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30 解決?




突然カリウスが胸を押さえてその場にうずくまったのだ。

健康と体の丈夫さだけが取り柄のような男が苦しそうに胸を押さえたその姿に、アリエスやエリザベス、そして少し距離を開けて話し合いを終えたマリア達も心配気に見守る。


「…なに?どうしたの…?」


アリエスの呟きに答えたのはユージンだった。

ちなみに様子を窺おうとしてもユージンががっしりとアリエスを掴んでいるため、アリエスはカリウスに触れることも近づくこともできなかった。


「女の魅了が解けたんだよ」


「魅了が?」


言葉を繰り返すアリエスの顔には大きく“なぜ?”という言葉が書いていた。

当初の話し合いの中では、誰もを魅了する魅惑の持ち主であるアリスの効果を限定させるべく、ルビーという宝石の力を借りて、複数人を対象とする行為を防ごうと考えていたのだ。

ユージンのとった行動から計画が崩れ、ルビーをアリスに食べさせることが出来なかったが、カリウスの反応から魅了の効果は切れたと考えられる。

だがそれはいったいなぜなのか、ユージンは自身の推測の範疇ではあったが不思議そうに見上げてくるアリエスの上目遣いにやられ、丁寧に説明した。


「あの女は決めることを躊躇していたよね。三人の男から選ぶ気がないという言葉すらもためらっていたということは、その言葉は女の今後を決めるものという言葉だと推測できた。

それを僕が現れたことで“僕と結婚したい”という言葉を使い運命が決まった。選ばれるかもしれなかった筈の候補の男たちに掛かった魅了は、女が選んだことで用済みとなり効果が消える。だからこそあの男は一気に魅了から解放された効果で一時的に苦しんだ。その証拠に宝石を飲み込んでいた二人の男たちにはなんの影響もないだろう?」


「つまり、もうアリス様に魅了の効果はない?」


「無差別に発動するような魅了はもうないはずだよ」


「……なんか含みがあるような言い方ね」


なんでもないように微笑むユージンに、アリエスは鋭い眼差しを向ける。


「ユン、私たちの間に隠し事は?」


「ない」


「よね?なら、答えて。ユンにアリス様の魅了の効果はあるの?」


ユージンは眉尻を少しだけ下げてこう答えた。


「多分あると思う。対象が僕に固定されたと思うからね」


「たぶんというのは?」


「僕が愛している女性は君だけだから、あの女の魅了が効かないんだよ。だから“わからない”といったほうがいいかな?

もちろんこれはまだ僕の推測で、本当に魅力の効果がなくなったのか実験した結果ではないからまだ確かなことはいえないけどね」


「ちなみに感じられる変化は僕にはないよ」と続けたユージンにアリエスは体の力を抜き、息を吐き出した。


「……よかった…、ユンになにかあったらって不安だった…」


「アリスが不安に思うことはしなくていいけど、…でも僕のことを考えてくれているってことだから嬉しいな」


ユージンはアリエスの頬を包み込むように手を添わせる。

アリエスもそれが自然の流れのように受け入れているとごほんと咳払いが聞こえ、ここが二人っきりの場所ではないことを思い出した。


(目の前がユンいっぱいだったから…、だから皆がいるってこと抜けてしまっていたわ!)


顔を真っ赤に染めてアリエスの両腕の限りユージンに押し退けて距離をとると、視界に入ったのは睨みつけるアリスの姿だった。


「意味わかんない!なんであんたがユージンといい感じになっているのよ!?それにアリスってどういうこと!?アリスは私よ!?あんたは悪役令嬢のアリエスでしょ!?私のフリをしないでよ!私にユージンを返して!」


アリスはツカツカと二人に近づくと、ユージンの腕をとり物理的にアリエスから引き離そうとするが、男女の体格の差もありあっさりとユージンに腕を振り払われる。

勿論十二歳という男女の差は大きいものではないが、ユージンは幼い頃から鍛えていたこともあり小さな力でも振り払うことができた。


「……触らないでくれるかな」


「っ、……嘘つき、嘘つき!!」


アリスはユージンの冷え切った眼差しを間近で受けると、目に涙を浮かべて俯きながら罵倒した。


「私のこと可愛いって言ったくせに!なんでよ!」


「僕が君を?」


「そうよ!初めて会ったとき私のこと可愛いっていっていたでしょ!?」


ユージンは訝し気にアリスに目を向けながら「何故この女のことを僕が…?名前だって呼びたくないのに……」と無意識に呟いていた。

そんなユージンの言葉からでもアリスは心臓をえぐられたかのような痛みが走る。

「うっ」と苦しみ胸を押さえていると、「あ」と何かを思い出したユージンが声を上げた。




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