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シンデレラの義姉と魔法使い


「お義姉様、そろそろヴィオルが帰ってくると思うから戻るわね」


 義姉と話していて時間が経っていることに気づいたエラは、絶句している義姉を無視して、先ほどのソファーのところに向かって歩き始めました。

 義姉は移動しているエラに待ちなさいよと声を上げながら、慌てて追いかけます。

 エラに追いつくと、危ないからと義姉はエラよりも前に出て彼女を守るようにして先導しました。

 エラは何が危ないのよと少し怒りながらも、素直に義姉に付いて行くことにしました。

 2人は歩き始めてから半分ぐらいの距離を歩いた時、義姉は走って来た1人の男性と鉢合わせをして、思いっ切り肩が当たり倒れそうになりました。

 彼が慌ててすみませんと頭を下げたことに気づいて、顔を上げると見覚えのある顔が目の前にありました。


「ヴィオル!」


 後ろからはエラの叫ぶ声が聞こえます。


「ヴィオル卿……」


 義姉はエラをソファーの所まで見送り、そして彼が来るまではエラを守ろうと思って向かっていただけなので、実際に直接会うつもりは全くなく、まさかこのような形で出会うとは驚愕してしまいます。 

 思わぬ衝撃で少しフリーズしてしまいましたが、2人の呼びかけで自分が心配されているのだと気づき、少し飛んでいた意識が戻ったのでした。


「申し訳ありません。大丈夫ですか?」

「えぇ、大丈夫ですわ。お気になさらず……」


 義姉はヴィオルに両手を胸元で小さく振りながら安心させようと思いましたが、なんせ相手は王族なため思わず声が裏返ってしまいます。

 そんな様子を見たエラは思わず笑ってしまいました。


「お義姉様、そんな緊張しなくても大丈夫よ。ほらリラックス、リラックス!」


 エラは落ち着かせようと左肩をポンポンと叩きますが、その肩は先ほど思いっ切りぶつけた肩だったので、義姉は少しの衝撃でも僅かながら痛みを感じたのでした。

 しかし、これ以上心配はされたくなかったので笑みを浮かべて、もう大丈夫よとエラの方へ振り返りました。

 その返事にエラは安堵しました。


「お姉様、彼がヴィオルよ。えっと……私の師匠よ……」


 エラは義姉にヴィオルを紹介しなければと思いましたが、何と紹介したら良いか分からず、取り敢えずヴィオルの言われた通りに紹介することにしました。


「えっと……ヴィオル・アーサー・ジェームズ・ハワードと申します。宜しくお願いします」


 ヴィオルも急にエラに紹介され、何と自己紹介したら良いか分からず、取り敢えず名前だけを名乗ることにしました。

 義姉はエラに彼から求婚されたと聞いていたので、突如師匠と言う言葉に驚きましたが、彼は何も否定しないため、多分彼がエラに求婚したとバレないようにと、師匠と言わせていることが簡単に想定され、違和感を感じながらも受け入れることにしました。

 彼に挨拶をされたため、急いで義姉も彼に挨拶をします。


「初めまして。私、ヴァーンズ家の次女であるロゼリア・ルイーズ・ヴァーンズと申します。今回は薬師とこちらに参りました。義妹がお世話になっております」


 失礼がないようにとしっかりとカーテシーも取ります。

 ヴィオルはエラのおぼつかないカーテシーと違って、お手本となるようなカーテシーを見せつけられ少し驚きました。

 これだけ完璧な作法やマナーを身に付けさせられそうになったら、エラが匙を投げたくなる理由も分かる気がしました。

 

「ヴィオル、それよりさっき一体何の用で呼び出されたの?」


 エラはこの気まずい雰囲気を壊したくて、ヴィオルに話を切り出します。


「さっきは現状の報告と言う感じだった。正直言ってそこまで大事な用事ではなかったな」

 

 大した用事でもなく呼び出されたことに対して少し不満を感じたため、少し低めの声で返事をしてしまいます。


「それにしても何故走ってここまで来たの? 普通に歩いて来たら良かったじゃない。まだ少し息が上がっているわよ」


 正直言ってそこまで全速力で駆けつけたようには見えませんでしたが、普段からの運動不足により少しの運動(エラにとっては運動でもありませんが)で長い間息切れが続くとは呆れてしまいます。

 しかし、やはりまだ少しの疲れが残っているヴィオルが心配になったのでした。


「あぁ、そうだ。母さんが、エラを呼んでいるんだった。エラの魔法を見たいらしい。母さんは攻撃系の魔法は得意だし、見てもらって教えてもらったらどう? 俺は教えられないし。今は外で準備しているから行っておいで」


 ヴィオルは義姉に出会ったことで、すっかり本来の目的を忘れていたのでした。

 慌てて要件をエラに伝えます。

 そのことを聞いたエラは、自分への興味とまた魔法の指導をしてもらえることに対して興奮し、二つ返事をするとそのまま前公爵夫人の方へと向かったのでした。

 ヴィオルは風の如く通り過ぎたエラを見届けたため、そろそろベッドルームのある部屋で溜まっている疲れを取ろうと思い、義姉に感謝とお別れの挨拶を述べてそのまま彼女と別れようとしました。

 

「ヴィオル卿、少しだけお話をさせてもらっても宜しいでしょうか?」


 義姉は声を少し張って、立ち去ろうとするヴィオルに呼びかけます。

 ヴィオルは義姉の声に驚きましたが、勿論構いませんと彼女の話を聞くことにしました。


「今回義妹の我が儘でここまで連れて来られたのでしょう。迷惑かけてしまい大変申し訳ございませんでした。義姉として謝罪させてください」


 義姉は斜め45°と綺麗な角度で頭を下げて謝罪をしました。

 まさか謝罪をされるとは夢にも思わなかったヴィオルは大変驚いてしまいました。

 義姉が全く頭を上げようとはしないため、ヴィオルは慌てて謝罪を止めさせます。

 

「いえ、彼女がああ言う性格なのは知っておりますので……」


 正直に言って義姉の言う通りエラが我が儘なのは事実であるため否定も出来ず、気にしないように言うしかありませんでした。


「あと……私から言うのも烏滸がましいのですが、ヴィオル卿にお願いがあります」


 ヴィオルは義姉の謝罪が終わって安堵していたところ、次は頼み事を言われ、少し嫌な予感がしました。

 義姉は何と言おうかと頭をフル回転させて、言葉を選びながら頼み事をします。


「正直に申しまして、愚妹はまだ精神的にまだ幼い所がありまして、知識の方も不十分です。実は先ほど1人でソファーの上で眠ろうとしていたようでして……」


 まさにヴィオルの嫌な予感は的中。

 しかし、まさかエラがそこまで知識が無かったことには驚愕し、また恐ろしくも思いました。

 婚約や結婚の本来の意味が分かっているのかさえ怪しく、不安を覚えてしまいました。


「だからその……彼女をどうか守って欲しいのです。宜しくお願いします」

 

 義姉は自分だけではエラを守ることは出来ないと思い、再びヴィオルに頭を下げて必死に頼みこみました。

 

「分かりました。彼女はちゃんと守ります」


 ヴィオルは安心させるようそのように言い切りましたが、内心はヒヤヒヤしており、彼女の身を色々な意味で守らなければならいと考えると少し頭が痛くなるのでした。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 頼んだぞヴィオル( ˘ω˘ )
[気になる点] >今の現状の報告 今と現状、意味が二重してません? [一言] ヴィオル……エラに悪い虫がつかんように結界でも張ったらどうかな(;'∀')
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