5-1 小さな転生貴族は家族(部外者有り)で王都に行く
※4月8日に更新しました。
「王都にみんなで行こう」
ある朝、アレンが開口一番にそう言った。
家族全員(一部、部外者)がリビングに集められたのだが、まさかこんな話だとは思わなかった。
「何で急に?」
「シリウスとアリスが来年から王立学院に入学するから、そのついでにな」
王立学院とはリクール王国の王都にある学校で、この国の貴族ならほぼ全員が10歳から6年間通う。
他にも商人の子息が貴族との関係を持つために通ったり、才能がある庶民の子供がば奨学金などを得て入学してくるらしい。
様々な思惑で子供たちが入学してくる場所だ。
うちも一応貴族の端くれとして、子供たちを通わせないといけない。
「そういえば、シリウス兄さんとアリス姉さんは10歳になったね」
つい先日、誕生日を迎えた二人を祝ったのは良い思い出である。
王立学院に入学するのなら、王都に行くのは理解できる。
しかし、それなら……
「どうして家族全員で行くことになるの?」
「これが原因だ」
「?」
アレンが何かを取り出す。
どうやら手紙のようだが、描かれている紋章はどこかで見たことがある。
「これは第二王女の誕生日パーティーの招待状だ。今年、10歳になるので学院に入学する節目に盛大に祝うわけだ」
「なるほど……王族の祝い事だから、地方にいる貴族も絶対に行かなくちゃいけないね?」
「そういうことだ」
たしかにそれは行かないといけない。
しかし……
「めんどくさいな」
「だろう?」
俺の呟きにアレンが反応する。
貴族らしくない彼ならその反応も仕方ないだろう。
しかし、そんな俺たちの態度に怒る人物がいた。
「何を言っているの、二人とも。第二王女様の祝いの席なのに、めんどくさいなんて不敬罪に問われるわ」
「「え~」」
エリザベスのお叱りに不満の声を漏らす。
たしかに駄目かもしれないが、面倒な事には変わりない。
そんな俺たちの態度にエリザベスがさらに説教を続ける。
「第一、私たちは普段から王都にいないのよ? こんな時に行かないと、他の貴族にあらぬ噂を流されるわ」
「……別にいいんじゃないか?」
「そんなわけないでしょっ! もしかしたら、反逆者だと言われたらどうするつもりよ」
「いや、流石にそんなことは……」
大げさな内容にアレンは苦笑しながら答える。
王族の祝いの席に参加しない──つまり、王族を軽視しているとみなされル可能性があり、あながち間違ってはいない。
ただでさえ辺境在住で王都にいないのだから、反論したとしても信じられない可能性の方が高いはずだ。
まあ、ビストとアビスの大事な国境を任じているのは王族なので、そう簡単に反逆者とされることはないと思うが……
「それに今回はバランタイン伯爵にも会いに行くのよ」
「……そう。子供たちを見せに行く」
エリザベスが他の目的を告げ、クリスが追加する。
バランタイン伯爵はクリスの父親──つまり、シリウス、アリス、ハクアの祖父に当たる。
血はつながっていないが、一応俺やクロネの祖父のようなものだ。
孫ができたので伝えにいくわけだ。
「えぇ~」
しかし、アレンが嫌そうな表情を浮かべる。
明らかに会いたくないと思っている。
そんなアレンを見て、エリザベスが般若のような表情で詰め寄る。
「あなた、馬鹿なの? 王都に貴族が集まるんだから、必ず会わないといけないわ」
「そ、それはわかっているさ……」
「それに今までいろいろと便宜を図ってもらったじゃない。その恩を仇で返すつもり?」
「そんなつもりは……」
アレンがたじたじになる。
相変わらず嫁に弱い旦那である。
しかし、どうしてそこまで嫌がるのであろうか?
疑問に思う俺にリオンとルシフェルが説明してくる。
「アレンはあの爺さんのことが苦手だからな。まあ、向こうもアレンのことが嫌いだがな」
「自分の愛娘を奪った相手ですからね。それも仕方のない事でしょう」
「……そこまでなの?」
一体どんな爺さんなんだろうか、少し会うのが怖くなってしまった。
流石に孫相手にそんな対応はしないだろうが、アレンがあそこまで嫌われているのを聞くと心配になってしまう。
なんせ俺はアレンの子供でクリスの子供ではないから、血が繋がっていない。
果たしてどんな反応をされるのか……
「と、とりあえず……みんなで王都に行くから。出発は3日後、それまでに準備を済ませるように」
アレンが慌ててそう締めくくった。
まるでエリザベスの説教から逃げるように……
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二度目の悪役令嬢は期待しない
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