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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第五章 小さな転生貴族は王都に行く 【少年編4】
193/618

5-85 父親たちは提案される

今回は謎の男視点です。


(???視点)


「やあ」

「「「あ、あんたは……」」」


 私が声をかけると、相変わらずの反応をする三人だった。

 彼らの奥さんたちは礼儀正しく頭を下げてくれるのに、どうして彼らは未だに私に対して礼儀を重んじてくれないのだろうか?

 これでも一貴族と一国の国王なのだろう?

 まあ、今はそんなことを気にする必要はないので、用件だけ済ませることにしよう。


「リオン、ルシフェル」

「なんだよ?」

「なんですか?」


 私が名前を呼ぶと、怪訝そうな表情を浮かべる。

 相変わらず生意気な反応である。

 昔からこういう反応だったせいで、私はそういう部分から教育をせざるを得なかったんだ。

 といっても、その成果は出なかったが……

 まあ、そういうことは後で愚痴ろう。


「君たちの娘はたしか10歳だったよね?」

「それがなんだ?」

「まさか娘を狙って……」

「何を勘違いしているかは知らないけど、私は提案をしに来ただけだよ」

「「提案?」」


 私の言葉に二人は少し興味を持ったようだった。

 よし、これでやっと本題に入れる。


「君たちの娘を王立学院に入学させないか?」

「「王立学院に?」」


 私の言葉に二人は驚く。

 まあ、それは当然だろう。

 王立学院というのはリクール王国国民のための学校。

 そのため、生徒はおのずとリクール王国の国民のみになってしまう。

 しかし、本来ならば、もっといろんな人たちを入学させ、いろんな知識や経験を得るための場なのだ。

 なかなか他の種族の人が入学しようとしないが……


「だが、うちの娘は王立学院の入試を突破するような学力はねえぞ?」

「私の娘は入試ぐらいなら合格できるでしょうが、入学してから人と交流できませんよ?」


 父親たちは娘のことを理解しているのだろう、口々に反対の理由を述べる。

 これ、私のことが嫌いだから断っているんじゃないよね?

 ちょうど体のいい言い訳があったから、それを言ってきているんじゃないよね?

 そうでないことを願いながら、私は説明する。


「流石に何の試験もなくということは難しいかもしれないけど、それぞれの得意分野の試験をすることにするから大丈夫なはずだよ」

「まあ、そうだな」

「人との交流が苦手だと言っていたけど、アレン君の双子も入学するんだろう? 知り合いがいるんだったら、安心じゃないかな?」

「……そうですね」


 私の説明に納得する二人。

 だが、ルシフェルの方は少し疑問を感じているようだった。

 私がこんな提案をしていることをおかしいと思っているのだろう。

 まあ、彼らに疑われるのは慣れているが、別に悪い考えで動いているわけではないことを説明しよう。


「二人の娘には積極的にとある人物と交流してもらいたいんだよ」

「「とある人物?」」

「シャルロット王女だよ」

「「なに?」」


 私の言葉に二人は怪訝そうな表情を浮かべる。

 まあ、そんな反応をして当然だろう。

 だが、私だって冗談でこんなことを言っているわけではない。


「最近、どうも国内に【亜人差別】の考え方が広まっているように感じるんだ。一般市民にはそこまで広まっていないが、貴族の間で特にね」

「……そうなのか?」

「……私には何とも? カルヴァドス男爵家ではそんなことは……」

「そりゃそうでしょ? カルヴァドス男爵家は【種族融和】を掲げている領地なんだから、種族による差別なんてあるはずがないでしょ?」

「「まあ、そうですね」」


 この子たちは本当に自分の興味のある分野しかやる気を出さない。

 それぐらい考えればすぐにわかることだろう。

 まあ、それを今怒っても仕方がない。

 説明を続けよう。


「私としてはシャルロット王女が君たちの娘──つまり、魔王と獣王のそれぞれの娘と仲良く交流することによって、王家がそういう考えを持っていると認識させたいんだよ。これについてはバルド君も了承しているよ」

「そうなのか?」

「まあ、バルド君ならそうするだろうね」

「おそらく、反対派が何かしてくるだろうけど、そういう輩への対処はしっかりするつもりだから安心して」

「まあ、ティリスなら大丈夫だろう。かなり強いからな」

「レヴィアは直接的な戦闘はできませんけど、回復魔法を使えますからね」


 おっ、意外と素直に受け入れてくれた。

 これなら、簡単に話が……


「「あっ!?」」

「どうしましたか?」


 だが、なぜか2人が思い出したような反応をする。

 一体、何が……


「いや……ティリスがその話を受ける気がしないんだが……」

「レヴィアもですね」

「どうしてですか?」

「俺たちの娘はアレンの息子のグレインと婚約しているんだが、片時も離れたくないぐらい好きなんだよ」

「学院に入るということは、そこにいる間はグレイン君と会うことはできない。手紙を出すことができるでしょうが、それだけでは満足しないと思うんですよ」

「「はぁ……」」


 どうやらこの子たちも苦労しているんだな。

 私は知っている子たちが父親として苦労している姿を見て、少し感動していた。

 なら、私ができることは、二人を安心させてあげることだ。

 ついでに、アレン君にも説明しよう。


「二人とも、その点は問題ないさ。ついでにアレン君も話を聞いてくれ」

「「「ん?」」」


 三人が私の言葉に興味を示した。

 そんな彼らに私の計画を説明した。






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