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0. プロローグ

 オーロヴィアの屋敷で一夜身体を休めた私達は翌日の昼前には出立し、再び街道を北西へと進んでいた。

 これ程の大行列ともなれば同じ道を利用したとしても個人的な移動の際と比べより多くの時間を要することとなる。

 結局、一行は十日程度の日数を要して新たにフェーレンダールとの国境線として策定された辺りに到着したのだった。

 元々此度の再訪はあちらが言い出したことであるし、事前に使者も送ってあったので、特に留め立てされることもなくあっさりと境界線を越えることが出来る。

 再びフェーレンダール国内へと入った私は、前回と然程変わらない風景を眺めながら一路あちらの首都を目指す。

 彼の国の国土は、ほとんどが平地であるベルフェリート王国とは異なり山がちであり起伏も大きいが、しかし主要な街道に関しては元々あった小山や丘などを人為的に削って平らにしている(それが不可能な山は当然迂回されている)ようで、ほとんど速度が落ちることはなかった。

 時折見受けられるアマランサスが植えられている畑を眺めつつ、やがて使節団はこの国の首都へと辿り着く。

 フェーレンダールの首都は、峻厳な山を背後にして半円状に高い城壁を張り巡らせた山城である。

 門を潜り城壁の内部へと入ると、物流が集まり繁栄を極めている街の大通りを通り抜け、斜面の上に見える王宮の方を目指す。

 ごく少数で訪れたために目立たなかった前回とは異なり、此度はかなりの多人数及び馬車の数であるため、この街に暮らす市民達の注目も集めることとなる。

 大通りの両側にいる市民達の視線を浴びつつ坂を上り、そして王宮の敷地内へと入った。


 王都から護衛の任を担ってくれていた第三騎士団の大半は国境のベルフェリート側に留まっているものの、騎士団長本人も含めて数百人程はこちらにまで私達と同行している。

 馬車が停止すると彼によって外から扉が開かれ、手を取られながら地面へと降りた私。

 左右には庭園が広がっており、それは前回目にした時と同じように相変わらずの美しさを誇っていた。

 すると、こちらへと向けて王宮の建物の方向から護衛と思わしき者達を従えた一人の男が近付いてくる。


「ようこそ、オーロヴィア侯爵、そしてクラスティリオン殿。フェーレンダール王国宰相として貴女方を歓迎申し上げる」


 出迎えとして現れたのは、前回と同じく若くしてこの国の宰相を務めるラファエル・セルージュであった。

 オブシディアングリーンの髪と葡萄色の瞳をした彼は、そう言って私と騎士団長に対し声を掛ける。


「お久しぶりです、セルージュ殿。此度はお招きいただき光栄ですわ」

「お初にお目に掛かります。ベリード・クラスティリオンと申します、お見知り置きを」


 私が言葉を返すと、隣では彼とは初対面となる騎士団長が名乗りを伝える。


「貴殿の武名、騎士団の精強さは我が国にも轟いていますよ。では、王宮を案内致す故ついてこられるとよい」


 例えばヴェルトリージュ家の軍勢もそうであるし、私の麾下の五千もその一つであろうが、精強と称されるに相応しい強さを持った軍勢はベルフェリート国内にいくつも存在している。

 しかしながら、兵科による相性などもあるとはいえ、仮に同数で戦い合ったとして最も強いのはやはり第三騎士団であろう。

 その勇名は国内に留まらず他国にまで轟いており、ラファエルもそれを知っているようであった。

 彼は騎士団長に対してそう言葉を返すと、こちらを促して踵を返す。

 その後ろ姿に従い、建物の方向へと進む私達。

 そうして、私は再びフェーレンダールの王宮に滞在することとなったのだった。

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