの場合には上級に分類されるという珍しいタイプの魔獣なのだ。

 現在は3匹なので中級相当だろう。


「「「グルルルッ」」」

「キュッ!?」


 3匹のハードウルフたちに唸られ、その黒い毛玉のような小さな生き物はびっくりしたような声を出す。

 その声からどれだけ怖がっているのかを感じることができる。

 だが、小さな生き物はその場から逃げることはなかった。

 なぜなら……


「きゅ、きゅ~……」

「キュキュッ!?」


 小さな黒い生き物の後ろには同じように小さく、白い毛玉が倒れているからだ。

 ハードウルフに囲まれている状況で立たない──いや、立てないのだろうか?

 おそらく足を怪我しているのだろう。

 白い毛玉の弱々しい声に、黒い毛玉が怒ったような声を出す。

 言葉はわからないのだが、諦めかけている白い毛玉を黒い毛玉が励ましているとかそんな感じだろう。

 まあ、諦めなかったからといって、この状況が変わるとは思わないが……

 しかし、あの毛玉は一体何なのだろうか?

 別にすべての生き物を知っているなどというつもりはないのだが、だからといってここまでどの分類に入るかわからない生き物がいるとは思わなかった。

 例えば、知らない魚を見つけた場合、その魚の名前はわからないかもしれないが、大まかに魚類であることは理解できるだろう。

 細かい分類はできなくとも、大まかな種類なんかはわかるはずだ、

 犬猫や鳥、爬虫類などは完璧に当てることはできないかもしれないが、大体正解はするはずだ。

 けれど、あの2匹についてはどの枠に当て嵌めればいいのか全く見当もつかないのだ。

 本当に何なのだろうか、あれは?

 とりあえず、色は違うが二匹が同一種の生き物であることはわかった。


「キュウッ!」


 白い毛玉を守るべく、威勢よく黒い毛玉がハードウルフたちを睨む。

 その姿からは最後まで諦めない、そんな気持ちを感じ取れた。

 だが、気持ちだけで乗り切れるほど野生の世界というのは甘いものではない。


「「「ガルルルアッ」」」

「キュッ!?」


 ハードウルフたちがしびれをきらしたようで、三匹が一斉に襲い掛かった。

 まあ、目の前に獲物がいるのならば、我慢をしろという方が酷な話だ。

 目の前に出されたご飯を我慢ができる動物のは、そういう躾をされたペットの犬ぐらいだろう。

 ハードウルフたちが大きく口を開けて、毛玉たちに襲い掛かる。

 その光景を見たアリスが叫ぶ。


「グレイン、あの子たちを助けてっ!」

「了解だよっ、【ストーンバレット】」


 俺はアリスの言葉に準備をしていた魔法を放つ。

 正義感の強い彼女ならば、この状況下ではあの毛玉を助けようと思うだろう。

 だが、俺たちはハードウルフに気付かれないために少し離れた位置から状況を見守っていた。

 そのため、襲い掛かろうとしたハードウルフを止めるために近距離の攻撃は使えなかった。

 ならば、彼女がとる行動は俺に指示を出すことだ。

 そして、指示を出されるだろうと思っていた俺は魔力を操作して、すぐにも放つことができるように準備していたのだ。


(((ドドドドッ)))

「「「ギャンッ!?」」」

「「キュッ!?」」


 俺の放った【ストーンバレット】は毛玉たちとハードウルフたちの間に飛来し、いくつかがハードウルフの顔に直撃する。

 突然の衝撃にハードウルフたちは悲鳴を上げ、思わず後ずさってしまう。

 あと、突然のことに毛玉たちも驚きの声を上げていた。

 まあ、それも仕方がない事だ。

 そんなことを考えながらも、俺とアリスは毛玉たちを守るように前に立った。


「流石にこんなかわいい生き物を見殺しにするのは良心が痛む。お前たちには何の恨みもないが、ここは助太刀させてもらうぞ」


 俺はハードウルフたちに向かって、はっきりと宣言した。

 といっても、この場で俺の言葉を理解できるのはアリスだけだろうが……


「……」

「なに?」

「……別に……(ブフッ)」

「我慢するなら、最後まで我慢してよっ!」


 アリスが我慢できずに噴き出したので、俺は思わず文句を言ってしまった。

 いや、自分でも少し恥ずかしいことを言った気がするけど、だからといって噴き出さなくてもいいだろう。

 これから戦わないといけないのに、緊張感のかけらもないじゃないか……







ブックマーク・評価等は作者のやる気につながるのでぜひお願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


本日は休みがとれたので、頑張って複数話投稿しようと思います。

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