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32 解決?3




「それで、カルン様とロジェ様は引き続き殿下の側近として学んでもらう、ということはわかりましたが、カリウス様はどうするつもりですか?」


アリエスは王太子殿下に尋ねると、殿下はちらりとカリウスの親へと視線を向ける。


「我々のことは構わず、厳しい処分をお与えください。そもそも騎士として意志の弱さはありえない。一度アリエス嬢と婚約を交わしたのなら、生涯をかけて守るべき相手はアリエス嬢であり、他の令嬢ではありません」


「そうだな。私もそう思っている。だから彼のような者にはとてもじゃないが護衛を任せられない。学園の残留についてはそちらで決めてくれ」


「畏まりました」


アリエスはカリウスが王太子の護衛騎士候補から除外されたことを知ると(アリス様をどう養っていくつもりかしら)と考えていた。

友情のような情はあっても、だからといってどうしたいわけでもない。

ただ幼いころからの婚約者だったからこそ、野垂れ死ぬことがなければいいと、ただそれだけを思っていた。


アリエスは両親のもとに向かおうとしたところ、ユージンとあいさつをしている母の姿を目にする。

こみ上げる涙をハンカチにしみ込ませながら話をする母に、アリエスはぐっとこみ上げるものを感じた。

ユージンの実の母親とアリエスの母は親友だった。

事故で亡くなってしまったが、葬儀に立ち会えず、更には墓参りにも許されなかった母の無念が今ユージンを通してやっと解消できようとしている。

貴族にはそれぞれ領地を保有しており、互いの領地へ足を踏み込む際には事前の申し入れが必要だからだ。

それも観光ではなく、貴族の墓に立ち入ると言うなら余計に。

だからこそ何故墓参りすらも許してくれないのか、その理由はわからないが、それでもユージンとの交流が再開した今ではきっとアリエスの母も親友に会いに行ける日は近いだろう。


「お父様、カリウスとの婚約破棄の件よろしくお願いしますね」


アリエスはユージンと話し込んでいる母の邪魔をしないように、小声で父親に告げた。

カリウスとの婚約を取り決めた一人でもあるアリエスの父は少し気まずそうに頷きながらも、「任せてくれ」と力強く返す。

既に必要な書類はエリザベスに渡しているからウォータ伯爵がなにかをする必要はないが、慰謝料的な手続きのことを言っているのだろう。


アリエスがそばに来たことを知ったアリエスの母は嬉しそうに振り返って、こういった。


「それで?婚約解消の次は婚約の申し込み、よね?!」


にこにこと嬉しそうに無邪気に笑う母の姿に、アリエスは少しだけ頬を染めながらユージンを見つめる。


「ええ。アリスと再会したあの日から、アリスがフリーになった瞬間に申し込もうと考えていました。公爵家に戻ったらすぐにでも申し込みします」


「楽しみだわ!」


「それで母の墓参りには受理された婚約書を持っていきましょう」


「それはとてもいい考えね!」


ワイワイとまるで明日ピクニックでも行こうかと予定を立てるように、アリエスとユージンの婚約について話をしている二人の姿にアリエスはくすりと笑う。


「貴方もすぐに処理するのよ!」


そんなことをこの場で念を押すように告げるものだから、それを聞いた周りの人たちは「この婚約破棄の書面もさっさと燃やしてしまおう」と便乗する。

食堂の調理場スペースに書面を片手に駆け込み気味に向かったカルンとロジェの後ろ姿を、マリア達は楽しそうに笑っていた。

そして友人の楽しそうに笑う姿を久しぶりに見たアリエスは、本当に終わったんだと実感する。


マリアとキャロリンの婚約問題は、男達が自ら正気に戻ったことで、再び縁を繋いだとしてもきっと更に彼女達を大事にしてくれるだろう。


アリエスの婚約については解消となってしまったが、手続きに関しては王太子とエリザベスが迅速に処理してくれるように手配するとのこと。

また新しい婚約者についても、初恋の男性が相手となれば今までの婚約関係以上の幸せが訪れるに違いない。


そして元凶のアリスに関しては、どんな原理かわからないが生涯の相手の選択に、望みのない人を選んでしまった為に、今後他の男性を誘惑することはなくなっただろうと考えられる。

しかも側には魅力がとけてもアリスに恋心を抱くカリウスがいるとなっては、罪悪感も感じることはないだろう。



全てが問題なく解決し、アリエス達は笑顔でこの場を後にしたのだった。





だが、問題は全て解決したわけではなく、新たに浮上した問題が、婚約を進めるアリエスとユージンを悩ませることとなる。







とりあえず婚約破棄編はここで終わりです。

次からはユージンとアリエスの婚約について進んでいきます。

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