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2話 君の眠った才能を「創造主になろう!」で開花させてみよう!神であれば誰でも投稿OK!

 そうして彼女はとつとつと話し出した。

 神様という存在は途方もない数がいて、彼女もその一柱だということ。

 彼女らは常に暇を持て余しており、遊びに飢えているということ。

 そんな中、彼女らの中で一大ムーブメントを起こしている出来事があるという。


 それが「創造主になろう!」というサイトらしい。

 神様もパソコン持っているんだってさ。

 なんで知っているかって? 彼女に見せてもらったの。

 どうやってサイト運営しているのとかもうどうでもよくなってきた!


 神の一柱一柱が世界を作り、その世界で起きる歴史に評価、感想、レビューをつけるそうなのだ。

 そうして高ポイントを稼いだ世界は宇宙に顕在化されるらしい。


 天地創造だよ。いいのかそれで。

 ガチで暇を持て余した神々の遊びじゃねぇか。

 いや、遊びじゃねぇじゃねぇか! 

 こえちゃいけないラインこえてませんか、神様!


「なるほど。世界の闇を見てしまった気分ですね」

「高ポイントを稼いで総合ランキング一〇位にまで入ると、奇跡を行使できるようになるのです。だいたいの神は自らの神格を上げるために使いますが、わたしはそれであなたを生き返らせようと思います」

「上げなくていいのですか、神格?」

「わたしはすでに最高位に位置していますから」

 

 すごいこと言いましたよ、この女神さま!

 え、拝んどいたほうがいいのかな?


「しかし、神様でしたら、世界に直接干渉なさってはいかがです? たやすいのでしょう?」


 胸中とは裏腹に、理知的に話すオレ。

 すごいでしょ。伊達に営業やってないんだなこれが。


「それはタブーなのです。基本骨子を組み上げ、為すがままを見守るのがルールなのです」

「……わたしみたいな人間を送り込むのはいいのですか?」


 その世界の創造主、女神の加護を持った転生人は、いわば女神の代行者だ。


「……それはグレーなのです。みんなやっていますし。そうでもしないと面白い歴史になりません」


 地球の歴史って、もしかして奇跡なのかな? 

 面白いよね?


「今まではどうだったんですか?」

「わたしの組み上げた中世風の剣と魔法の世界は完璧に近かったのです。しかしチート英雄譚の流行に合わず、閲覧数も少ないのです。しかも最近魔王が強くなりすぎて、世界の均衡が保てなくなってしまいました」

「そこでついにグレーゾーンに手を染めようと?」

「わたしの世界をバカにしたテンプレなろう主神たちに一泡ふかせたいのです」


 なろう主神って言葉すごいね。

 その世界の創造主だから主神なんでしょうけど、なんていうかこう、……すごいね!


「概要はつかめました。わたしが生き返るためには、女神さまの加護を持って魔王を倒さなきゃいけないわけですね」

「そうです。面白おかしい歴史を作ってください」


 なんですって?


「……面白おかしいとは?」

「ただ闇雲に魔王を倒せば良いというわけではありません。それはある種の通過点。歴史が盛り上がるであろう場面だというにすぎません。そこで活躍し、総合一〇位以内に入らなければチャンスはない、というのがわたしの見立てです」


 頭がいたい。


「つまり、愉快痛快冒険譚で魔王を倒して観客を魅了し、ランキング一〇位以内に入れと?」

「そういうことです。できれば一位目指しましょう、一位!」


 いや、むふーって興奮気味に言われても、結構これキツイんじゃないですか?


「できると思いますか?」

「できないと、生き返らせてあげられません」


 ですよねー。腹、くくりますか。


「よし、では必要な物を言いますよ。まずは服! スーツじゃ無理でしょう。中世風? 世界設定に合わない! 装備も! あとできれば魔法も使ってみたいですね。あ、免疫はどうなんですか? 水飲んで即死とかないです? 言語とかもつらいですよね。路銀も欲しいし、できれば戸籍みたいなのも――」

「ま、待ってください! 今、紙に書いて確認しますから!」


 女神はオレの、なかば当てつけのような要求を懸命に紙に書き連ねた。


「――あと、転生ってことは新しい体を用意していただけるのかもしれませんが、できればこの体のままでいたいのですが、できますか?」

「可能ですが、いいのですか? 若い体を構築して送り込めますのに」

「三七年付き合ってきた体ですからね。ポイと捨てる程嫌いじゃありませんし、愛着もありますから。それに加護とやらで、身体能力の強化が可能なのでしょう? なら今のままの方が落ち着けますよ」


 知らない世界に知らない体で行くのは心細いではないか。


「一時的なものですが、超人の様に動けますよ。反動もありますけれど」

「十分です。それでお願いします。以上ですかね」

「いくつか世界に干渉しないといけないものもありますけど、どうにかしましょう」

「干渉はタブーなのでは?」


 舌の根も乾かぬうちに言うこと変えましたね!


「大した内容でもありませんし。こういうのはバレなきゃいいのです」


 女神は人差し指を得意げに振って見せた。

 ははーん。さては割と悪い方の女神ですねあなた。


「じゃ、早速お願いしますね」

「もうですか!?」


 心の準備とか、男の子にも必要ですよ! 

 もういい年になったけど!


「善は急げ、悪はもっと急げといいますからね。では、いってらっしゃい!」

「やっぱり悪い女神でしょあなたあああぁぁぁぁぁぁ!」


 床が抜け、座っていた椅子ごと、落下するオレ。


「おちついたら連絡しますね~。楽しんでください、わたしの世界!」


 そうしてオレは女神の作った世界、オレにとっての異世界とやらに行くこととなった。

 楽しんで、か。

 消えかかる意識の中、その言葉が彼女の本音であることを切に願った。


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