6-40 死んだ社畜は兄姉・婚約者と戦う 2
久しぶりの投稿です。
お待たせしてすみません。
「アリス、ティリスさん。時間稼ぎして」
「「了解っ!」」
シリウスの指示に頷き、アリスとティリスが駆けだした。
どうやら四人同時に攻めてくるつもりはない様だ。
しかし、「時間稼ぎ」か……
何かするつもりのようだが、さて何を考えているのやら?
まあ、どのような事をしようが、俺はそれを真っ向から受けきってやるが……
「はあっ」
ティリスが両手両足を使い、襲い掛かってくる。
やはり彼女の身体能力は素晴らしい。
獣人族の利点を活かした戦闘技術だと言わざるを得ないだろう。
だからこそ、惜しい。
(ガッ)
「なっ!?」
俺の顔を蹴ろうとした右足を掴んだ。
いきなり足を掴まれたことで驚きの表情を浮かべるティリス。
しかし、これも獣人の直感と言ったところだろうか、反対の足で俺の顔を蹴ろうとしてくる。
しかし、その蹴りが当たる前に俺は力を込める。
(ダンッ)
「くっ!?」
思いっ切り地面に叩きつける直前、ティリスはギリギリのところで受身をとった。
そのおかげでどうにか衝撃の一部を逃がすことには成功したようだ。
だが、すべての衝撃を逃がせたわけではないので、ダメージは入っているようだが……
「ティリスを離せっ!」
背後から声が聞こえたので、俺は上体を反らした。
すると、先ほどの俺の胸のあたりを剣が通り過ぎた。
うん、木剣だとしても確実に大怪我をしてしまうような一撃だな。
まあ、当たらなければ意味がないのだが……
「よっ」
(ガッ)
「うっ!?」
俺は両手を地面につき、バク転の要領で後ろ回転する。
そして、その勢いのまま右足でアリスに蹴りを放つ。
剣を振り切った状況でも俺の攻撃には反応できたようだが、それでも使える防御手段が少なかった。
両手をクロスして、どうにか蹴りを受け止める。
その隙を突き、俺はアリスの左足を掴む。
「っ!?」
いきなり左足を掴まれたことで、アリスが驚きの表情を浮かべる。
だが、そんな彼女を気にすることなく、俺は掴んだ左足を軸に外側に回転する。
そして、アリスの背後から右足を払う。
(ガクッ)
「うくっ!?」
背後からの衝撃に耐えきれず、アリスは地面に膝をつく。
そして、彼女の背後から俺は木剣を振り下ろそうとする。
しかし……
「アリスっ!」
(ビュッ)
「ちっ!」
ティリスが体を少し起こした状態からダガーのようなものを投げつけてくる。
そのような体勢なので大して力が入ってはいないが、俺の動きを止めるのには十分だった。
俺が飛んでくるダガーのようなものを払った一瞬の隙を突いて、アリスが俺の攻撃範囲から外れる。
そして、二人は立ち上がって、構えをとった。
「アリス。わかっていたことだけど、私たちの力が全然通用していないね」
「それぐらいわかっていたことよ、ティリス。だからといって、逃げるつもりはないわ」
「そうね。なら、奥の手を出すしかないな」
「ええ、そうね」
二人がそんな会話をして、ニヤリと口角を上げる。
普通、女の子の笑顔ってもっとかわいいものではないのだろうか?
なぜか2人の笑顔を見て思い浮かぶのは、獲物を見つけた肉食獣のような獰猛な笑みだった。
しかし、二人にはまだ何かあるようだった。
果たして、何があるのだろうか?
そんなことを考えていると、二人が再び動き始めた。
「【獣気解放】」
「【氷結武装】」
高らかに叫ぶと二人の様子に変化があった。
まずはティリス。
全身から金色のオーラのようなものが見えた(ような気がする)。
姿勢がやや前傾姿勢になり、すぐにでも飛び出すことが出来そうな構えになっていた。
そして、何より変化していたのはその容姿だった。
犬歯や爪が少し伸び、目が少し吊り上がって眼光が鋭くなっていた。
さらに髪の毛が肩辺りまでしかなかったものが、腰のあたりまで伸びていた。
次にアリス。
彼女の方は身体的変化はまったくなかった。
その代わり、彼女の持っている木剣がとんでもない変化をしていた。
いや、すでに木剣と呼ぶことはできないな。
なぜなら、木剣は氷に覆われており、完全に埋まってしまっていたからだ。
これはすでに氷の剣と呼ぶしかないだろう。
長さは木剣のときの三倍ぐらいだろうか、すでにアリスの身長を軽く超えてしまっている。
果たしてそんな剣を振るえるのか心配になったが、そもそも自身の身長の倍以上の大剣を振り回すことが出来る人間が二人いることを思い出し、その心配は杞憂であることに気が付いた。
まあ、おそらくこれは二人のパワーアップなんだろう。
それを見て、思わず俺は嬉しくなってしまった。
先ほどまでもみんなの成長を感じることが出来たが、まさかここまで成長しているとは思わなかった。
もしかすると、他の二人もこれぐらい成長しているのだろうか?
先ほどのシリウスの「時間稼ぎ」という言葉に少し期待してしまう。
そんなことを思いながら、俺は持っていた木剣に力を込めた。
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