表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

289/391

最強女子達の懸念

 ルッカさんの転移魔法は素晴らしい。出会った頃はわざわざ詠唱句を唱えたり、魔力が足りないとか言ったりして頻繁には使用していなかったのに、最近では自由自在に使っている気がします。

 今も私を置いて、地上のどこかへと行っているようです。



 その間にマイアさんによって私は円卓に案内されました。着席するなり師匠がお茶を用意します。師匠はゴブリンでありますので、それが淹れた物となるとちょっと汚くて飲むの躊躇うなぁと思い、私は隠さずにちゃんと口に出して伝えました。


「お嬢ちゃんは本当に失礼だよね。親しき仲にも礼儀ありって言葉を胸に刻んだ方が良いと思うよ」


「人間相手ならそうなんですけど」


「絶句だよ。お嬢ちゃんらしいけど、それ、絶対に面と向かって僕に言っちゃダメな言葉だよ。心がどれだけ傷付いたか分かるかい?」


「何だか思い出が胸に刻まれたみたいで師匠のゴブリン人生を彩ることでしょう。良かったですね」


「良くないよ!」


 師匠をからかって遊んでいる間にルッカさんが戻って来ました。



「どこに行ってたんですか?」


「様子を探りに。かなり離れた所に転移してからウォッチしているから時間が掛かるのよ」


「小まめに監視してるんですねぇ」


「ガランガドーさんに全部任せたかったわ。彼、やられたみたいね」


「えぇ。痛い、痛いって叫んでました。ほぼ自業自得です」


「転移魔法がうまい連中だから、ハードワークしないと逃しちゃいそうなのよ。さぁ、話をスタートしよっか」


 マイアさん、ヤナンカは既に着席していまして、ルッカさんも椅子へ腰を下ろします。円卓に座るこの4人で何か話をするのでしょう。


「大魔王が復活したという根拠は?」


 まずはマイアさんが口火を切り、ルッカさんに問います。案件は既に聞いていたみたい。


「オッケー。実際に見てきたのよ。こんな感じ。今朝の出来事よ」


 ガランガドーさんが使ったのと同じ様な映像魔法をルッカさんは唱えました。本当に多才。さすが魔族と言うべきなのか、私よりも魔法の種類の引き出しが多いかもしれない。


 さて、映像の場所は宿屋の1室。

 そこでティナさん一行が映像を見ている姿が映し出されています。

 ルッカさんの映像の中の映像ってことでやこしいし、見えにくい。

 彼らが観覧しているのは、人骨だけの魔物とティナさんのお供の大男と奇妙な服の少女の映像ですかね。


『なっ!?俺は魔王と呼ばれた者だぞ!それに対して子守りだとっ!』


『あぁ。上司に二度も同じことを言わすな』


『しかし……この姿格好では笑う子も泣くであろう』


『三日で慣れよう。まずは自分の職務を全うすることだ』


 大男と魔物の会話でした。ルッカさんはここで映像を止めます。



「2人に聞きたいわ。大魔王はスケルトン型だったの?」


 ルッカさんにそう尋ねられた古代の英雄2人が映像から目を話さずに返します。


「……そうね」

「……間違いないー。あれはー……ダマラカナー」


 両人とも答えるのを躊躇ったのが分かります。



「私が掛けた封印が解かれたってこと?」


「メイビーよ」


 ルッカさんの映像が切り替わる。


「昨日から私が探索していた場所になるわ。世界最強決定戦の最初の試験でアンサーだったポイント」


 宙に浮かぶ映像には石造りの神殿らしき風景が写り出されます。所々は床に大穴が開いたり、石柱が折れたりしていて激しい戦闘があったことが想像されました。

 映像はルッカさんの歩みに合わせて変化していき、最後には王座と思わしきところで止まる。


「つまり、大魔王封印の地。つい最近までマイアさんの魔法で封印されて岩盤みたいになってたのに、こんな遺跡ができていたのよ」


「彼らの仕業? さっきの映像では大魔王ダマラカナに子守りを頼んでいたようだけど」


 マイアさんが確認を行います。


「そうだと思う。私も彼らと魔王の会話を見るまでは確信できていなかったけど」


「危ないねー」


「えぇ。子守りって言うのはどういう意味の隠語なのか……。で、肝心の大魔王はいったいどこへ?」


「居なかった。でも、怪しい者がいるのよ」


 ルッカさんが次に表示したのは透明人間の少年が座っている静止画。


「この子の魔力はゼロ。本当にナッシング。でも、そんなことは有り得ない。何らかの秘術で隠していると思うの」


「ヤナンカ、どう思う?」


「分からないー。結局はールッカを信じるかどーか次第ー」


 ルッカさんは嘘吐きなところがありますからねぇ。

 ただ、私が知っていることも判断材料にしてもらおう。


「本当に魔力ゼロでしたよ。私、目の前でこの少年を見ました。同じ様に魔力ゼロだけど、異空間に存在するヤツに最近会いましたし」


「異空間に全ての魔力を置きつつ、こっちの空間に干渉……。可能なのかしら」


「さぁ。でも、あと気になることと言えば、昨日のお昼過ぎかな。全ての物の魔力が思っきり引っ張られる感じがしました」


「っ!? やはりダマラカナなの!? 強烈な魔力吸引で2000年前の全てを滅ぼそうとしたのよ。今は魔力吸引がないってことは、もしかして復活後は異空間に潜んだ!?」


「その可能性が高いってことよ、マイアさん」


 ルッカさんの言葉にマイアさんとヤナンカは顔を見合わせる。


「分かった。私達もその彼らを見に行ってみる。ルッカさん、後で案内してもらうわ。でも、幸運ね。世界最強決定戦で付与された未来予知の能力だと、大魔王とはメリナさんが亡くなっている状況で戦わないといけなかったのに、実際には生きているんだから。最大戦力が温存できている」


「あはは。そう簡単には死なないですよ」


 私の言葉に同じく未来予知を授けられていたヤナンカが反応する。


「そんなことなかったよー。あの時、マイアと私が来てなかったらー、ミーナのハサミで死亡だったしー、逃げてもー善界が転移してきて死亡だったよー。2人ともメリナが掠り傷で死ぬなんてー思ってなかったしー。あと――」


「依頼者に出会ってもメリナさんは死んでいたはずです。どんな助っ人がどんなにいたとしても。ならばと、犠牲者を減らすためにメリナさんだけが死ぬのが、対魔王戦に向けて最良かと私は考えていました」


 ……恐ろしい話です。マイアさんはそういうドライなところが見え隠れするんですよね。アデリーナ様よりも冷たい人かもしれない。


「どうやって生き残ったの、メリナさん?」


「いや、普通に戦っただけですよ」


「そう言わずーどんな感じだったかー、説明してよー」


 うーん。できるだけ思い出してみるか。


「えーと、マイアさんがシルフォと呼ぶヤツはシルフォルってのが本当の名前で、自分で結構偉い神様って言ってました。それが市場の片隅に隠れていて、あっ、私がさっき言った異空間に潜む魔力ゼロのヤツってのがシルフォルのことです。ヤツが王国に来た目的は『スーサ君が神様を辞めるって言うから止めること』って言ってました。中々に強くてアデリーナ様が私を庇って死に掛けた後に、フロンが私に口付けして、えーと、パワフルなダークメリナ?になったんだけど、岩山を落とされるピンチになりました。でも、私の第3の精霊が顕現して、最後はシルフォルを食べて勝ちました」


 ダークメリナって何だよって自分で思う。


「ダークメリナー?」


「分からないわね。意味が分からないだけに、未来予知で読めなかったっていうことか。疑問がたくさんある話だったけど、質問する時間も勿体ないわね。それで、ルッカさん、ワットちゃんとアデリーナさんには伝えたの?」


「アデリーナさんは意識がストンレンジなのよ。聖竜様にはそうね、お伝えしなきゃ。巫女さん、ソーリーだけどお願いするわ」


 あっ、ルッカさんにアデリーナ様の復活を伝えてなかった。でも、私は聖竜様にお会いできる喜びに浸ることでいっぱいでして、それと比べたら酔いどれアデリーナ様の件は本当にクソどうでも良いことですので、黙っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 情報伝達ぅーww [一言] 演算型未来予知か… 持てる情報を基に起こりゆる可能性を最大限割り出すけど、アンノウンファクターを一切対応しない存在自体が落とし穴の未来予知w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ