プロローグ ものすごくタフな相手
第七章始まりました。
「「はあああああっ!」」
気合の入った掛け声とともにアリスとティリスが同時に攻撃する。
アリスの振るった氷の大剣とティリスの腰の入った蹴りが相手の背中に直撃する。
だが……
((ギイインッ))
空間に鳴り響いたのは非常に鈍い音だった。
当然、ダメージなど通っているはずがない。
それに気が付いた二人は非常に悔しげな表情を浮かべる。
そこで相手が動き出したことに俺は気づいた。
「二人とも、退けっ!」
「「っ!?」」
俺の声に気が付き、二人は即座にバックステップした。
その瞬間、
(ブオオオオオンッ)
彼女たちが先ほどまでいた場所──いや、彼女たちがバックステップした目の前あたり付近を勢いよく何か通り過ぎた。
その物体の誇る質量のせいで風を裂くような音が辺りに響く。
それを聞いた二人の顔に少し恐怖の色が見えた。
それはそうだろう。
直撃すれば危険であることは明らかにわかったからだ。
「二人とも、サポートするよ」
二人の危険を悟ったのだろう、レヴィアが地面に手をついて魔法を放つ。
地面が隆起し、相手の足を拘束した。
並の相手ならば、これだけでほとんど勝利を確信できたと思うだろう。
しかし、今回の相手はそうはいかなかった。
((((バキバキッ))))
「なっ!?」
相手はあっさりとレヴィアの拘束から抜け出してしまったからだ。
もちろん、するりと縄抜けのように抜け出したわけではない。
純粋にレヴィアの拘束を破壊し、抜け出してしまったのだ。
それだけで相手の膂力が恐ろしく強い事が理解できる。
なので、俺はレヴィアに指示を出した。
「レヴィア。二人に向かって足場を作ってくれ」
「えっ!?」
俺の指示に驚くレヴィア。
この状況でする指示だと思えなかったのだろう。
だが、俺だって考えなしにそんな指示を出したわけではない。
必要な事なので、俺はさっきより語気を強めて指示を出した。
「早くしてくれ」
「わ、わかったわ」
俺の指示に従い、レヴィアがアリスとティリスに向かって土の足場を作った。
足場が二人の下に辿り着く直前に、俺は二人にも指示を出す。
「その足場を使って、こっちに戻ってきてくれ」
「「わかったわ」」
二人は俺の指示にあっさりと従った。
彼女たちはひらりと足場の上に乗ると、一気にこちらに戻ってきた。
(バキバキッ……ガラガラ……)
相手が足場を破壊し、その周りに土の塊が散乱する。
それを確認した俺は次の指示を出す。
「シリウス兄さんっ!」
「了解っ! 【アイシクルプリズン】」
俺がはっきりと指示を出す前にシリウスが行動に移す。
シリウスは俺のやりたいことを最初から理解できていたのか、すでに魔力を集中させていたのだ。
そして、俺の予想通りの行動をしてくれた。
(パキパキパキッ)
周囲の土の塊を巻き込みながら相手の体は巨大な氷の塊に包み込まれた。
全身が氷に覆われ、相手の動きが完全に止まった。
だが、俺はすぐに安心することはしなかった。
そして、俺の予想通りのことが起こった。
(バキィッ)
完全に覆っていた筈なのに相手は氷を砕いてしまった。
だが、これを予想していた俺はすでに次の指示を出していた。
「リュコっ!」
「はい」
俺の指示を受け、リュコが一気に駆けだした。
それを同時に俺も駆け出していた。
二人のスピードはほとんど同じで、前にいたので俺の方が先に接近することになった。
「ふんっ!」
(ドンッ)
全身の身体強化により強化された俺の掌底が相手の顎を打ち抜く。
その衝撃で相手の顔が思いっきり跳ね上がった。
そして、それによりできた隙間を潜り抜けるようにリュコが相手の懐に潜り込んだ。
「【波動突き】」
(ドスッ)
リュコの落ち着いた声と共に放たれた拳が相手の腹部に突き刺さった。
その拳を起点に相手の体へ衝撃が波のように伝わっていく。
『グガアアアアアッ』
ダメージが通ったのだろう、相手は苦しげな声を上げた。
それを聞いた俺とリュコはその場を離れて、シリウスたちのもとへと戻った。
そこで再び構えをとるが、目の前にはまだまだ元気な相手がいた。
これは戦いが長引きそうだな……
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