シンデレラと義姉達と継母
「ロゼリアお義姉様、この箒に跨って!」
エラはロゼリアに大きな声で元気良く声を掛けます。
ロゼリアはエラの言っていることが分からないものの、取り敢えずエラの指示通りに箒に跨ぎ、柄にそっと手を添えました。
「ちゃんと箒に掴まってね」
エラがその言葉を言った直後に箒は一気に浮遊しました。
義姉は驚く間もなく、本能で思いっきり柄に掴まってしまいます。
そして、ある程度の高さまで浮遊すると、今度は家に向かって真っ直ぐ箒が前を進めていきました。
「エラちゃん〜、これは一体どういう〜こと〜」
ロゼリアは戸惑いを隠せず、声が震えながらエラにストレートに質問を投げかけました。
エラはそんな質問に飄々と次のように答えました。
「家に帰っているのよ」
ロゼリアは当たり前の返答に力が抜けてしまい、バランスを崩しそうになりましたが、補助魔法ですぐに正しい姿勢に戻ります。
「どうして箒で飛んでいるのと聞いているの!」
「だって私は魔女だもの。これぐらい当然だわ」
「確かに魔女って言っていたけど……本当に物語みたいに箒で飛ぶものなのね」
「やっぱり箒が操縦する上では簡単みたいなの。絨毯もあるけど操縦が大変みたい」
「あれ? 何か他の物語も混じってない?」
「確かにね。でも瞬間移動も出来るみたいよ」
「もう〜何でもありになってきたわね」
「確かに攻撃も防御も出来るし、食べなくても生きていけるしね。でも、何でも出来るわけではないわ。私達には回復機能はないもの」
ロゼリアは食べなくても生きて行けるという謎の言葉に疑問を覚えるものの、自分が持っている能力は魔女でも出来ないことに大変驚き、そのことを気に留めるとこはありませんでした。
それでも基本は何でも出来ることに驚きは隠せず、ただ感心するばかりです。
「あ、お義姉様。疲れたら遠慮なく言ってね。すぐに休憩を取るわ」
エラは戦いが終わったことと、久しぶりに義姉のロゼリアと一緒にいられることが嬉しくて、興奮しておりました。
そんな嬉しそうなエラを、危なっかしいと思いながらも、ロゼリアは微笑ましく思います。
最初の方は飛ばしているエラでしたが、疲れも溜まりますし、ロゼリアがもう少しゆっくり運転してというので、エラはそれを受け入れながら、しっかりとスピードを落とし、また休憩と挟んで家に向かいました。
そして、次の日の夕方と、もう少しで日が落ちるところで、ようやく家が見えてきました。
そのため、エラはロゼリアとの会話やめ、また運転をやめてゆっくりと降下しました。
「エラちゃんありがとう。何だか有意義な旅だったわね」
「そうでしょう」
エラは胸を張ってロゼリアの言葉に笑みを浮かべながらも、すぐに曇りがかった暗い表情になりました。
ロゼリアは一体どうしたのとエラに優しく言葉を掛けます。
「実は私…………お義母様に黙って戦地に行ったから何だか気まずくて……。嫌な予感がするの。ロゼリアお義姉様、私はどうすれば良いの?」
「それは……どうしようもないわね……」
「そこを何とか!」
「…………まあ……私も言わずに行っているから一緒に怒られましょう」
「そういう問題ではないんだって!」
エラは思っていた返答とは違うものが返ってきて更に暗い顔になりましたが、それと同時にロゼリアの表情も暗くなっていました。
エラはロゼリアの顔を見て、気分は乗らないものの、覚悟を決めました。
2人は少し重い足を前に進めて、ゆっくりと家に向かいます。
時間をかけて家の前に着き、少し心の準備をしてから家の中に入ろうとした時、継母が2人の元にやって来て、同時に抱きしめてきました。
2人は予想だにしない行動であったため、ただいまも言えずにただに抱きしめられていました。
「ロゼリアとエラが無事で良かった……」
継母は小声ですが、そんな言葉を漏らして笑みを浮かべていました。
暫くして2人は介抱を解かれ、継母は嬉しそうに家の中へと連れて行きます。
2人は先程までの心配は一体何処に行ったのだろうとお互いに顔を見合わせて継母の様子に戸惑いながらも、ただ付いていくのみでした。
「お帰り。ロゼリア、エラちゃん」
2人は何も言われることもなく、無事に家に帰ることが出来て安堵していると、突然優しい声を掛けられて驚きながらも、微笑んで挨拶をします。
「「ただいま。お義姉様」」
仕事と戦いが重なり、最近4人で揃うことはほとんどなかったので、この感覚に全員が喜びで満ちておりました。
「どうしたのお姉様。全体的に怪我しているわ」
「少し色々あってね。でも全て軽症だから問題ないわ」
「駄目よ」
ロゼリアがアナスタシアの怪我に気づき、急いで治療し、完治させました。
アナスタシアはその様子に少しは驚いているものの、そこまで驚くこともなくありがとうと笑みを浮かべますが、継母は目を見張っておりました。
「今日はみんなが好きなシチューを作ったの。2人とも疲れているでしょう。ゆっくり一緒に食べましょう」
「本当に! 嬉しい! 私も準備手伝うわ!」
しかしそんなことを全く気にすることなく、アナスタシアは2人に声をかけます。
エラは第一に喜んで、先程疲れていたのが嘘のように張り切って料理室に向かいましたが、そこにはもうシチューは勿論のことマカロニサラダまで完璧に出来上がっており、あとはもうお皿に添えて運ぶだけの状態になっていました。
すでに用意されていることに疑問を持ちながらも、早く食べたいという気持ちが勝って、皿を取り出してサッとシチューもマカロニサラダを取り分けました。
その間に3人が来て、早すぎと言われながらもそれぞれの料理を持ってダイニングルームに向かいしました。
そして、4人は久しぶりに揃って一緒に夕食を食べることなりました。
「とても美味しいわ。最近はこんな手の込んだ料理なんて食べていなかったもの」
今までは戦地にいたため、それも仕方がないことでしたが、やはり料理のバリエーションが少なかったのです。
そのため、家ではたまに食べるシチューがこれまでにないほど美味しく感じたのでした。
「なるほどね。ただ戦いという面だけじゃなくてそんなところでも苦労していたのね」
「そうなの! あとベッドも簡易的はものだから硬いからあまり快適ではなかったかな」
「それも大変ね」
2人は戦いの間の出来事について話していましたが、継母とアナスタシアはその話を真剣に聞いていました。
継母は、エラが魔女で、ロゼリアが聖女であり、それぞれの立場を全うしてきたことに対して驚きを隠せません。
一方アナスタシアは、そのことに驚きの表情を見せることなく、大変だったのねと2人を慮ります。
「でも、アナスタシアお義姉様も大変だったでしょう。怪我もしていたし。王宮でも大変だったって聞いたわ」
「ああ……とても大変だったわ。本当に色んな意味でね」
アナスタシアは大きなため息をついて一気に表情を暗くします。
2人は心配になり大丈夫と声を掛けましたが、返ってきた答えはまさかのいいえと否定の言葉。
普段の彼女なら考えられない言葉でした。
「どっちみっち話さなければならないから、もうここで全て話すわね」
そう言って覚悟を決めたアナスタシアは口を開いて話し始めました。




