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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第六章 小さな転生貴族は王立学院に入学する 【学院編1】
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6-45 死んだ社畜は兄姉・婚約者と戦う 7


「【氷槍(アイシクルランス)】っ!」


 シリウスがこちらに向けて、右手を向けた。

 彼の目の前に2mほどの氷の槍が現れた。

 アリスのように剣を媒体に創ったわけではなく、純粋な魔力だけで槍を形成したようで、彼女の大剣に比べてかなりの魔力がつぎ込まれている。

 その槍が俺に向かって放たれた。


(ジュウッ)

「「っ!?」」


 だが、その槍が俺に届くことはなかった。

 俺の手前1mほどでいきなり溶けて──いや、蒸発してしまったからだ。

 その光景を見て、シリウスとレヴィアが驚愕の表情を浮かべる。

 だが、すぐに驚いている場合ではないことに気が付いたようで、両手を前に出して魔力を集中させる。


「氷雪の波よ 彼の者を飲みこめ 【氷雪津波アイシクル・アヴァランチ】」

「暴風よ 彼の者を吹き飛ばせ 【タイラント・ハリケーン】」


 シリウスとレヴィアが同時に魔法を放った。

 訓練場を埋め尽くすほどの氷雪が暴風に巻き上げられ、周囲一帯に舞い上がっていた。

 いや、舞い上がっているという表現はいささか語弊がある気がする。

 とりあえず、一言で言うならば【吹雪】といったところだろうか?

 普通ならば、かなり危険な状況だろう。

 この威力はおそらく上級魔法──二人は自分たちの全力をぶつけようとしたのだろう。

 まあ、俺との実力差を理解しているのであれば、当然の行動だろう。

 だが──


「はあっ!」

(ブワッ)

「「っ!?」」


 それでも俺に届くことはない。

 俺が右手を横薙ぎに振ると、訓練場を埋め尽くすほどの氷雪はすべて蒸発し、暴風も霧散してしまった。

 そんな光景に二人の表情に絶望が見えた。

 まあ、全力を出したのにあっさりと消されてしまったのだから、そんな表情になっても仕方のない事かもしれない。


「これで終わりか?」


 俺は思わずそんなことを呟いてしまった。

 まだ二人に隠した力があるのであれば、それを引き出すつもりで放った言葉だった。

 しかし、こういう状況でする言い方ではなかったようだ。


「くっ!」


 シリウスは悔しげな表情を浮かべ、こちらに魔法を放ってくる。

 しかし、集中できていないのか、放たれる魔法に魔力があまりこもっていなかった。

 この程度、避けるほどでもない。

 俺は避けることもせず、ただただ前に進んだ。

 徐々に近づいてくる俺にシリウスはさらに絶望の感情を強める。


「【ウィンドウィップ】」


 レヴィアも俺を近づけないようにするべく、魔法を放ってくる。

 しかし、彼女の魔法も俺に届くことはない。

 正確に言うと、俺を狙っているようだが全く当たることはなかった。

 彼女も焦っているのだろう。

 集中が乱れているせいで、狙いをつけることができないでいるのだろう。

 俺の周囲の地面がただただ抉れていた。


「(ここらが潮時か?)」


 俺は二人の様子にそんなことを考えた。

 これ以上はもう何も見ることはできないだろう、そう結論付けた俺は魔力を足元に集中させる。

 そして、足元で魔法を放つ。


(ボウッ……ビュンッ)


 魔法で加速した俺は一気に二人に接近する。

 焦った二人はそんな俺に気付くことはない。

 いや、正常な状態でも俺を視認することはできないかもしれない。

 なんせ、二人は後衛。

 戦場を大局的に見ることはできても、個々の動きをしっかりと把握することには長けていない。

 現に二人の視線は先ほどまで俺がいた場所に固定されていた。

 驚きの表情を浮かべているが……

 もしかすると、いきなり俺の姿が消えたことに驚いているのかもしれない。

 そんなことを考えながら、俺は二人の間を通り抜けようとするが……


「うらぁっ」

(ブウンッ)

「むっ!?」


 俺の行動は中断させられてしまった。

 俺の突進を遮るように前に現れたティリスが右ストレートを俺の顔面にめがけて放ってきたからだ。

 タイミングは完璧、俺の突進の勢いと彼女のパンチスピードが合わさって、完璧なカウンターになっていただろう──当たっていればだが……


(ボッ)


 俺は左手から小さな魔法を放ち、体を少しずらした。

 そのおかげで俺の体はティリスの右ストレートの軌道から外れた。

 しかも、こちらの勢いは全く削れていない。

 そのまま無防備にあいたティリスの腹部にボディーブローをかまそうとした。:


「させるかあっ!」

「っ!?」


 だが、そんな俺の行動もさらに割り込まれたことで中断させられてしまった。

 もちろん、割り込んできたのはアリスである。

 彼女は横から俺の顔面目掛けて、突きを放ってきたのだ。

 おい、それはなかなか危なくないか?

 いくら模擬戦だとはいえ、顔面にめがけて突きを放つのは危なすぎるだろう。

 このままティリスにダメージを与えても、俺の顔面にアリスの攻撃が直撃するのは確実である。

 流石にそれは嫌だったので、俺は攻撃を中断して左側に転がる。

 そして、足元に魔法を放って、今度は4人から距離をとった。


「アリス、大丈夫か?」

「ティリス、大怪我してるじゃない」

「ごめん。ちょっと遅れたわ」

「これぐらい大丈夫よ。むしろこの痛みのおかげで意識を保つことが出来てるし」


 シリウスとレヴィアの言葉に二人がそんな返事をする。

 うん、ティリスはすぐに治療するべきな気がする。

 俺がやったこととはいえ、かなりの怪我を負わせてしまっている。

 獣人の自然治癒能力ならば大丈夫ではあろうが、だからといってこれ以上戦闘を続けさせるのはやめた方が良いだろう。

 アリスの方だって、見た目には大怪我をしていないようには見えないが、かなりのダメージがあるはずだ。

 俺の攻撃はそんなに甘くはない。

 しかし、二人はそんなことは関係ないとばかりに構えをとる。


「せっかくここまで本気にさせたのよ。このまま負けるのは悔しいわ」

「そうだな。勝てないにしろ、少しは反撃しないとな」


 二人が構えながらそんなことを言う。

 まだまだこの二人は戦闘意欲は削がれていないようだ。

 そんな二人につられてか、レヴィアとシリウスもこちらに真剣な表情を向けてきた。

 どうやら、まだまだ戦うことになるようだ。







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