プロローグ (追加)
追加話です。
見たことがないキャラが出てきそうですが、気にしない方向でお願いします。
個人的に考えていたキャラを出すにはここしかないと思いまして……
((ザザザッ))
森の中を小さな二つの影が駆け抜ける。
決してその速度は速くはない。
しかし、その影は小さいため、気付いたときにはすでに周囲の木々によりできた陰に隠れてしまうためそう簡単に見つけることはできなくなる。
だが、それはあくまで人間の感覚での話だ。
森の中で生きている動物たち──特に他種の命を奪って生きている肉食動物にとっては関係なかった。
「「「ガルルッ」」」
その小さな影たちを追って、3つの影が近づいてくる。
森の中では決して大きいとは言えない影──だが、だからといって脅威とならないわけではない。
小さな影たちにとっては当然自分より体躯が大きいため恐怖の対象であろうし、ただただ体躯が大きいだけで早く動くことのできない動物よりも機動力に優れているこれらの影の方が捕食される可能性が高くなる。
しかも、この影は3つあることから察することができるだろうが、集団で行動をするのが基本の動物たちだった。
一匹一匹ではそこまで大した力はないが、数の力によって自分たちよりも強い相手を倒すことができる種族なのだ。
まあ、小さな影たちにとっては一匹だとしても脅威であることには変わりないのだが……
「キュルルッ」
「キュッ」
先を走っている小さな影が後ろの影を元気づけるように声をかける。
その声に励まされたかのように後ろの影も元気に答える。
しかし、この行動がよくなかった。
(ガッ……ザッ)
「「キュッ!?」」
前を走っていた影が木々の根に足を引っ掛けてしまい、走っている勢いのままに地面に倒れてしまったのだ。
それに驚いた後ろの影は慌てて駆け寄った。
しかし、これは逃げている者の取るべき行動ではなかった。
(((ザッ)))
「「「グルルルルッ」」」
「キュッ!?」
倒れたことで止まってしまった二つの影の周りに3つの追跡者の影が現れる。
しかも、自分たちを逃がさないように三方から囲んでいる状況だった。
絶体絶命──まさにそんな言葉で表せるような状況になってしまったわけだ。
「きゅ、きゅ~……」
「キュキュッ!?」
倒れた影が力なく声を出すと、もう一つの影は驚いたような声を出す。
おそらく自分を見捨て、お前だけでも逃げろと言っているのだろう。
そんな相棒の声を聞いた影は怒りを露わにする。
だが、倒れた影の言うことはもっともである。
このままでは二匹まとめて追跡者の餌になってしまう。
少しでも被害を少なくするためには片一方が犠牲になって、もう片方が助かる道以外にはないのだ。
しかし、その選択をもう一方は受け入れることはできない。
「キュウッ!」
覚悟を決めた小さな影は追跡者を相手に睨みつける。
今の自分に何ができるかはわからない。
だが、ただただ獲物として捕食されるつもりはない、そんな意志を感じさせる眼差しだった。
「「「ガルルルアッ」」」
そんな小さな勇者を相手に追跡者たちは一斉に襲い掛かる。
今まで獲物が目の前にいる状況だったのに、ずっと捕食することができなかったのだ。
我慢の限界がきたようで、今まで溜めていたフラストレーションを一斉に放出したのだ。
「キュッ!?」
いきなり三方から襲い掛かられ、小さな勇者は恐怖のあまり目を瞑ってしまう。
だが、それでもその場に蹲ることはなかった。
倒れている相棒を短い時間でも守るため、仁王立ちして自らを盾にするのだ。
そして、追跡者たちの牙が小さな勇者の体に突き刺さろうとした──その瞬間、
(((ドドドドッ)))
「「「ギャンッ!?」」」
「「キュッ!?」」
どこからともなく何かが飛来し、襲撃者たちに襲い掛かったのだ。
痛みのあまり襲撃者たちは短い悲鳴を上げ、小さな影から遠ざかる。
その行動に小さな影たちは首を傾げる。
何が起こったのか、まったくわからなかったからである。
そんな状況下で新たな存在が現れた。
「流石にこんなかわいい生き物を見殺しにするのは良心が痛む。お前たちには何の恨みもないが、ここは助太刀させてもらうぞ」
小さな勇者の目の前に本物の勇者が現れた。
決して大きくはない体躯──だが、それでも彼から見れば十分に大きく感じた。
彼ならば自分たちを助けてくれる──そう期待できるほどに……




