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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第六章 小さな転生貴族は王立学院に入学する 【学院編1】
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6-38 死んだ社畜は宣戦布告される


「あぁ……やっぱり、思いつかねえ」


 俺は自室で頭を抱えていた。

 ブロドさんと話してから2週間、いろいろと考えてみたがやはり結論を出すことが出来なかった。

 俺に足りないものがあることは認めた。

 しかし、やはりそれが何かがわからないのだ。


「グレイン様、大丈夫ですか?」

「……これが大丈夫に見えるか?」

「控えめに見ても、大丈夫ではないかと……」

「……そこまで駄目か?」


 リュコの俺に対する評価が酷い。

 それほどまでに酷いのか?

 しかし、彼女が心配しているのも事実ではある。


「誰かに相談すればいいのではないですか? 例えば、バランタイン伯爵様にでも……」

「いや、それはできない」

「どうしてですか?」


 提案を否定した俺に彼女は首を傾げる。

 否定する理由がわからないのだろう。

 まあ、これは俺の意地なのだ。


「爺ちゃんなら、俺の悩んでいることを解決してくれるかもしれない。まあ、確率的には半々ぐらいだと思うがな」

「なら、相談すればいいのでは?」

「いや、それをすると、俺が負けた気がする」

「誰にですか?」

「学長の爺にだよ」

「え?」


 俺の言葉にリュコが驚く。

 予想外の言葉だったのだろう。

 驚く彼女に俺は説明を続ける。


「これはあの爺が俺に出した課題だ。これを誰かに答えを教えてもらったとしたら、あの爺に負けたことになる。勝つためには自分で答えを見つけなければならないんだ」

「そんなことはないと思いますけど……」

「あの爺のことだ。俺が他人に助言を求めたことを知ったら、それを死ぬまで弄るネタにしてくるはずだ」

「……流石にそこまで酷い事はしないと思いますけど?」

「リュコはあの爺のことを知らないからそんなことを言えるんだ。あいつは人を馬鹿にすることにかけては右に出る者がいないんだよ」

「いや、それ以外にもすごい事はあると思いますけど?」


 俺の言葉にリュコは呆れた表情を浮かべる。

 彼女の考えていることはわかる。

 しかし、これは俺が学長に直接指導を受けているからこそ、言えることなのだ。

 彼女に学長の本性がわかるはずがないのだ。


「とりあえず、これについては人の手を借りるわけにはいかないんだ」

「はぁ、わかりましたが……とりあえず、無理はなさらないでください」

「ああ、わかった」


 心配そうな表情で言ってくるので、俺もしっかりと答えておく。

 だが、やはり考えるのを止めることはできない。

 時間をかければかけるほど、あの学長に弄るネタを作ってしまうからだ。

 早く解決するためにいろいろと考えるが……


(コンコンッ)

「ん?」


 不意に部屋の扉をノックする音が聞こえた。

 もうすでに夕食や風呂を終え、すでに就寝を開始する時間となっている。

 こんな時間に部屋を訪ねてくる者がいることに驚いた。

 一体、誰だろうか?

 リュコが扉を開いた。

 そこにいたのは……


「シリウス兄さん? それにみんなもどうしたんだ?」


 シリウスとアリス、ティリスとレヴィアの四人だった。

 一体、こんな時間にどうしたんだろうか?

 とりあえず、廊下に立たせておくのもなんなので、部屋の中に招き入れる。

 四人は部屋の中においてある椅子に座った。


「それで、こんな夜遅くにどうしたの?」


 俺はとりあえずシリウスに質問する。

 なんだか神妙そうな顔をしているので、気になったのだ。

 そんな俺の質問にシリウスは真剣な表情のまま答えた。


「次の【特別試験】──四人で受けようと思っている」

「は?」


 突然のセリフに俺は思わず呆けた声を出してしまった。

 一体、何を言っているのか一瞬理解できなかったのだ。

 だが、すぐにシリウスが何を言ったのかを理解することが出来たので、すぐに質問をする。


「一体、どうしたんだ? なんで【特別試験】なんか受けるんだ?」


 俺は彼らの意図がまったくわからなかった。

 【特別試験】は本来、学生たちの戦闘技術と魔法技術に対する向上を促すために作られたものだ。

 俺という壁を用意することによって、それを目標に努力する。

 向上心をすでに持っている者にはあまり意味は──ないことはないが、少なくとも受ける必要はないと思う。

 しかし、シリウスたちはそれでも【特別試験】を受けようというのだ。

 驚かないはずがない。


「一度、挑戦したいと思ってね」

「挑戦?」


 シリウスの言葉に俺は首を傾げる。

 言葉の意味は分かるが、彼がどうしてそんなことを言っているのかわからなかったのだ。

 そんな俺にアリスとティリスが呆れたように話しかけてくる。


「4人で挑むから、準備しておけってことよ」

「私たちが相手だからって、手加減をする必要はないよ」

「いや、それぐらいはわかってるけど……」


 二人の言葉に余計に頭がこんがらがった。

 どうして、そんなことをいっているのかわからなかったのだ。

 とりあえず、この中で一番落ち着いているレヴィアに話しかけようとするが……


「なぁ、レヴィア?」

「倒すつもりで行くから、期待していて」

「ええっ!?」


 まさかのレヴィアも好戦的な事をいってきた。

 俺はさらに混乱してしまった。

 一体、どういうことだろうか?

 普段は穏やかな性格のレヴィアまで俺と戦おうとする始末である。

 何が何だかわからない。

 そんな感じで俺が混乱している間に、四人は立ち上がった。

 そして、シリウスが俺に向かって告げてくる。


「じゃあ、週末によろしくね」

「あ、ああ……」


 混乱しているせいではっきりと返答することはできなかった。

 やはり、どうして彼らがこんな行動に出たのかがわからない。

 そうこうしている間に四人は部屋から出ていった。

 そして、残された俺は横にいたリュコに声をかける。


「これって、一体どういうことだと思う?」

「……私にもわかりません」


 どうやらリュコも4人の突然の訪問、宣言について理解が追い付いていないようだ。

 そんな感じで俺たちは状況が理解できず、ただただぼうっとしてしまっていた。






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