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昼間から飲み食い

 トロトロになっているバターを絡ませたお肉を口に頬張る。何の肉なのか、そして筋が多くて硬いけど、美味しい。

 カレンちゃんもモリモリと食べています。


「え? お姉さん、ティナと戦ったことあるの?」


「あるよ」


「勝った?」


「……まだ勝てないかな」


「そっかぁ。ティナも強いもんね。ダンとどっちが強いんだろ」


「人間の姿のティナさんとは互角だったんですよ」


「何それ? ティナは人間だよね、ナベ?」


「あー、まぁ、人間だろうな」


 この反応は人間じゃないと知っている感じですね。


「顔だけの化け物になるんですよ、ティナさんは。あれには勝てそうになかった」


 ちょこっと見ただけなのに、私は身震いが止まりませんでした。あれに対抗する方法を見付けないと勝負にならないかなぁ。


「へぇ。ティナは変身もできるんだね。聞いたことある、ナベ?」


「あいつは何でもできそうだもんな。……って、顔だけ? あれ? 俺も不気味なお月様みたいなティナを見た気がするけど……あれ? どこで見たのか思い出せないな……」


「ナベ、大丈夫? 頭も悪くなったのかな?」


 首を捻るナベに対して無邪気に笑うカレンちゃん。身内には結構言うタイプなんですね。


「なってねーよ。カレンちゃん、もっと俺にも優しくだぞ」


 カレンちゃんに苦笑するナベは慣れた対応でして、いつもバカにされてる様子を私は読み取る。カレンちゃんはナベ達に奴隷として買われたって聞いたけど、ナベより立場が上か同等みたい。


「君さ、どうやって魔力を隠蔽してるのかな?」


 フィンレーさんがナベを見詰めて言う。


「俺?」


「そう。私でも見抜けないの凄いかも」


「んじゃ、凄いだろうな」


 そう言って惚けたナベは皿の串を取る。沢山の盛り合わせから、たぶん大蜥蜴の眼球焼きを選ぶとは通ですね。


「うわっ、適当に取ったらこれかよ。フィンレーさん、食べる?」


「生憎だけど、私の文明レベルはこんなに低くないかな」


「……文明レベルって何だよ。まっいっか、メリナさんはどう?」


 フィンレーさんが断ったものを私に勧めるとはどういうつもりなのか。


「お肉の方が好きです。肉ください」


「だよなぁ。でも、この店の肉を噛み切れるのも凄いぞ……。あー、カレンちゃん、食べる?」


「要らない。気持ち悪い」


「カレンちゃん、自分で食べない物を頼まないこと」


「珍しい物が食べたいって、ナベ、言ってたよ」


「ごめんね。カレンちゃんが他人の気持ちを考えられない子だってことを忘れてたよ」


 ふむぅ、彼らの同行者である神どもと違って、ナベとカレンちゃんは裏がなくて善良な感じがする。



「メリナ様、野菜が食べたいかも」


「はい」


「サラダを頼んで良いかな?」


「どうぞ。どうして訊くんですか?」


「私はお金を持ってないから、メリナ様に支払って貰うしかないかなって」


「あぁ、なるほど……あっ」


「その反応、フィンレーは不安にかられたかも」


 私もお金を持っていません。猛ダッシュで寮へ取りに帰るか? いや、焦る私を不審に思ったアデリーナがごちゃごちゃ言ってくる可能性がある。ここは第2案として……フィンレーさんを皿洗い役として店に差し出すしかないか。


「俺が払うよ。金だけはいっぱい貰ってるから」


 おぉ! 太っ腹!


「ありがとうございます」


「うん。メリナさんへのお詫びも込めて」


 思い出させるな。



「ナベ様だったっけ? スーサフォビット様を知ってるかな?」


 届いた葉野菜を口に運びながら、ナベに尋ねるフィンレーさん。フォビの名前を出して神との関係性を探ろうとしているのでしょう。


「スーサのこと? 一回出会っただけだから、知ってるだけかな」


 マイアさんはフォビと略すのに、こいつはスーサなんですね。この辺りの違いは良く分かってない


「誰? 私は知らないよ」


「キモいおっさん。カレンちゃんは知らなくて良いよ」


「えー、ナベばっかりずるい」


 ナベはフォビに良い感情を持っていない? 


「何がキモかったのでしょうか?」


 私は彼に尋ねてみる。


「あ……気分を害したなら謝ります。スーサさんは聖竜様とも繋がっているんでしたね。ならば、巫女の貴女の主神――」


「断じて主神ではない。ってか、神は聖竜様のみです」


 そこのフィンレーさんも神だそうですが、私にとっての神様は聖竜様だけです。


「えっ、そうなの?」


「はい。で、何がキモかったのでしょうか?」


「アンドーさんに土下座しながら求愛してた」


「えぇ!? ナベ、そいつ、絶対にダメなヤツだよ」


「あぁ、分かってる。かなりダメそうだった」


「同意です。死ねば良いのにと常に思ってます」


「……常に?」


「はい」


「メリナ様ならスーサフォビット様くらいなら倒せそうかな。何なら一撃」


「この世界で生きていける自信を失くすから、その話は止めよっか」


 妙な言い種だけど、私はナベへの関心が薄れているので無視しました。


 その後、カレンちゃんと楽しく話をしながら食事を終えました。会話の中で、カレンちゃんは戦闘の強さに拘る傾向があると、うっすら感じまして、歳の近そうなミーナちゃんと出会ったら、めんどくさそうな事態になるだろうなぁと思いつつ、結構良い戦闘になりそうかもと観戦を楽しめそうな気持ちも浮かびました。

 カレンちゃん、身体の奥底に凄い魔力の溜まりを持っているんですよねぇ。

◯メリナ新日記 22日目

 今日は寮に引っ越しをした。部屋の前にアデリーナ様の部屋があって邪魔なので、アデリーナ様には王都に早く帰って欲しい。


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