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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第五章 小さな転生貴族は王都に行く 【少年編4】
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5-2 小さな転生貴族はため息をつく

※4月8日に更新しました。


3日後、俺たちは王都に行く準備を終え、屋敷の前で馬車に荷物を積み込んだ。

この異世界は自動車など高度な科学技術はない。

基本的には動物などを利用した技術しか使えない。

しいて言うならば、魔法で代用できるだろうが、基本的に魔法が使用される場面は戦闘面であることが多い。

地球でも技術の発展は基本的には戦争で使うことも多いので、魔法技術の発展でも同様なのも仕方がないか。

 魔法が人々の生活を豊かにするために使われることになるのは時間がかかるかもしれないな。


「片道1ヶ月か……」


 俺は王都への旅路が億劫になっていた。

 馬車に揺られながら1ヶ月も移動しないといけない。

 地球なら長くとも1日や2日でどこでもいけるのに、移動にこれほど長い期間がかかるのだ。


「楽しみね」

「ええ、そうですね」


 ティリスとレヴィアが笑顔で話していた。

 一体、何が楽しみなのだろうか?

 俺の様子に気が付いたのか、二人が話しかけてくる。


「グレインは楽しみじゃないの? 初めての王都よね?」

「そうですよ。リクール王国の最大都市に行くんですよ? わくわくしないんですか?」

「……う~ん、どうだろうか? 大きな都市に行くのは楽しみとは思わないかな?」

「「ええっ!?」」


 二人は驚きの表情を浮かべる。

 そんなに俺は変なことを言っただろうか?

 俺は前世でも日本の首都である東京に行こうとは思わなかった。

 東京なら何でもそろっているし、ビッグになるために東京に行こうと思う人を否定するつもりはない。

 高いビルが立ち並び、多くの車や人が行き交う。

 公共交通機関も入り乱れ、目的の場所に行くのにどう行けばいいのかわからないなんてこともあるだろう。

 だからこそ、俺は東京に魅力を感じなかった。

 それと同様に首都に行きたいとは思えなかった。

 しかし、そんな俺の考えを伝えるつもりわけにはいかない。

 大都市に憧れる子供の夢を壊すのは忍びない。


「王都には最先端のものがたくさんあるらしいわ。いろんなものを見て回れるのは楽しいんじゃない?」

「歴史のある建物を見るのも楽しいとはず。その国の歴史を知るのも楽しみの一つだと思います」

「美味しいものもいっぱいみたいだしな。普通の食事だけじゃなくて、甘いものとかもたくさんあるみたい」

「可愛らしい服とかもあるみたいです。自分に似合う服なんか探すのも楽しそうだと思いませんか?」


 二人は王都でどうやって楽しむかを俺に説明してくる。

 本当に楽しみなんだろうな。

 だが、二人の話を聞いていると、俺の未来の苦労が予想できる。

 まるで彼女や妻と買い物に行くように、荷物持ちをさせられる可能性が高い。

 俺たちの関係ならば、あながち間違いではないが……


「男の見せどころですね、グレイン様?」

「……たしかにそうだね」


 俺の心情を察したリュコの言葉に小さくため息をつく。

 俺が赤子の頃から見ている彼女なら、考えていることもわかるだろう。

 だが、それは俺の方も同じである。

 おしとやかな表情を浮かべているが、尻尾が嬉しそうに揺れているのは隠せていない。

 彼女も王都に行くことを楽しみにしている。


「はぁ……みんなで買い物に行こうか」

「「「っ!」」」


 ため息をつきながら俺が告げると、3人が嬉しそうな表情になった。

 この笑顔を見られるのなら安いものかもしれないな。

 金ならあるのだから、未来の嫁さんを相手に好感度を上げよう。

 3人の時点で負担は通常の3倍だが……


「私たちも一緒に行きたいっ!」

「うん。グレインお兄ちゃんと一緒に王都を楽しみたいっ!」

「ハクア様っ! クロネ様っ! グレイン様の邪魔をしてはいけませんよ」


 ハクアとクロネが駄々をこね、メイドのシルフィアが窘める。

 だが、この様子では絶対についてくるといって聞かないだろう。

 まあ、これも家族サービスの一環ということで、妹たちに良い兄として振る舞おう。


「私もグレインと一緒に王都を回りたいわっ」

「あ、アリス……僕たちは遠慮しておこうよ」


 参加しようとするアリスと止めようとするシリウス。

 アリスの方が強いので、シリウスはズルズルと引きずられていた。

 これは王都に行っても、いつものメンバーで行動するだろう。

 せっかく一緒に行っているのでその方が良いのかもしれないが、人混みの中で大人数での行動はかなり動きにくそうだ。


「ふふっ、子供たちは相変わらず仲が良いわね」

「……そうね。これも私たちの教育がよかったから」


 俺たちの様子を遠巻きに見ていたエリザベスとクリスが笑みを浮かべる。

 否定するつもりはないが、一概にそうは言い切れないのだろう。

 現に男性陣は微妙そうな表情を浮かべている。


「シリウスとグレインが我慢しているから成り立っているんじゃないか?」

「ええ、そうですね。二人が自分の希望を言い出したら、収拾がつかないはずです」

「小さいころからリズとクリスが強いのを子供たちに見せたせいか? どうにかした方が良いと思うが……」


「「何か言った?」」


「「「いえ、何でもないです」」」


 コソコソ話していたが、エリザベスとクリスの声に即座に首を横に振った。

 相変わらずの力関係である。

 本来ならば、あの3人の方が能力的には高いはずだが、こんな姿を見るとまったく想像できない。

 実際に戦っている姿を見ても、やはり普段の姿とのギャップのせいで違うのかと思ってしまう。


 こんな雰囲気で俺たちは屋敷から出発することになった。







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新作始めました。


二度目の悪役令嬢は期待しない

https://book1.adouzi.eu.org/n0924ie/


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