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【書籍化】千夜千食物語  作者: 枝豆ずんだ
4章『ふわっふわトロける七色パフェ』
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番外*恐るべき獣!その名はわたあめ!*


「キャンキャン!キャワワワン!」

「おっ、わたあめじゃないか」

「今日も元気そうじゃのぉ~」

「ハハッ、朝からお散歩かい?」

「姫殿下はまだ寝てるんだろう?ひとり(?)でお散歩なんて偉いなぁ」

「そうだ。キャベツ食ってくか?」


 今日も元気に、一匹の白いポメラニアンがお尻をフリフリさせながら大神殿の中を闊歩する。その威風堂々とした様はまさに恐るべき魔獣!と言って差し支えないのではないかと、雪の魔獣“わたあめ”は心底思っている。


「キャワワン!(おろかなにんげんどもめ!ぼくにおそれおののくがいい!きょうもキャベツをごうだつしたよ!)」

「ははっ、美味しいか、そうかそうか。わたあめは本当にキャベツが好きだなぁ~」

「この前は氷をありがとうなー、おかげで娘の熱も下がったよ」


 フンスフンス、とわたあめは人間に撫でまわされ、鼻を鳴らす。





「キャワワン!」


 ぼくはわたあめ!

 10歳!魔獣の子供だよ!属性は雪だよ!


 ご主人様は白い髪に砂色の肌の人間の女の子!お姫さまだよ!


 名前は“エレンディラ”って言うらしいけど、呼ぶ人は殆どいないし、ご主人様はたぶん“エレンディラ”じゃないと思うよ!ぼくそう思う!


 ご主人様は遠い国からこのアグドニグルって人間の国……あの神殺しの魔女の統治してる国にやってきたんだって!


 ぼくは氷の魔獣のスコルハティ様の眷属!雪を操れるけど、そんなにたくさんは無理だよ!寒いし!


 北の魔獣たちが暮らす山では、ぼくみたいなのはいつも虐められてて、たぶん次の春には溶けちゃうんじゃないかなぁ、さびしいなぁって思ってたんだけど、ご主人様が出来たからもう溶けなくて済むね!ご主人さま大好き!


 うん、ぼくは雪の魔獣なんだけど、生まれた時から体が小さくて、声も小さいから、何の役にも立たないって、ぼくを産んだ魔獣にも見捨てられてね!消えちゃうんだろうなぁ、寂しいなぁっていつもブルブル震えてて、雪山に隠れてたんだ。


 だから今の生活がすごく好き!キャベツもらえるし!みんなぼくに平伏してでれでれするし!ご主人さま弱っちいからぼくが護らないとね!


 ……初めてご主人さまの前に呼ばれた時、一生懸命かっこうつけたんだ。強くて、こわい魔獣じゃないと「いらない」って言われちゃうから。

 ぼくだってわかってるよ?弱いぼくが、魔の山じゃ生き延びられない。だから、にんげんと契約しないと消えちゃうってわかってた。


 でもぼくみたいな小さいのはみんながっかりして、呼ばれることなんか殆どなかった。たまに、失敗したさんりゅうまじゅつし?が、ぼくを召喚して「お前なんかにッ!」って怒鳴ってぼくにものを投げつけたりした。


 そういうにんげんはみんなバラバラにしたけどね!


 弱いって言っても、にんげんよりずっとつよいよ!


 あ、そうそう、それで、ご主人さま。


 本当はスコルハティのご主人さまみたいな、強そうなひとと契約したかったんだけど、ご主人さまはぼくをみて大喜びだったから、まぁ、いいかなって!それにスコルハティのご主人さま怖いしね!スコルハティと契約した時、スコルハティを半殺しにして無理矢理契約したって聞いたよ!怖いね!え、それ人間?違うよね!まぁいいや!


「あら、わたあめ。ふふ、朝から元気ねぇ。エレちゃんは一緒じゃないの?まだ寝てるの?そう。御祈りの時間までには起こしてあげてね」

「キャワワン!(うん!なんか皆ご主人さまのこと寝坊みたいな感じで言ってるけど、まだ太陽のぼってないからね!!神殿の皆、起きるの早いね!寝れないの?)」


 この人は聖女?の、バルシャ!良い匂いがする人だよ!いっつもにこにこしてて優しいよ!お腹撫でてくれるよ!


 時々なんかくさいにおいするけど、おんなのひとをくさいっていったら失礼だよね!


 タッタッタ、と廊下を走る。雪山と違って、にんげんの作った建物の中はあったかいし広いし走りやすくて良いね!


 ひとしきり神殿の中を走り回って、みんなにキャベツとかニンジンとかおやつを貰ったり、撫でて貰ったりしたよ!


「キャワン!」

「……うーん、わたあめ?」

「キャワン!」

「うーん……まだ外、暗いですよ……もうちょっと、寝ま……スヤァ」


 ぼくの寝床があるのはご主人様の寝室だよ!ちゃんと木箱にやわらかいクッションを入れて貰ってるけど、ぼく知ってるよ!にんげんのベッドが一番寝心地いいよね!


 ご主人さまの布団に潜り込んで、ぼくももう少し寝る事にした。


 今日はイブラヒムが様子見に来るんだっけ、あいついっつも意地悪言うから、靴を噛んでやらないとなぁ。

 伝令のお兄さん、いつもジャーキーくれるんだけど、ぼくお肉はそんなに好きじゃないんだよね。でも嬉しそうに貰わないとかわいそうだから貰ってるよ!お兄さん、夕方まで一時間ごとに来るから暇なんだろうね。


「キャワン、キューン……」

「おやすみ、わたあめ……」


 お日さまが昇ったら、ご主人さまも起きるよね!

 

 ぼく、ほふく前進もっと上手くなったんだよ!可能な限り平たくなるよ!真っ白いから絨毯と同化は出来ないけど、雪の中だったら完全に隠れられるよ!


 今日は何して遊んでくれるかな!



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2023年11月1日アーススタールナ様より「千夜千食物語2巻」発売となります
― 新着の感想 ―
ふわふわ真っ白ポメラニアンのわたあめ、かわい ーたまに、失敗したさんりゅうまじゅつし?が、ぼくを召喚して「お前なんかにッ!」って怒鳴ってぼくにものを投げつけたりした。 そういうにんげんはみんなバラバラ…
[一言] ぼくは氷の魔獣のスコルハティ様の眷属!雪を操れるけど、そんなにたくさんは無理だよ!寒いし! いや、寒いんかーーい!www
[一言] 初登場時から思っていたけど、めっちゃあざといw
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