おまけ あらぶるもの
風渡る尖塔。
王城の一番上はそう呼ばれる。
童子がそこに立っていた。なびく髪は移ろう金色。原初の火から生まれたものの一つ。多くいた仲間は今は異界に隠居し、彼だけが残っていた。
王の誕生を祝いに顔を出すだけだったのに、暇ならつき合えよと悪友にとっ捕まったのだ。
ああ、滾るなあと笑う。
遊ぶなんて久しぶりだ。
人が多すぎて今は遊び場も減った。
「よし、眷属、呼ぼう」
「やめてよ」
いつの間にか渦巻く風がいた。悪友である。昔から、楽しいことを探して飛び回っていた。
落ち着けと地のものに言われてもしらなーいと笑っていたのは少し昔になってしまった。
「いいではないか。いつも炉の中で大人しくしているのだからな」
「最近、機関車にいるらしいじゃん?」
「あれは面白いし、あれも炉だ」
「煙いから嫌なんだよね。
それから、おうち追い出されたと向こうからやってきた土のやつらもいるし。家を勝手に掘るのやめてほしいよね」
「そいつらはどうしたんだ?」
「一時的にうちに置いた。
あとで分配するから知り合いに声掛けといて」
「土地が痩せるな」
「そーかも。でも、関係ある?」
「いや」
相対的な差が広がると良くない気もしたが、人が考えることであろう。
精霊は、どこも区切りをつけたりはしない。
「あ、なんか、あれ」
「あ?」
「キツネジロウ、なにしてんだろ。
じゃ、またな」
「我も行くぞ、暇だったんだ」
「お前が来ると大惨事」
「人のこと言えるか。この間の嵐忘れたとは言わせんぞ」
そんなことを言いながら、逃げる少女とぬいぐるみを二つの精霊は追いかけていった。
本物レイラとキツネジロウの大冒険が、始まりそうで始まりません。
うちの精霊が暴走しちゃってとギャン泣きの小娘にええ?と困り果てる精霊。じゃあ、めってしてくるねという話で落ち着いたかに見せかけて、わたしがやるのと張り切るのを見てさらに困り果てて……。




