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3話 第一ヒロイン?発見

 覚醒のトンネルを抜けると、そこは異世界だった。


 いや、異世界とかよくわからんけども。

 とにかく大気組成は地球と同じってことでいいのかな? 

 窒息してないし。


 オレはどうやら、どこかの街の路地裏にいるらしい。

 よくわからない大きな樽が並び、暗くてジメジメしている。

 石畳の上であおむけに寝ていた。


「あ~。あの話まじもんなのかぁ……。夢であって欲しかったなぁ」

 何度も願った。あ、うつむいてねぇや。

 起き上がり確認作業にうつる。


「へー。それっぽいじゃんか!」


 オレの服装はスーツから、ファンタジーでよく見るシャツとズボンに代わっており、動きやすい革製の鎧に手甲を装備していた。


「えー! これだいじょうぶなのか?」


 腰には、これまた革製の鞘に収まった剣が差されている。

 銃刀法とか、ないんだよね? お、これは道具袋かな? 

 中には、価値がわかんないけど結構な金が入ってるみた……オイ。


 中世風だろ? なんで紙幣あるんだよ!  確かに中世には紙幣あったらしいけどさ!

 雰囲気台無しじゃねぇの!?

 あくまで風だから、異世界だからで押し通す気かな。

 先が思いやられてきだぜ。


 テンプレなろう主神にバカにされたって言ってたけど、こういうとこ突っ込まれてたんじゃないかな。 設定が甘いんじゃないですかね?

 とりあえずだ。

 装備。

 E:かわのよろい。

 E:かわのてっこう。

 E:てつのつるぎ。

 こんな状態だった。


「まずは話でも聞いてまわろうか」


 何をするにしても、情報が足りない。足で稼がにゃいけませんわ。


『ちょっとまってください』


 頭の中であの女神の声がした。

 コール音とかないと、プライバシー保てないんじゃありませんかこれ。


「どうかしました?」

『この先についてお話があります。仲間にするのは女性限定でおねがいします。あ、女性みたいな男の子は可です。そういう需要がありますから』

「ウケがいいとか、そういう理由ですか?」

『だいぶ解ってきましたね。その通りです。読神たちはあなたを通して世界に没入します。あなたになりたい。自己投影して悦にひたりたいという欲求を満たしてあげねばなりません』


 ゆがんでるなぁ……。


『神は人間の様に世界を生きることができないのです。だから被造物の生活を眺めて、自身に起こりえない未来を空想して楽しむのです。娯楽、すくないですから』


 神様は神様なりに苦労がおありと見える。ゆがんでるとかいってごめんなさい。


「ま、そういうことなら? 他人、いや他柱がうらやむような生活目指しますか」


 といっても仲間は女性限定か。おばちゃんとかじゃ、だめなんでしょうね。

 オレいい年いってるから、若い子と話すの苦手なんだよなぁ。


『あ、ちょうどよく近づいてくる女の子がいるみたいです。ではまた後ほど!』


 あ、急に一人にしないでくれよ!


「よし、まずは様子見だな」


 樽の陰に隠れる。いや、用心にこしたことないよね?


 やってきたのは、少女と、ごろつきみたいな恰好をした鼻に切り傷のある少年。

 少女はきらきらとした金の長い髪を赤いリボンで一括りしていた。

 紺の軽装鎧に白い薄手の長手袋。

 とんでもなく短いスカートにひざ上までの編み上げブーツ。

 すきまから覗く太ももが非常にまぶしい。エッチ!


 左腰に差した剣を見て剣士かなと思った。

 いらだった表情を見せているが、目鼻立ちが整っており、美少女であることは間違いない。

 細い眉に大きな目。小さく収まった赤い唇。まるでどこかのお姫様みたいだ。


 ほえ~。なんだろ。白人とも違う、なんとも幻想的な美しさだわ~。

 圧倒的に語彙がたりねぇな!


「だからさ、言ってるだろ! その剣を寄越してくれって!」

「いやよ。この剣は、わたしが店でお金を払って買ったの。どうしてあなたなんかに」


 お、どうした? もめごと? やだなぁ……。


「金は払う! ほら、ここに!」

「それっぽち? わたしはその三倍出したのよ?」


 少年が差し出した袋の中の金を見て、少女は鼻で笑った。


「な!? アンタ……!」

「……情けない。腰のダガーは飾り? 我を通したければ力ずくで来なさい!」


 そうして互いに武器を手にする。

 ええええ! なにこの人たち! こわっ!

 なに? 作戦ガンガン逝こうぜなの? もっといのちだいじにしよ?

 二人が今にも切り結びそうなので、慌てて止めに入りたくないけどやる!



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