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50 恋人への相談2






「……どうやら僕は、アリスに心配かけないように…じゃなくて、アリスに慰めてもらいに来たようだね……」


ユージンはアリエスの体に顔を埋めながら呟いた。

その声はわずかに震え、アリエスだけでなく妹に抱き着くユージンを引き離そうと腰を上げたシリウスも同情してしまうほどに悲し気に聞こえた。


「……何があったの?」


アリエスは優しい手つきでユージンの頭をなでる。

銀髪の髪の毛は見た目通り、まるで高級な絹の糸のようになめらかで、とても触り心地がいいものだった。

ちなみに腰を上げたシリウスは何事もなくソファへと戻っている。

今もアリエスに抱き着くユージンを、自分はなにもみていないと示しているようだった。


「……父上が、危ない状態だったんだ……」


え、と驚くアリエスとシリウスに、ユージンはやっと腕を解くと詳細を話し出した。

父であるセドリックの容態、そして公爵家の現状を話し終えると、ユージンは隣に座って真剣に話を聞いてくれたアリエスの手をぎゅっと握った。


「ごめんね、…婚約の話は当分先になりそうだ」


「それは気にしなくていいの。それよりも_」


「デクロン公爵は本当に毒を盛られていないのですか?」


アリエスの言葉を遮り尋ねたのはシリウスだった。

ユージンはアリエスの手を握ったまま、シリウスへと視線を向ける。


「はい。ワインだけではなく、料理の工程も再度確認し、配膳までの間誰も毒を仕込むタイミングがないことは僕も確認しています。

雇っている使用人たちも昔からの信用のおける者たちですし、父を陥れるほど忠誠心が薄れた者もいませんので、毒が仕込まれる可能性はかなり低いと考えられるのです…」


「それでも状態だけをきくに毒を盛られている可能性が高いが……持病を患っているという可能性はないのですか?」


「はい、持病というせんもなくはありませんが、その可能性は低いです」


シリウスはユージンの言葉を聞いて呻くように声を漏らした。

何が原因なのかと考え込むシリウスの姿に、ユージンは他人のために真剣になるアリエスのやさしさと同じものをシリウスに感じる。

見た目は男女の違いがあっても、それでも血を分けた兄妹であるため、似ている部分がある二人にユージンは不安だった心を穏やかにさせていた。


「……ねぇ、ユン。公爵様は他の人と違う物を使っている、なんてことない?」


「人とは違う物?」


アリエスは首を傾げるユージンに頷いた。


「ええ。私、ウォータ領で鉱石が取れるようになってからアクセサリーのデザインを考えることがあるんだけど、その打ち合わせの際職人の方に聞いたことがあるの。いくら材料費が安くても、加工や製造の際に使ってはいけない材料があるんだって」


「使ってはならない?アクセサリーの材料は基本的に金や銀、鉄が主に使われていると聞いたことがあるけど…」


「そうよ。でも表面加工として塗装をしたりすることがあるでしょう?掛け時計や置物とか、長時間肌に接触しないことを前提として使用が認められる材料がある一方、腕時計やそれこそアクセサリーには使っちゃいけないと決められている材料が存在しているって教えてもらったの。

だから食事や飲み物に毒物が含まれていないのなら、もしかしたら公爵様だけが使用している何か……そう、公爵様が身に着けている服やアクセサリー、寝具とかにそういう“使用してはいけない”材料が含まれているんじゃないかって、そう思ったの。

……でも話を聞く限り、お酒を飲みようになってから異変があったことを考えると、ワイングラスが一番怪しいわね…。塗装や加工に使用されたものがワインに溶け出している、その可能性だってなくはないわ」




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