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悪神の舌舐り

 周囲が明るくなりました。これは私が生じさせた灼熱地獄が延焼したのではなくて、天からの光が復活した事に依ります。

 太陽がないのに青空って不思議です。


 ティナさんにテーブルを出してもらって、真向かいで着席しました。

 さて、少し冷静になりました。これからは交渉の時間ですね。



「メリナさん、貴女にやって欲しいのは神様が集まる神界を混乱させることなのよ」


「何の為に?」


「絶妙な力関係が構築されていてね、派閥に分かれてるのに争い事が起きないのよね。進歩を自ら止めたのよ」


「なら、ティナさんが暴れて混乱させたら?」


 たぶん私と互角か、それ以上の実力を持つ者です。私に頼んでいますが、絶対に自分でも可能なはず。


「目立つのは嫌いなんだって。だから、仲間が必要かなって」


 ん?


「仲間なら2人がいるじゃないですか。ダンとアンジェ」


「んふふ。そうねぇ」


 勿体ぶった素振りです。

 言おうかどうか迷ったのか。


「仲間って言えば仲間なんだけどさ、目的が違うのかなぁ」


「どんな風に?」


 ティナが少し唇を舐める。

 緊張からなのか、嘘を誤魔化す為なのか。


「……アンジェは自分が滅ぶために、ダンは自分を救うために私に協力してくれてるの。これは本当に秘密よ。でも、最近は楽しそうにしてるから安心しているわ」


「それでも暴れる為に協力してくるんじゃ?」


「2人とも神様なのよ。神様が神様に喧嘩を売ったら面倒なの。だから、メリナさんが適任よ、適任。はい。この話は終わり」


 無理矢理に話を折りやがった。怪しい。

 まぁ、良いです。私も神とやらをぶっ倒してやりたいと思っていた先般ですので、渡りに船です。シルフォルとフォビは特にメッタメッタにしてやらないと。



「カレンちゃんの件はすみませんでした」


 私は聖竜様の代わりに謝る。


「あー、そうね。もう治したから大丈夫よ。アンジェもダンも怒りを鎮めると思うよ。聖竜様の件は私に任せて。うまい具合に取り持ってあげるから」


「ありがとうございます。でも、カレンちゃんの件は聖竜様が悪いんじゃなくて、アデリーナ様、私達の女王がけしかけたんです」


「うん、さっき記憶を読んだ時に知った。大丈夫。その女王も許すから。むしろ、うん、メリナさんへのお礼に性格も元に戻しておこうか?」


 ……それはお礼になるのか?

 嫌みアデリーナよりも、るんるんアデリーナの方が世界が平和な感じが……いや、でも、るんるんアデリーナも毎日接するとなるとイラついてしまうか。


「そろそろ、時間ね。メリナさん、よろしくお願いするわ」


「待ってください。ナベは? あいつは異様です。何者ですか?」


「アンジェのお気に入りなのよね。貴女達には無害だから放っておくのがお勧めかな」


 それだけで私が退く訳がありません。

 あれはおかしい。


「大魔王をあれに閉じ込めた説も出ています」


「大魔王? あぁ、あれはダンの家で子守りをしているはずよ。神界で確認してね。ナベは無能で無害。面白くはあるけども、貴女ほどじゃない。ホントよ」


 子守りってそのままの意味だったんだ……。聖竜様やマイアさんがあれだけ恐れていた存在だったのに。

 

「彼を何に利用しようとしているのですか?」


「……うーん、実験かな」


「どんな?」


「それはアンジェに聞いて。詳しくは知らないから。教えてくれないし。もういい?」


 ティナ、アンジェ、ダンと王国を訪れた3柱の神とやらは、こちらが思っていた程、仲が良い訳ではなさそう。目的は別だけど、手段が同じで協力してるのか。


「まだです。神って何ですか?」


 精霊との違いを知りたい。今から勝負するにあたって情報は多い方が良いし。


「こっちの定義だと、魔力を持ち過ぎて消滅できない存在。若しくは、消滅する勇気を持てない奴ら」


 定義が複数ある感じですね。でも、まずは簡単な感想を。


「魔族や精霊も似た感じですね」


「そこの違いは実際に見た方が早いわね」


「分かりました。ところで、ティナさんの定義だと神様は何ですか?」


 また舌舐り。嫌な感じです。


「何だろうね。飽くことなく戦い続ける存在、んー、色んなヤツがいるから一概に言えないけど、たぶん、これが共通項」


 まぁ、この辺りはおいおいで良いでしょう。ティナさんの言葉では「消滅する勇気を持てない奴ら」ですから、消滅しようと自分で思えば可能なのでしょう。そう思うくらいに神様をぼこぼこにすれば良いのかな。


「もういい?」


「はい。神界とやらへの転移はお任せしても良いですか?」


「勿論よ。うん、その前にメリナさんが負けるとは思えないけど、勝てるようにおまじないしてあげる」


 ティナの手が私の頭の上に翳される。


「痛くないから安心して。体を楽に」


 柔らかい笑顔に騙されました。

 掌に魔力が集まっているのも本当に「おまじない」だと思って気を許した瞬間に、炎を頭の上から浴びせかけられました。


 魔力を吸収!! って、クソっ! 間に合わない!!

 私は身を庇うためにうずくまる。


 何とか致命傷になるのは避けられましたが、体が四つん這いになったまま動かない。


「ごっめーん。体の表面が炭化してるわね。でも、生きてて良かったわ」


 クソ! 殺してやる!!


「おまじないなのは、本当よ。メリナさん、そんなに強いのに人間なんだから、そこから復活したらもっと強くなれるわ」


 回復魔法も働かない。


「約束は守るから。聖竜様との未来、祝福してあげる」


 今さら信じるか、ボケ!


「だから、メリナさん、神界はよろしく」


 その後にお前も死ね!!


「あはは、随分と怒ってるわね。アンジェとダンも欺く必要があったから仕方ないのよ」


 あぁ!? 知るかっ!!


「あと、私の家と畑を焼いた罰?」


 聖竜様との未来を餌に私を謀ったこと、絶対に後悔させてやる!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更にこのあとメリナがブチ切れそうな事やらかすんだよなあ… 是非ティナを消滅させる所まで見てみたいわあ
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