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43 幼少期の真実?4





署名と拇印が押された書面と共に、祖父母からの言葉がつづっている手紙も入っていたことに気付いたユージンはそれを読んだ。


“何故親である父に求めないのかはわからないが、デクロン公爵家の当主であるお前の父は、お前の手紙もわしらの手紙にもちゃんと目を通している。

遅くなってもいい。自分の口できちんと説明をしなさい。反対されたときはわしらも力になろう”


そのように書かれた祖父母からの手紙を読んだユージンは顔色を変えた。

幼い頃同様、父に筒抜けであることを思い出したからだ。

だが筒抜けであることを知ってもユージンはすぐにウォータ家へと書類を送った。


一度取り消されたことがあった手前警戒していたが、嬉しそうにユージンからの婚約申込が届いたと笑みを浮かべるアリエスを見て、さすがに今回は邪魔をするつもりは父にはないと判断したのだ。


ウォータ家へと届けられた婚約申込書はウォータ伯爵の署名が記入され、神殿へと届けられる。

公爵家が関わっていることから王族の承認も必要になったが、王太子である第一王子が迅速に対応してくれた。

残すは神殿のみ。


あと少しで婚約が成立するといった時に婚約取り下げの通知がウォータ家へと届けられたことを、ユージンは寄りにもよってアリエスから聞くことになった。


邪魔をするつもりはなかったのではないかと、頭が真っ白になったユージンは、動揺しながらもアリエスに悟られることがないよう平常心を装いその場を切り抜けた。


そして気が荒々しくなりながらも自室へと戻ると、婚約申込用紙と共に届いていた祖父母からの手紙が視界に入る。


『“父上は知っている”か……』


なら何故すぐに邪魔せず放っておいたのか。


(あのまま後二日、いや三日、……父上が何もしなければアリスとの婚約は成立していたんだ…!)


____絶望を味わわせるため……?


____だが何のためだ?


____そこまで僕は父上に恨まれていたのか?


____母上を守れなかったから?


____それとも、僕よりもあの女の子供が大事、だから…?



ユージンは頭を抱えた。


父が自分のことを恨んでいるのならば、再び内緒で婚約の書面を出したとしてもすぐに取り下げられてしまうだろう。

もしくは今回のようにあと一歩といった時に止められてしまうことは目に見えていた。


まだ継がれていない爵位はユージンよりもデクロン公爵当主であるセドリックの立場が上だということを示している。

それがたとえユージンの婚約話であっても、ユージン当人の意見は然程重要ではなく、当主であり爵位を持っているセドリックに権限はあるのだ。


(父が一言いえば、どんなに隠れても取り下げられてしまう……)


アリエスの言った通り手詰まりだった。

最悪爵位を継いだ後となってしまうが、アリエスには待ってもらうしかないというところまでユージンが考えていると、呼び鈴がなる。

扉を開けると寮の管理人だった。


顔が整っている者が険しい顔をしていれば、確かに美しさは損なわれることはないかもしれないがそれでも恐怖という感情は通常の顔面偏差値を持った人よりも多く与える。

管理人も同じく、険しい顔をしたユージンの表情を確認するとすぐに顔を青ざめさせた。

ユージンはそんな管理人を気にする素振りもみせずに手を差し出す。

デクロン公爵夫人が持つ印章が押された手紙を管理人から受け取ったユージンは、管理人の姿が見えなくなると扉を閉めた。

そして封を開ける。

ペーパーナイフできれいに封を開けてやれば、中に入った手紙は傷つくことはない。

厚みがある紙は“良い紙質”だと指先からでも伝わってきた。

今まで実家からの手紙なんて受け取ったことなどないユージンは、気が乗らないまま紙を開くとそれは婚約申込書だった。

既にセドリックの名前ではないが再婚相手であるイマラの署名までされているそれを、ユージンは訝しげな眼差しを向けながら嘲笑いテーブルの上に放り投げる。


そして呼び鈴がなり、現れたのがデインだった。




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