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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第五章 小さな転生貴族は王都に行く 【少年編4】
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第五章 閑話2 人妻たちの午後 2


「それにしても、ティリスのことを受け入れてくれたグレイン君には感謝ね。このままだと独身コース一直線だったから」

「レヴィアちゃんも受け入れてくれて本当に嬉しかったわ。あの娘ったら、人づきあいが苦手だから友達の一人もできないと思っていたもの。まさか婚約者ができるなんてね」

「うふふ、喜んでもらえて嬉しいわ」


 サーラとクレアの言葉にエリザベスは笑顔で答える。

 自分の息子のことを褒められて嬉しかったのだろう。

 しかし、そんな三人とは裏腹にクリスの表情は暗かった。


「二歳も年下のグレインにはもう婚約者がいるのに、シリウスにはまだいないなんて……」

「いや、この年齢なら別におかしい事はないんじゃないかしら?」

「ええ、そうよ。世の中には20どころか30を超えても未だに独身の人だっているんだから……」

「そうよ。それにシリウス君だったら、良い人が見つかるわ」


 落ち込むクリスを励ます三人。

 だが、一向に元気になる気配のないクリス。

 彼女はその原因をゆっくりと語る。


「シリウスは家族の贔屓目に見てもルックスが整っていると思う」

「ええ、そうよ。少なくともグレインよりルックスは整っていると思うわ」

「私もあんなにルックスが整っている子は見たことがないわ」

「世界中探しても、シリウス君よりルックスが整っている子はいないんじゃないかしら?」


「でも、男の子としてルックスが整っているわけじゃないと思うの、あれは……」

「「「……」」」


 クリスを励まそうとした三人だったが、彼女の指摘に視線を逸らさざるを得なかったからだ。

 もちろん、クリスの言っていることは理解できていた。


「なんで、あの子、あんなにかわいいの?」

「「「……」」」


 クリスの言葉に三人は返事することはできない。

 彼女たちもどう答えるべきかわからないからだ。

 そんな状況下でクリスは話を続ける。


「双子の妹のアリスも確かにかわいいわ。それこそ、たまに求婚の手紙が来るぐらいに……」

「すごいじゃない。流石はアリスちゃんね」

「じゃあ、もう婚約者がいるんじゃ……」

「……」


 クリスの説明にサーラとクレアは嬉しそうに質問する。

 だが、エリザベスだけは黙っていた。

 そんな状況でクリスは衝撃の事実を告げる。


「……シリウスの方が多いわ。しかも、男の貴族から来ている物ばかり……」

「えっと、それは……もしかしたら、かわいいという噂から、女性であると勘違いしているのでは……」

「シリウスって名前で? 明らかに男の子よ?」

「うぐ……」


 クレアが慰めようとするが、クリスの言葉に返事に困ってしまった。

 正直、これはどうしようもない。

 まさか、サーラとクレアもシリウスの可愛さがこんなことになるとは思ってもいなかったのだ。

 初めて会った時から、可愛いとは感じていたが……


「双子の妹のアリスがお転婆で有名だからかしら、相対的におとなしいシリウスが女の子っぽい印象になっているのかしらね?」

「それよ。だから、みんな女の子だと勘違いして……」

「だとしても、きちんと名前は把握しているはずよ? それなのに、未だに男の貴族から求婚の手紙が来るのは?」

「「「……」」」


 クリスの指摘に誰も答えることはできない。

 本当に理由がわからないからだ。

 どうしてこんなことになっているのやら……

 と、ここでクレアさんがあることに気が付く。


「もしかして……」

「なに?」

「送ってきた人の大半があっちの趣味なのかも。だったら、男の子のシリウス君に求婚の手紙を送っても……」

「もっと駄目じゃないっ!」

「ひいっ、ごめんなさい」


 クレアさんの言葉に思わず叫んでしまうクリス。

 周囲の視線を集めてしまったので、エリザベスが周囲の客に気にしないように伝える。

 そして、店員に迷惑料として他の客にいくつかメニューを提供してもらうことにした。

 もちろん、しっかりとその分のお金は払っている。

 そして、エリザベスも話に入る。


「まあ、その可能性は否定できないわね。一応、送られてきた手紙の差出人を確認したけど、何名かはそういう噂がある人だったわ」

「ほらぁ」

「でも、他の人は明らかに普通だったわ。何人かはしっかりと女性の奥さんを娶っている人だったわ」

「うぐっ」


 エリザベスの言葉にクレアが自信満々に乗っかろうとしたが、続く言葉に落ち込んでしまう。

 やはり、間違っていたのか、と。


「まあ、とりあえずやることは一つよ」

「……何をするの?」

「それはもちろんシリウスを男の子らしくするのよ」

「男の子らしく?」


 エリザベスの言葉にクリスが首を傾げる。

 サーラとクレアも同様に首を傾げる。

 そんな彼女たちにエリザベスは説明をする。


「シリウスにそういう手紙が来るのは、シリウスが可愛らしい女の子、もしくは可愛らしい女の子のような男の子だという噂が広がっているからだわ。だったら、シリウスを立派な男の子にすれば、おのずとそういう手紙が減るはずよ」

「……なるほど」

「そして、立派な男になった暁には、今度は女の子からの求婚の手紙が届くかもしれないわ。そうすれば、クリスの心配もなくなるんじゃないかしら?」

「「「おおっ!?」」」


 エリザベスの言葉に三人から感嘆の声が漏れる。

 どうやら彼女たちの中でシリウスを男の子らしくする計画が決まりそうだ。

 だが、彼女たちは忘れていた。

 シリウスの可愛らしさは天然のものであること。

 そして、シリウスが可愛らしく見えるのは、周囲が男女問わず男らしいせいであるということも……

 そんなことも忘れて、四人はシリウスを男らしくしようと決意したのだった。


 こうやって、人妻たちの楽しい午後は和やかに過ぎていった。






ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるのでぜひお願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


作中にあまり描かれていませんが、シリウスの可愛らしさはこの作品の中でも一番(予定)です。

好みもあると思いますが、その可愛さに男女問わず人気がある設定です。

とりあえず、男物の服を着ても、男装している女の子にしか見えません。

そんな彼がどんなに男らしくしようとも、男に見えることは……そもそも男らしくできるでしょうか?

いや、できないでしょうね。


というわけで、次回もぜひ楽しんで読んでください。


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