榊、尋問する
「火事じゃと」
環は飛び上がって驚いた。
「急いで消火せねば! 榊!」
「待って」
慌てふためく環をカテナが引き止める。カテナはヘルムの中の細面をあげて、空に昇る煙の数を慎重に推し量っている。
「いぶすみたいに街全体で火をつけられてるけど。この街は木造だけじゃなく石も多い造りだから、被害はそんな大きくならない」
分析したカテナが目を細めた。
「だから、放火魔を突き止めるほうが先」
クク、と笑みをこぼすスズを、フランがにらみつける。
「貴様ら、なにを考えている」
「言うものか。せいぜい右往左往するがいい」
「へぇ? そーゆー態度しちゃうんだ」
強気のスズを拘束しながら、セナは冷たい目で見下す。
「手早く聞き出すわよ。フラン」
「任せろ」
ガチンとガントレットを打ち合わせるフランを見上げ、スズは自信満々に嘲った。
「フン。舐めるな、雑兵ども。拷問なんかに屈しない」
にらみ合う二人の間にセナが慌てて割って入る。守るように両手を広げて。
「違う違う。暴力なんて使わないわ。フラン、ちょっとモモカの耳を塞いでてくれる?」
「え? あ、ああ」
困惑しながら下がったフランが、スポッと指を突っ込んでモモカの耳の穴を塞ぐ。
「わっすごい! ホントになんにも聞こえないわ! あー! あー! あー!」
スポッと指を外した。
「こら、騒ぐな。周りは普通に聞こえてるんだぞ。静かにしろ。……失礼した」
フランとモモカがそろって背を向けたことを確認して、セナは
榊を振り返る。
「榊。メガネつけて」
「ん? あぁ」
榊はメガネをかけた。スズとメガネ榊の目が合う。
「……ッ!?」
氷で心臓に触れられたかのように、スズの表情は強張った。
「き、貴様ら……私になにをした……!?」
急にうろたえて落ち着かなげに周囲を警戒するスズ。拘束された足を恥ずかしそうにモゾモゾと揃える。
「病気にかけてやったのよ。そら榊、膝ついて目の高さを合わせなさい」
「こうか」
「ヒィっ!?」
おたつくスズの姿を見下ろして、セナはフンと顎を上げた。
「やっぱり男に免疫なかったわね。普段から強い女なんて、いざ弱った自分をどう御せばいいかわからないものよ」
「ずいぶん詳しいな」
オホンオホンと榊の疑問を咳払いで誤魔化して、セナは榊の後頭部をせっつく。
「指の背で頬を撫でてやれ。名前を呼びながら」
「スズ」
そうっと榊は頬を撫でる。
「ーーーーーーッ! か、ハッ、息が……! くそ、心臓も痛む……」
悶え苦しむスズにセナは告げる。
「解放してほしければ素直に吐きなさい」
「くっ……だ、誰がっ」
「まだ足りないのか?」
「い、ぁがっ!? ひ、ゲホッゴホッ!」
榊が不意打ちに囁いて、心臓の止まったスズは苦悶する。青息吐息に榊をにらみつけた。
「貴様、黙れしゃべるな! 私を見るな! 近づくな!」
「異教徒の命令を聞くいわれはないな」
榊は冷たく言い放つ。そして、
「改宗して私のもとに来るなら、話は別だが」
「んぐふっ! だれ、誰が貴様になど!」
言い返すスズの眼前に、真剣な面持ちの榊がいる。
つまりはいつもの真顔なのだが、見慣れていないスズは息を呑んで身を引いた。
スズの肩に手が触れる。
怯えきった動きで振り返った過剰反応に、触れたセナが目を丸くした。
「あ、ごめん」
「――――〜〜〜〜ッッッ!!!」
スズの悲鳴は声にならなかった。
触れたのがセナだと分かった瞬間の安堵と落胆の表情を見られて、しかも詫びられた。屈辱のほどは察するに余りある。
「コホン。さあ、これ以上の辱めを受けたくなければ、今すぐ吐きなさい。さもないともっと続けるわよ」
「くっ……くぅうう……!!」
「榊。フルネームを呼んでやりなさい。耳元で低い声でね」
「スズ・ハミ「あああああああああ!!!!」」
スズは陸に揚げられた魚のように、拘束されたままの体を暴れさせる。疲弊しきってグッタリと横たわった。
「話す……話すからやめてくれ……これ以上されたらダメになる……」
まるで乙女のようにさめざめと泣きながら受け入れた。
合図を受けたモモカが振り返り、
憔悴しきったスズを見てびっくり仰天した。
「セナあなた、一体どんなひどいことをしたの!?」
モモカの優しさは、勝手に狼狽して消耗しただけのスズの傷心に深々と突き刺さったのだった。
好きなもの!
わかってるのにドキドキしちゃう……! く、くやしい!
ってなるやつ。
男女とも区別なく、顎クイ俺様系も、小悪魔な女の子もどっちも好きです。
……好きなんですが、あんまりうまく描けないんですよねぇ……。そういうのを見るときは尊さで脳が死んでるから分析できてないのかな???




