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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第五章 小さな転生貴族は王都に行く 【少年編4】
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5-4 小さな転生貴族は道を整える

※4月8日に更新しました。


「がははっ、流石はグレインだ。まさかこんなことを思いつくとは」

「いやいや、これぐらい誰でも思いつくでしょ?」


 リオンさんの言葉に俺は笑顔で答える。

 現在、俺たちは走っていた。

 俺の体調の関係で全速力ではないが、それでも普通の人よりもかなり早い。

 数十分ぐらい先に行っている馬車程度ならすぐに追いつくことができるだろう。

 それぐらい早く走れるのなら、最初からそうしろと思うかもしれない。

 しかし、片道1ヶ月の旅の間、このスピードを維持するのはかなりしんどい。

 さらに、全員がこのスピードで走れるわけではない。

 俺とアレン、リオンさんにルシフェルさん、あとはティリスの姉であるリオナさんぐらいだろう。

 半数にも満たないので、少数派である。

 ちなみに俺がやっているのは……


「しかし、まさか魔法で整地するとは……こんな平坦な道は見たことがねえぞ」

「そうだね。でも、これぐらいならそこまで難しくないよ」


 【土属性】の魔法で地面を整地していた。

 足に魔力を集中させ、踏んだ瞬間にその周囲の道を整地していく。

 俺が走っている場所はガタガタから平坦に変化し、美しい道が続いている。

 俺の魔力の多さと発想力でできることだ。

 とりあえず、俺以外にできる者はルシフェルさんぐらいだろう。

 少なくとも、俺の知る限りルシフェルさんの次に魔法が得意なエリザベスとクリスでも難しいはずだ。


「つくづく規格外な子供だな」

「それをリオンさんに言われたら終わりだと思う」


 リオンさんの反応に俺は思わずそう答えてしまった。

 規格外であることは自覚しているが、流石に彼に言われるのは癪である。

 アレンとルシフェルさんに言われるのも同様である。

 たしかに規格外なのは自分でも認めているが、この三人の方が絶対におかしいと思う。

 俺の力は転生で手に入れたチート紛いの能力なのに、この三人は種族などの特性もあるだろうが天然の力だ。

 それなのに俺よりも強い力を持っているから、どちらが規格外かなど分かり切っている。

 普通の人からすれば、どっちもどっちかもしれないが……


「というか、こんなに魔法を使って魔力はきれないのか?」

「この調子だったら、一日ぐらいぶっ通しでいけるよ」

「マジかっ!? 本当にお前は人間か?」

「……それは失礼じゃない?」


 驚くリオンさんの言葉に半眼で睨み付ける。

 たしかにおかしいかもしれないが、この魔法は意外と魔力消費が少ない。

 俺がしているのは地面の表面をガタガタから平坦にする作業だ。

 地面に何があるかは関係なく、とりあえず平坦にするだけだ。

 そのため少ない魔力で道を平坦にでき、足に魔力を集中させるだけで片手間に作業できるわけだ。

 もちろん道には土だけではなく石も転がっているが、目についたものだけを魔法で掘り起こして道の外に吹き飛ばしている。

 破壊するぐらいなら簡単だが、そのために魔法をさらに使用するのも面倒だ。

 魔法はいかに効率的にかつ簡単に使うことが大事である。

 まあ、これが規格外と言われる一因でもあるが……


「しかし、まさかティリスの婿がこんな有望株とはな」


 リオンさんがしみじみそんなことを呟く。

 ティリスの出会った頃のお転婆を考えると、彼が反応も無理のないことかもしれない。

 親として心配していたのだろう。

 だが、一つだけ訂正しておかないといけない。


「まだ婿じゃないよ」

「小さなことは気にするんな。いずれそうなるんだし……」

「いや、小さなことじゃ……」

「あぁ? 婿にならない気か?」

「いや、言ってないけど……」


 文句を言ったら、凄みのある顔で脅された。

 本気ではないだろうが、リオンさんの強面でそんな表情をされると流石に怖い。

 もしかすると、彼はこの顔でビストを恐怖政治しているのかもしれない。

 実力主義の国だから、そんなことはないだろうが……


「たしかにお前ぐらいの歳で婚約者とか結婚とかを考えるのは難しいかもしれないが……」

「? 別にそんなことは……」

「俺だってお前ぐらいのときは考えたこともなかったな。とりあえず、自分より強い奴と戦えれば、それだけでいいとさえ思っていた」

「……聞いてないし」


 俺の言葉をリオンさんは全く聞いていない。

 しかも、話が若干おかしい。

 子供が結婚云々を考えていない話は共感できるが、彼の人生観にはどこかおかしい気がする。

 いくら実力主義のビストでもこんな考えを持っている人は少ない気がする。

 というか、ティリスがお転婆だったのも、これが理由じゃないだろうか?


「とりあえず、結婚はあながち悪いものでもない、ということだ」

「そうなんですか?」

「ああ。俺も結婚した後に気が付いた。最初は嫁をもらうつもりはなかったが、いざ結婚してみると悪くはなかった。それはアレンやルシフェルも同じはずだ?」

「そういうものなんですかね?」


 俺にはまだ理解できなかった。

 前世でも独身だったため経験のない話で、すんなり受け入れられない。

 社畜だったため、女の子との交流がなかったというべきか?


「最終的には本人たちの気持ち次第だが、真剣に考えてやってくれ」

「……わかったよ」


 真剣な表情と声音に俺も真剣に答えてしまう。

 普段はふざけた存在だが、それでも彼は親なのだ。

 娘の話ならば、真剣になるのは当然だろう。

 俺の返事に安心したのか、リオンさんは少し肩の力を抜く。


「できる限り断らないでくれるとありがたい」

「どうしてですか?」

「そりゃあ、お前に捨てられたら……新しい男ができると思うか?」

「……見た目はいいんで、意外と?」

「……無理だろう。お前以外にあのお転婆娘を扱える奴が世界にいない」

「あはは……」


 リオンさんの心配を否定できず、俺は乾いた笑い声しか出なかった。

 頼まれたので断るつもりはないが、彼の心配のせいで俺も将来が不安になってしまう。

 そんな会話をしながら、俺たちは走り続けていた。








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新作始めました。


二度目の悪役令嬢は期待しない

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