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ここではありふれた物語  作者: 越智 翔
《第三部・作品説明》
863/1082

【第三部・あらすじ】

※間違い、見落とし、表記漏れなどあったら、ご指摘ください

※ネタバレ注意、気をつけてはいますが、記述は最新話に揃えてあるとお考えください


《凡例》


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『第零章 サンプル』


 越智翔は駄文を公開しようと思い立った。

「なろう」で数々の作品を目にして、似たようなモノを書こうと決めてしまったのだ。

 ところが、気楽に書き始めたはずが、どんどん文章が長くなり、労力が大きくなってきて、頭を抱えるようになった。

これでは読むほうも大変だ。そうだ、登場人物紹介とあらすじをつけよう!

 このあらすじサンプルは、ネタバレ防止用の文章で、うっかりこのページを開けてしまった人が、いきなりあらすじを読まずに済むようにするためのものである。


登場人物:

[越智翔], [モブキャラA], [モブキャラB]

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各章の登場人物の一覧は、[]で囲ってあります。この記述は、登場人物紹介ページと一致するものとなっています。

登場人物紹介とあらすじは、今のところ、全編を通しての記載となっていますが、作品が長くなってきたこともあり、分割する可能性があります。


物語の進行にしたがって、このページは改訂を加える可能性があります。

ネタバレなどには、くれぐれもご注意ください。


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『序章~第十七章まで』


 日本で交通事故死した佐伯陽は、異世界の貧しい農村に転生し、ファルスと名付けられた。

 二歳半の時、村が激しい飢餓に見舞われ、子供を交換して殺して食べる事態に陥った。ファルスはそこで、転生の際に得た超能力『ピアシング・ハンド』に覚醒し、母親を含む三人を殺害して逃げ出した。しかし、村の出口で領主の軍勢に見つかり、致命傷を負う。

 川に流されることで何とか生き延びたが、気がついた時には奴隷商人ミルークの所有物になっていた。彼の下で六歳まで、奴隷としての訓練と教育を受けて育つ。

 オークションにかけられたファルスが引き取られた先は、港湾都市ピュリスを治める総督、トヴィーティ子爵の邸宅だった。そこでたびたび理不尽な扱いに苦しみながらも、日々を過ごす。

 ある日、子爵令嬢のリリアーナが何者かに誘拐され、ファルスはその手がかりを見つけてしまう。見捨てることもできず、正体を明かしたくもないファルスは、単身、賊の隠れ家に向かう。リリアーナの救出目前のところで、戦鬼の渾名をもつ傭兵キースと遭遇し、隠れ家の屋根の上に追い詰められる。ファルスは秘密にしていた能力を使って、リリアーナと共に脱出した。

 目立ち過ぎたファルスは官邸にいられなくなり、街中の薬品店での仕事を命じられる。そこで大商人グルービーの手下であるアイビィと同居することになった。

 店の仕事が軌道に乗ってきた頃、ファルスは家宰のイフロースから、ムスタムへの航海に同行するよう命じられる。行きは順調だったが、帰路において暴風雨に巻き込まれ、漂着した島で海賊の襲撃を受ける。ファルスは能力を駆使して賊を退けるが、その際に犯した殺人に、心を苛まれる。

 心を病みかけた状態で、ファルスは不潔な娼館で虐待された奴隷達を見つけてしまう。怒りに駆られて奴隷達を引き取ったが、それがセリパス教司祭のリンの目に触れ、本人はもとより、主人であるサフィスにまで非難の声をぶつけられる事態に発展した。実は裏では子爵の失脚を狙った陰謀が蠢いており、最終的には密輸商人達を誘き出して、一斉検挙することに成功した。

 ファルスの故郷を統治していた貴族であるオディウスが子爵を訪ねた際、官邸の敷地内に暗殺者が現れた。黒い矢が放たれ、復讐の意思表示がされたが、犯人は見つからなかった。

 年末に、ファルスは故郷の貴族のもとに、密使として派遣される。その際、グルービーのもとを訪れ、歓待を受けた。オディウスの領地は貧しく荒廃していた。その居城にも潜入するが、中では戦争の準備が行われていた。帰路、ヌガ村にて、ファルスは夢魔病に感染する。帰宅後に発症し、生死の境をさまようが、女神の手によって一命を取り留める。

 奴隷身分から解放され、ファルスは子爵一家の王都旅行についていく。国王即位二十周年の祝賀のために、大勢の人々が都に集まっていた。非公式の会見で、ファルスは王太子タンディラールの目に留まる。

 王国南部の疫病流行に伴い、宗教組織が支援活動を始める。ファルスも動員され、ウィーをはじめとした知人の冒険者達と一緒に南方に向かう。

 その半年後、同じ疫病がピュリスを襲う。と同時に、あちこちから武装した集団が市内に入り込み、破壊活動を開始した。ファルスは賊を相手に戦うが、いつも自分の側にいたはずのアイビィの行方がわからない。また、この混乱に乗じて、ウィーは子爵への復讐を果たそうとした。

 一連の陰謀の背後にグルービーの存在があるのを知ったファルスは、単身コラプトに向かう。だが、そこはグルービーの居城も同然だった。能力を駆使して潜入するも、計略にかかり、敗北して捕らえられてしまう。助かる見込みはなかったが、女神の啓示を受けた幼馴染のノーラが救出に駆けつけ、ついにグルービーを倒す。

 だが、失ったものは大きかった。愛着のあった街は破壊され、修復によって形を変えていく。知り合いも一人、二人といなくなっていく。世の無常に絶望を募らせていった。

 国王が禅譲するとの知らせを受けて、子爵一家は再び王都に向かう。だが、戴冠式はいっこうに行われず、ついに国王は死去する。伝国の宝冠が失われたことで、二人の王子の後継争いが勃発、王都は戦場となった。ファルスは子爵一家と共に逃げ惑ったが、状況を打開しようとする中で、数々の武功をあげる。最終的にこの混乱は、スード伯の介入によって、タンディラール側の勝利に終わった。

 戦後の論功行賞によって、ファルスは騎士の身分を得る。だが、人の世の醜さにいやけが差していたファルスは、富貴に背を向け、不老不死を得るべく、一人旅立った。


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『第十八章~第四十二章まで』


 ティンティナブリアから北上してアルディニア王国に入ったファルスは、関所のある村で足止めを受けた。行き場のないファルスは、村の奇人テンタクの家に留まることにした。村で横暴の限りを尽くすジノヤッチはテンタクが養っていた孤児を連れ去ったが、そのせいで村人達が立ちあがった。ファルスは関所に火を放って村人達を助け、ジノヤッチとその仲間達を村から追放した。

 西進するファルスは、ある時、道に迷って森の中に入り込んだ。そこは楽園のように美しい場所で、女神シーラの支配する領域だった。ここで祝福を受けたことでファルスの肉体は不老に至ったが、魂の不死は与えられていないことを知り、楽園を去って旅を続けることにした。

 タリフ・オリムに到着したファルスは、聖女の不死が事実かどうかを知るために、司教ユミレノスト師の支援を求めた。師は二ヶ月の間、ファルスに修行者として振舞うことを要求した。彼とミール王の腹積もりとしては、都に巣食う縁故人事の害悪を一掃したいというものがあった。ファルスは、名門ブッター家のギル少年と知り合ってセリパス教についての理解を深め、マズ飯料理人のチャルを弟子にして鍛え上げた。元神聖教国の旧貴族の出身であるアイクにはしばしば助けられた。またノーゼンを通して贖罪の民の存在を知った。都の治安が悪化し、降臨祭の聖女役の少女が襲撃された。チャルの屋台も破壊された。これについて独立派と融和派の司教が互いに罪を擦り付け合い、都の中での対立が高まった。ファルス達は女性を襲撃した犯人、マハブを捕縛した。この事実をミール王は巧みに利用し、都に蔓延る縁故人事の弊害を一掃した。ついにファルスは聖女の祠に立ち入ったが、発見できたのは解読不能の文字だけだった。ファルスに嫌がらせをしていた冒険者ギルドの支部長への取り調べの際、使徒が彼に憑依して、ファルスに服従するよう迫ってから、これを死に至らしめた。

 次は聖都を目指してリント平原を横断したが、その際にファルスは龍神ヘミュービと遭遇する。ファルスを邪悪なものと断じた龍神は、これを殺そうとするが、シーラの介入によって死を免れた。贖罪の民の村で村長のダニヴィドに出会ったファルスは、龍神と偽皇帝アルティの物語を聞いた。

 聖都に近い居留地で、ファルスは隠れ娼婦とそれを治療する医師を見つけてしまう。実はこの医師は枢機卿の一人、アイドゥス師だった。

 聖都に到着したファルスは一ヶ月間の猶予を与えられた。その間に聖女の廟堂に立ち入ろうとあらゆる手段を講じるが、すべて失敗してしまう。有力者達と面会する中、ジェゴス師の邸宅で亜人マルトゥラターレと出会う。また、旧貴族の娘ソフィアとも出会った。頼みの綱のドーミル師は、精神障害を患っていた。思い余ってファルスはアイドゥス師を脅迫したが、彼からはボランティア活動への参加を勧められた。二度目の支援活動の際、アイドゥス師とファルス、ソフィアは聖都に帰りつくことができず、野営した。その翌朝、聖都の入口でアイドゥス師は逮捕されてしまう。聖都の腐敗と不正に憤ったファルスはアイドゥス師を救い出そうとするが、彼はそれを拒んで最後の授業を行った。その後、彼は火刑に処され、ファルスは聖都からの退去を命じられる。旅の目的を果たすため、ファルスは強引に廟堂へと忍び込んだが、その地下で横穴から深みに転落した。

 そこは生還者のいないダンジョン、魔宮モーだった。同じく転落していたソフィア達と出口を探して彷徨うが、とある階層で悪魔アルジャラードが出現し、ファルスを圧倒した。やむなく下の階層に移ったファルスは、ジェゴスから廃棄されたマルトゥラターレと合流する。また、昔、地下に閉じ込められた聖職者ヨルギズの記録を発見した。脱出方法を求めて下層に向かう途中、吸血鬼の群れに襲撃され、ついに全滅の危機に瀕したが、水の民の末裔であるカディムに救われた。ファルスは最下層に赴き、聖女の正体を知った。リント自身は既に死去しており、この場所でコピーが製造されていたのだった。ファルス達は準備万端整えて上を目指し、アルジャラードとの決戦に勝利する。その後、ファルスは魔宮内で断罪の剣を手にする。これは所有者の精神を侵食する危険なものだったが、この時点ではわからなかった。地上に戻ったファルス達は、その場でジェゴスの不正を明らかにし、それまで狂気を装っていたドーミルが新たな教皇になった。

 神聖教国を離れたファルスは、解放されたマルトゥラターレを伴っていた。経済的に困窮したファルスは、ムーアン大沼沢の畔で魔物を狩って小銭を稼がなくてはいけなくなった。街に黒竜が襲来するとファルスは、他の冒険者と一緒になって一晩かけて黒竜を討伐した。

 この功績のせいでヤノブル王の目に留まってしまい、ファルスはレジャヤに招かれることになった。隣国への嫌がらせのために、ファルスは圧力をかけられた。これを知ったタンディラールが使者を派遣して、ファルスを自国に呼び戻した。いったんピュリスに戻ったファルスは、街の変貌ぶりに驚かされた。できれば知り合いに知られずに町を通り抜けようとしたが、その考えを先読みしていたノーラの手によって発見されてしまった。ファルスは王都にて正式に騎士として認められた。と同時に、スーディアに行くよう命じられた。その目的は、伯爵であるゴーファトの暗殺だった。

 旅を再開して間もなく、ノーラの追跡に気付いた。また、とある村に宿泊中、使徒がファルスに接触し、目的の邪魔になる者達を殺すようにと迫った。山道を越えて領都アグリオに到着したファルスは、ゴーファトから歓迎され、成人した甥を差し置いて次の領主に指名された。それからファルスは、ミルークの奴隷収容所時代の仲間と次々に再会する。ゴーファトが南方に所用で出かけるのを狙って、ファルスは暗殺を決行しようとした。パッシャの関係者が相次いでファルスに接触し、仲間になるよう誘う。また、浮浪者を装った女神の騎士アドラットは、ファルスに取り入ることでゴーファトの殺害を目論んでいた。ファルスはゴーファトの登城命令を受けて、この機に彼を暗殺しようと考え、密偵達と打ち合わせをした。だが、決行当日に宿舎に暴徒が押し寄せてきて、街は混乱状態に陥った。そんな中、ノーラ達がゴーファトに捕縛されたため、アドラットと示し合わせて出頭し、隙を見てゴーファトを討とうとした。だがそこにパッシャのメンバーが現れて妨害、一部を救出できないままに撤退することとなった。憎悪に駆られたニドは独断でファルスを襲撃したが、その時にルークが巻き込まれて負傷し、苦痛吸収の神通力に覚醒してしまう。ファルス達は城内の見取り図を入手し、内部に潜入した。捕らえられていたタマリアは、救出されるとゴーファトへの復讐を望んだ。地下室に駆けつけると、パッシャによる儀式はほぼ終わっており、ゴーファトを依代にして、魔王シュプンツェが復活する。市内全域に広がったシュプンツェは住民を無差別に貪り食ったが、最終的にファルスはピアシング・ハンドでシュプンツェを封印する。パッシャのメンバーは去り、取り残されたゴーファトはタマリアの復讐を受ける。使徒はファルスに腐蝕魔術の魔道具を与えた。ファルスとノーラは南を目指し、アドラットは他の少年達を連れてスーディアを去った。

 ムスタムに到着したファルスは、ノーラを追い返そうと手を尽くしたが、うまくいかなかった。フリュミーの実家を訪ね、その兄バイローダの世話になる。そこでディンに求婚しているオルファスカなる女冒険者の存在を知る。彼女の悪意を悟って、ファルスは祝祭日に策略を仕掛け、大恥をかかせて追い払った。

 人形の迷宮に到着したファルスは、一切を利権に縛られたドゥミェコンで探索を妨げられ続けた。界隈を仕切るドミネールの嫌がらせから逃れた際、ガッシュと再会する。まともに探索ができないため、ファルスは少年ギャングのボスであるアナクに金を払い、裏口から迷宮探索を始めた。この時、アナクが迷宮内のリザードマンと結託しているのが判明した。挺身隊を率いていたキブラはオルファスカに脅迫されており、彼女は大々的な迷宮攻略命令を発した。五人組を作る必要に迫られたファルスは仲間探しに奔走する中で、キースと再会する。ファルス達は、表向き当局の命令に従って迷宮に潜った。だが、アナクの仲間の少年がドミネール達に誘拐されたことが明らかになり、探索に向かわなくてはいけなくなった。と同時にリザードマンの王レヴィトゥアの襲撃が始まって、アナクまで攫われてしまった。二手に分かれてファルスとキースがドミネールを追跡するが、地上に近いところでは挺身隊員が互いに殺しあっていた。単独行動中のファルスはオルファスカと神官戦士達に発見され、追い回された結果、一気に迷宮の下層まで転落してしまう。有毒ガスと崩落の危険から逃れつつ、ファルスは幸運にもアナクを発見した。それから地上に舞い戻り、ドミネールとその仲間達を倒した。キースと合流して、オルファスカ一行も倒した。事態は収拾されたが、地上の人間側の戦力はほぼ失われてしまった。レヴィトゥアは間もなく地上への侵攻を計画していた。ファルス達は下層に向かい、レヴィトゥアを倒した。それから最下層のバジリスクの王、ケッセンドゥリアンのところまで赴き、不死を得ようとしたが、それが叶わないとわかったため、これを殺した。迷宮が解放され、街も解体となり、最後には地上にアルマスニン派のリザードマンが遊びに来て、砂漠に散っていった。ファルスの下には、外の世界を知りたいと望んだリザードマン、ペルジャラナンが居残った。

 人形の迷宮でも不死を得る方法を見つけられなかったファルスは、かつてのミルークとの約束に従って、東部サハリアに向かった。だが、そこでは北部を支配する赤の血盟と、南部を支配する黒の鉄鎖が対立を深めていた。偶然再会したミルークは開戦を食い止めるべく南方に向かったが、そこでフマル氏族の兵に捕らえられてしまう。ファルスは彼を救出したが追手がかかり、赤竜の谷に逃げ込むことを余儀なくされた。フマルの戦士相手に交渉を持ちかけるも成功せず、赤竜からは狙われ続け、そのためにミルークは落命する。折からの砂漠の雨によってノーラとペルジャラナンも洪水に飲み込まれた。

 復讐を望んだファルスはアーズン城に向かい、ティズに面会する。ネッキャメルの頭領の一人、ラークと共にブスタンへの救援に向かい、そこでファルスは能力を余すところなく活用して、数倍の戦力を有するフマルとセミンの連合軍を壊滅させる。ブスタンで再会したミルークの娘、ジルを伴ってアーズン城に引き返したファルスは、城を包囲する黒の鉄鎖の軍勢を、腐蝕魔術で弱体化させた。また、ハリジョンに向かい、先の迷宮で得た魔眼の力で海上封鎖するアルハール氏族の艦隊を全滅させた。ここに至ってティズはファルスにアネロス・ククバンの息子を名乗るようにと勧めた。赤の血盟の軍勢は奪われたフィアナコンに向かい、そこで裏切ったフィアン氏族の族長の弟、ハーダーンの投降を受ける。その後、ファルスは火の賢者の魔術を無効化して、一気に城内に雪崩れ込んでフィアンの族長アールンを捕虜とした。開戦前の国境を取り戻した赤の血盟の連合軍のところに、ようやく盟主であるニザーン氏族のアラティサールが、参謀のハビを伴ってやってくる。反攻のために赤の血盟はバタンを包囲するが、宿営中に強力な魔法攻撃によって半壊する。ファルスは暗殺されかけるが、郎党達のおかげで生還する。また、土の賢者、風の賢者を葬り去った。バタンでの決戦で敵を破った赤の血盟は、いよいよ本格的に勝利を目指すが、その時になってノーラとペルジャラナンが生きてファルスのところにやってきた。シーラの介入のおかげらしいと察したが、今となっては戦争から抜けるわけにもいかず、フマル氏族と戦うために南西に向かった。そこで指揮官を射殺されるなど、赤の血盟は苦戦を強いられたが、ノーラが腐蝕魔術でフマルの騎兵の多数を虐殺し、タフィロン攻略に漕ぎつけた。だが、包囲中にフマルの族長ハダーブの策略によって夜襲を受け、ジルが捕虜になってしまう。ファルス達は城内に突入し、タフィロンを陥落させてしまう。パッシャの介入に気付いたファルスは、赤の血盟に従ってジャンヌゥボンに向かい、水の賢者も討った。アルハールの族長ラジュルナーズは自決して城を明け渡し、戦争は終わった。ファルスは、戦争を煽ったパッシャの幹部、ハビを砂漠に呼び出し、これを討った。

 ノーラとペルジャラナン、タウルとフィラックを伴って南方大陸に渡ったファルスは、最初にキト、続いてカリに上陸し、それからティンプー王国の使者に伴われて内陸の国々を経巡った。クース王国でフィシズ女王と揉め事を起こしたために、その先は徒歩で南を目指した。ウンク王国で関門城をくぐり抜け、ファルスは大森林に至った。

 大森林で探索班を編成中、獣人がオークションにかけられると知って落札した。このせいで地元の有力冒険者のゲランダンと揉め事になり、仲間探しが難しくなった。だが、ルーの種族であるシャルトゥノーマ、使徒の手駒であるイーグー、ワノノマの魔物討伐隊員だったアーノが加入し、ゲランダンとの和解も形だけは成立して、ようやく大森林の奥地を目指せることとなった。探索は危険で、中継地に向かう途中でも大勢の犠牲者が出た。人食いの村ではストライキが発生した。大河ケカチャワンに到着し、川を遡行した。既知の最奥のキャンプ地であるケフルの滝から、更なる奥地を目指そうとしたところで、ゲランダンがファルス一行を殺すべく動き出した。また、ここまでの道中で得た財宝目当てで、ペダラマンの班も裏切りを決め、かくして大森林の中で殺しあう混乱状態に陥った。だが、最後に魔物の暴走が発生し、大勢が飲み込まれて死んだ。

 生き残ったメンバーで、更なる奥地にあるラハシア村を目指した。そこはルーの種族に協力的な人間達の隠れ里だった。そこでアーノはルーの種族に拒まれ、退去を命じられた。そこから一週間ほどかけて窟竜やワーム、巨大蜂などが徘徊する沼地を抜け、一行はルーの種族の領域に立ち入った。失われた都のナシュガズに至るため、ファルス達は高山地帯に踏み込んだ。グリフォンの襲撃を退け、荒れ狂う雪山に苦しめられながら、ようやく一行はナシュガズの地を踏んだ。そこで大森林の地図を得て、ファルス達は大森林を縦断した。不老の果実のありかも判明したが、そこで緑竜の襲撃に遭う。これを退けることには成功したが、不老の果実はゲランダンの手に渡ってしまった。だが、彼が若返りを果たした直後、彼に父を殺されていたチャックが仇討ちを果たした。

 探索を終えたファルス達は、トゥワタリ王国に滞在した。緑竜の素材を売ろうとしたところで土地の富豪ワングと出会い、それらを買い叩かれそうになったが、逆に彼にとっての不都合な事実を指摘して、服従させることができた。この地でファルスはコーヒー豆を発見してしまい、その利権を得ようと考えた。ディンがキースとビルムラールを連れてやってきた。ファルス達はポロルカ王国を目指すことになり、途中、バハティー港に立ち寄った。ディンは思い悩むファルスに、自分の過去について語った。

 ラージュドゥハーニーに到着したファルス達は、ワングの知り合いの貴族バンサワンと面会して、コーヒー畑の所有を認めてもらえるよう、交渉した。だが、ちょうど先王の死去があって状況が落ち着いていないため、特に長く待たされることになるだろうとのことだった。また、ビルムラールとキースを伴って、シェフリ家を訪ねた。状況が動かないので、ファルスは都とその周辺を観光した。王の死に伴う一連の儀式が終わったが、ポロルカ王国は即位の儀式に欠かせないブイープ島での行事を済ませることができずにいた。島の周辺に青竜が棲みついてしまい、軍を派遣しても討伐できなかったためで、この始末のためにファルス達を含む冒険者達も動員された。その際、魔物討伐隊のザンがペルジャラナンに敵意を向けた。青竜討伐に成功した後、ファルス達は功労者としてイーク王太子らに招かれた。またあちこちの貴族からも声がかかるようになり、ファルスはとある地方領主の別荘に招かれた。だが、そこで毒殺されかけた。ファルスは都に戻ったが、直後、今度は地方領主自身が毒殺された。そのせいでファルスに容疑がかかり、投獄される状況に陥った。事態を静観していたファルスだが、イーグーが行方不明になったことを受けて、これ以上は座視すべきでないとして脱獄した。仲間と合流する過程で、ファルスはパッシャの介入を知る。シェフリ家に向かい、事情を説明して王宮に向かうと、既に暴動が起きていた。混乱の最中、第三王子が殺害される。ドゥサラ王子を伴って、ファルス達は王宮から脱出し、パッシャが向かったとみられるブイープ島に渡った。そこでは儀式が行われており、古代の超兵器クロル・アルジンが復活してしまった。

 形勢不利を悟ってファルス達は島から逃走したが、海上でクロル・アルジンに追いつかれ、魔法の一撃で船は蒸発した。既に負傷していた王太子は海に飛び込んでいたが、生き延びることはできなかった。ドゥサラ王子と合流してから、ファルス達は議論の末、王国の軍団が駐留している砦を目指した。だが、その砦に到着する寸前にクロル・アルジンが飛来して、砦を一撃で消滅させた。それで無謀を承知で、ファルスはクロル・アルジンに接近して調査を試みたが、軽い魔法一発で吹き飛ばされそうになり、戻ってきたイーグーに救われた。相手の手強さを悟ったファルスはピアシング・ハンドを最大限活用して、腐蝕魔術から魔眼まで、あらゆる手段での攻撃を試みたが、クロル・アルジンを倒すことはできなかった。打つ手なく困っていたところで、タウルが宰相バーハルを救出して拠点に戻ってきた。バーハルの話では、王宮の裏手に秘密の領域があり、それがクロル・アルジンと関係しているとのこと。ファルス達はそこに侵入し、古代におけるイーヴォ・ルーの真実を知る。そこでパッシャの幹部モートの誘いを受けた。リーダーであるデクリオンとウァールを倒せば、この危機を終わらせることができると告げられる。拠点に戻ると、ウァールの襲撃が始まった。ファルスは反撃するが、手にした魔剣の影響で、まともに戦えなくなってしまった。イーグーが駆けつけてウァールを撃退し、危機を免れた。一方、ウァールが死んだと判断したモートは本性を現して、街に火を放った。先のブイープ島脱出から袂を分かっていたシャルトゥノーマがザンに捕らえられてしまい、それを救出しようとしたディエドラが捕虜になった。それを知ってファルス達は魔物討伐隊と向かい合うが、結果としてザンは裏切りに遭い、ファルス達と合流してパッシャに当たることになった。この時、シャルトゥノーマがポロルカ王国の秘宝であるバショウセンを操れることがわかった。これによってモートの引き起こした火災を鎮火し、ポロルカ王国側は反撃に出た。王宮を奪還した際、第四王子がパッシャに与していたことが明らかになる。この動きにパッシャが反応する前に行動する必要があったため、一行は嵐の海を越えて再度ブイープ島に渡る。決戦の末、ファルス達はパッシャの幹部達を倒し、クロル・アルジンを破壊することに成功した。

 パッシャが集めていた霊樹の苗をシャルトゥノーマが故郷に持ち帰った。即位したドゥサラ王はファルスを貴族に叙す考えだったが固辞され、再びファルスは旅路をとった。だが、その途上にある村に宿泊したところ、パッシャの残党が復讐のために一行に襲いかかった。仲間達が犠牲になり、逆上したファルスはついにピアシング・ハンドの真の力を解放してしまう。モーン・ナーの呪いを自覚したファルスは力尽き、仲間達の手によって救い出された。暴風雨が迫る中、謎の人物が現れてファルス達を北方に逃がした。

 そうして辿り着いたのは、目的地にしていたカークの街だった。だが、到着後まもなくファルスは病に倒れ、起き上がれなくなった。大勢の人を手にかけたことが、心の病を齎していた。ファルスは生死の狭間を彷徨う中で、炊飯を通して自身に立ち返った。土地の武人、ワン・ケンの下で半年近くを過ごしてから、ファルスはすべての因縁に決着をつけるべく、再び旅に出た。

 船で北上して東方大陸のミッグに到着したファルスは、良質な武器を買い求めたが、そのせいで女鍛冶師のホアに目をつけられてしまう。逃れようと陸路で東を目指したが、付き纏われてしまった。途中の村が水棲馬の害に苦しめられていたので、これを捕らえて我が物とした。神仙の山では、女神が不死を与えないことなど、世界の秘密を知った。また、夏の間を修行に費やした。それから下山して街に出たところ、使徒がファルスに砂漠までやってくるよう、誘導した。ファルスは敢えて逆らわず、砂漠の遺跡に向かう。そこで屍骸兵の不死を目の当たりにする。使徒は仲間達を連れてファルスを脅迫し、屈服させようとするが、ファルスは不死と共に彼らを拒絶し、追い返した。

 長旅の末に、東方大陸南東部の大都市、チュエンに到着した。風情ある街並みを楽しむ一行だったが、遊び人のユンイに声をかけられた。彼は美少女に育ったノーラを我が物にしようとしていたが、ファルスは彼が自分やノーラの実父かもしれないと知る。それでもお構いなしに手を出そうとしたユンイに対して、ファルスは彼の身分を保証する脅迫状を奪い、公衆の面前で焼き払った。結果、ユンイは彼を恨んでいた女達によってリンチにかけられ、自殺した。ファルス達は嫌な気分を引きずったまま、チュエンを後にした。

 陸路でスッケまで到着した一行は、ヒシタギ家の棟梁オウイのもてなしを受ける。だが、ヒシタギ家では、魔物討伐隊の解散が問題になっており、親族同士で揉め事が発生していた。ファルス達がスッケを後にするはずの日に、ゲリーノが反乱を起こし、大勢が犠牲になった。

 ようやくワノノマの本土、皇族の住まう島に、ファルス達は辿り着いた。ここまでついてきたホアは当局に引き渡された。ファルスはオオキミとの面談の後、姫巫女ウナと話し合う。ウナはファルスを龍神モゥハに引き合わせた。モゥハは不死の可能性を否定し、またファルスを封印できないことも伝えた。死と罰を覚悟して裁きを求めたファルスは逆上するが、モゥハは人生の喜びを追求せよと励ました。龍神との面会の後、オオキミとウナは、姫巫女候補のヒジリをファルスの婚約者として認めさせた。

 一切を終えたファルスは旅を終えて、ワノノマが用意した船で帰国することになった。


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『第四十三章 衣錦還郷』


 冒険を終えたファルスは、ワノノマの船でピュリスに帰ってきた。

 リンガ商会で懐かしい顔に出会った。リーアはファルスが伴ってきたフィラックが、かつての婚約者であることに気付いて、自ら命を断とうとした。その他には問題もなく、ピュリスに残してきたマルトゥラターレも無事で、ディエドラやペルジャラナンも人間社会にうまく溶け込んでいた。

 ピュリス到着からさほどの時間もかからず、ヒジリの乗った船が到着した。一行は総督ムヴァクの歓迎を受け、それから王都に向かった。

 王都でファルスはタンディラールから叙爵され、ティンティナブリアの領主とされた。その日の夜、個人的に呼び出されたファルスは、かつての宿題とされた問いに答えるよう求められた。タンディラールは、自らの過去と思いを語った。

 領主としての責任を引き受けたファルスはティンティナブリアに向かったが、領地は想像以上に荒れ果てていた。貧しさもさりながら、大規模な盗賊団が複数活動している有様だった。臨時の統治者として送り込まれていたユーシスには、十分な資金も兵力もなく、状況を一変させることができなかった。ファルスは策略を用いて盗賊団を城内に招き寄せ、一網打尽にした。

 領主としての地位を確保した後、ファルスはフィラックとリーアの仲を取り持って、過去を清算させた。

 統治状況改善のため、真夏の最中にファルスは道路工事に着手した。ヌガ村でギムに再会し、彼に配下になるように勧めた。

 秋から冬にかけて、ファルスはかつてのロージス街道を再建するため、東進した。出国前に道路を完全復旧するには至らなかったが、通行の安全を確保することはできた。

 一通りの仕事を済ませてから、ファルスはタンディラールの命令に従って、領地を後にして、留学のため、帝都に向かった。


登場人物:

[ファルス], [ノーラ], [ビッタラク], [オルヴィータ], [ガリナ], [リーア], [ディー・アスリック], [エディマ], [フィルシャ], [サディス], [イーナ・カトゥグ], [カイ・セーン], [ペルジャラナン], [ディエドラ], [マルトゥラターレ], [タンディラール], [ムヴァク], [ユーシス], [ギム], [ヒジリ]


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『第四十四章 花の季節、始まる』


 帝都に渡ったファルスは、ヒジリとその下僕達の出迎えを受けた。ファルスの到着は、各地の勢力を代表する学生達を動かした。まずグラーブが呼びつけ、各種注意を伝えた。アスガルも赤の血盟を代表して、ファルスとの関係を確認した。

 帝立学園に入学し、自分の教室に行ってみると、タリフ・オリムで出会ったギルと再会した。ラーダイやゴウキ、フリッカといった同級生とも出会った。初回のホームルームに学園長のフシャーナがやってきて、諸注意を伝えた。帰宅時には新入生を待ち構える行列ができていて、そこでファルスはマリータと再会した。

 時間の余裕ができたところで、ファルスはタマリアがいるという、ラギ川南岸に向かった。好条件の仕事は得られなかったが、彼女は彼女らしく、力強く生きていた。また、ニドの存在を伝えられた。

 ラーダイが冒険者証を取得したことがきっかけで、ファルスも同級生と一緒に、帝都を取り囲む四大迷宮に足を運ぶことになった。このことがきっかけで、ラーダイ達は冒険者ギルド支部で、女性達に声をかけられ、合コンを開催することになった。だが、これは彼女達の罠で、迂闊に手を出せばお金を搾り取られることになっていた。危険を察したヒジリがファルスの要求を受けて、場をぶち壊した。

 一方、生活費を稼ぐためにギルドの仕事に没頭するギルだったが、そのことでギルドの関係者に嘲笑されていた。実は彼が処分していた野犬とは、少し前まで人間に飼われていたのが捨てられたものだと知って、憤激する。

 時間を見つけてファルスは繁華街に向かい、そこにいるニドと再会した。彼は街を守る帝都防衛隊にも目を付けられているワルになっていた。

 ある日、正体不明のハゲが迫ってきた。だがそれは、王都の内乱の際にルースレスの肉体を与えたウィーだった。一刻も早く女性の肉体に戻りたくて正気を失っていた彼女は、ピアシング・ハンドで元の姿に戻るが、そのせいでファルスは、屋敷内に見知らぬ女を連れ込んで服を脱がせた、という疑惑を向けられることになった。

 屋敷にいるのが苦痛になったファルスは、ギルの下宿先で時間を潰したりもしたが、状況は悪くなるばかりだった。

 これを憂慮したヒジリは、ファルスに愛人としてカエデを宛がったが、ノーラとの関係も曖昧なままなのに他の女性に手を付けるなどできないファルスは、一晩かけて、迫ってくるカエデから身を守った。

 学園生活にも慣れた頃、ファルスは屋敷の畳の部屋で、惰眠を貪った。ようやく長旅の疲れが心身から抜けていった。


登場人物:

[ファルス], [マツツァ], [タオフィ], [ポト], [トエ], [ウミ], [ミアゴア], [フォモーイ], [タウラ], [ファフィネ], [カエデ], [フシャーナ], [ケクサディブ], [ティンセル], [ラーダイ], [フリッカ], [ゴウキ], [マホ], [コモ], [フェン大尉], [ニド], [ウィー], [タマリア], [ギル], [ヒメノ], [ヒジリ], [グラーブ], [リシュニア], [アナーニア], [ベルノスト], [ケアーナ], [マリータ], [アスガル]


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『第四十五章 社交の季節』


 社会正義を声高に叫ぶマホは、同級生の間で煙たがられていた。ホームルーム中、居眠りばかりしているフシャーナは、カードゲームを通して学びを与えようとした。ティンティナブリアからノーラの手紙が届き、領内の統治に問題がないことが伝えられた。改めて、再会したウィーと認識合わせするために、ファルスは迷宮に潜り、そこで彼女と近況報告した。

 ギルは鬱憤を溜めていた。学園の講師、とりわけ武術を担当するティンセルのレベルが低すぎたので、その不満を示すために試合を挑み、彼を下した。そんな彼が金欠で頭を抱えているところへ、マホが話を持ちかけた。クレイン教授経由で、市民団体の護衛の仕事をしないかという話だった。

 ファルスの日々の様子に信頼おいたヒジリは、監視者としての自分達の内情を明かした。帝都はファルスを監視する上で、まったく連携ができていなかった。

 ファルスは料理に専念したいので、そのための教室を用意して欲しいと陳情するが、フシャーナは却下した。

 グラーブは、夏の社交の時期に備えるため、サロンのメンバーを呼び集めた。そこで最近の帝都の情勢について語った。現在、正義党と立国党の対立が先鋭化してきており、注意が必要とのことだった。サロンの集会からの帰りに、リシュニアと歩いているところへ、マリータが姿を現した。三人でリシュニアの下宿先に向かい、そこで話をした。

 ある日、アスガルが帰宅前のファルスに声をかけ、馬車の中で噂について確認した。ファルスがティンティナブリアの領主として、自領の権利は帝都に帰属する、と宣言したことになっていた。

 陰謀の可能性を考えたファルスは、まず正義党関連の仕事を受けたギルとウィーを現場から切り離すために、彼らがいるはずの養老院に向かった。そこでファルスはコーザ・ノンシーと再会した。養老院の存在を税金の無駄遣いとするデモ隊は、施設を守るギル達に罵声を浴びせ、しまいにはプラカードまで投げつけた。

 ファルスはタマリアの生活を心配して、少しでも豊かに過ごせるようにと差し入れを持ち込んだが、彼女はそれをスラムの仲間と一緒に消費してしまった。

 夏の社交のため、ファルスはチーレム島南西部の保養地に向かった。そこでファルスは、ケアーナやベルノストと語らう機会をもった。

 一方、都心では、帝都にしては珍しく、デモからの暴動に発展する事態が続発していた。ファルスに関する噂を危惧したアスガルは、グラーブと急遽、会見した。

 ファルスは、一連の問題が正義党や女神教の関係者によるものと推測して、総主教であるキジラールやボッシュ首相、クレイン教授の精神を読み取るなどしたが、有力な証拠は何も得られなかった。

 夏の社交の終わりの時期に、グラーブは花火を打ち上げるイベントを設けた。その時に、砂浜に見回りに出たファルスはマリータと遭遇した。ファルスは彼女が一連の陰謀の首謀者と考えて心を読み取ったのだが、そこで知ったのは、彼女の自分に対する恋心だった。

 その少し後、スラムで暴動が起き、ファルスはその現場に駆け付けた。そこで発見された虫型の魔道具を見て、ファルスはフシャーナの関与を想定する。その夜のうちに、彼女のいる研究棟に突入し、その地下で対決した。が、フシャーナに悪意はなく、どちらも考えすぎで先走っただけだった。

 結局、くだらない噂を流布していたのは、マホだった。一通りの後始末を済ませて屋敷に帰ったファルスは、ヒジリから冗談交じりに浮気者扱いされ、苦い薬湯を飲まされた。


登場人物:

[ファルス], [マツツァ], [タオフィ], [ポト], [カエデ], [フシャーナ], [ケクサディブ], [ティンセル], [ラーダイ], [フリッカ], [ゴウキ], [マホ], [コモ], [フェン大尉], [ニド], [ウィー], [タマリア], [ギル], [ヒメノ], [ヒジリ], [グラーブ], [リシュニア], [アナーニア], [ベルノスト], [ケアーナ], [マリータ], [アスガル], [コーザ・ノンシー], [フェン大尉], [クレイン教授], [コペ], [ムトゥルク], [ボッシュ首相], [キジラール], [ペイン将軍], [ランディ], [アルマ], [ビルムラール]


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『第四十六章 恋と醜聞』


 同級生のランディとアルマが付き合うことになった。夏の社交の時期に恋仲になったらしく、二人は揃って公務員試験を目指すと宣言した。

 フシャーナとは、夏休み中の対決についての後始末をすることになった。彼女は書庫にファルスを案内し、その管理を手伝うように要求した。

 ヒジリは、カエデが一向に目的を果たしてくれないことに焦れて、ついにヒメノまでもファルスの側妾にすると言い出した。翌日にはヒメノが一緒に登下校するものと思って一家総出で待ち構えていたのだが、そこにやってきたのは、あろうことかケアーナだった。ケアーナは、ファルスに秘密の任務に就いて相談した。

 ケクサディブはファルスを若者向けの街に呼び出して、話を聞いた。結果、二人は後日、競技場に向かうことになった。そこでは戦車競走が行われており、公営のギャンブルが催されていた。ケクサディブは、金儲けの方法を教えると言いつつ、この競争にお金を賭けた。

 婚約者公認彼女となったヒメノは役に立った。貴族の身分であることを知られたファルスには、しばしば女子学生が利益を求めて纏わりついたが、ヒメノがすべて撃退してくれた。

 いよいよケアーナから伝えられた作戦、グラーブに側妾を持たせる計画を実施に移すことになり、そのためにファルスはグラーブ達と一緒にリー家を訪問した。そこで側妾候補として選ばれたジュガリエッタ、ナリヴァ、ファイを見たファルスは、危機感を覚えた。コモはファルスに個別に交渉を持ちかけた。リー家では、それぞれがビジネスパーソンとして成果を出すことを厳しく要求されていた。

 ビルムラールには、ファルスから霊樹の苗の流出の件について伝えることになった。事実を知ったビルムラールは怒り狂った。これを宥めるために酒宴を催した。

 ラーダイはギルやコーザを誘って、冒険者のパーティーを結成した。ギルの勧めで、ファルスも仲間に加わることになった。

 マホは懲りずにファルスに帝都の正義を布教しようとして、市民団体のイベントに誘った。

 ファルスがコーザと一緒に冒険者ギルドに手続きに出向いた帰り、公園で破壊行為に及ぶホームレスを発見した。コーザはその動機を説明した。

 暗黒時代に帝都が偽帝の手によって陥落したことがあるが、その経緯について、フシャーナは書庫で説明した。

 ラーダイ達と四大迷宮の一つ、フェイムスに挑んだファルスは、醤油の手がかりを求めて最下層まで向かった。無数の魔物を倒して辿り着いた部屋には何もなかったが、更に下に小部屋があった。迷宮を管理するコアを破壊すると脅しつつ、ファルスは醤油を寄越せと要求した。謎の紙片が落ちてきて、ファルスに行動を思いとどまるように伝えた。

 迷宮攻略の成果を利用して、ギルの就職活動を支援しようと考えたファルスは、公館でパーティーを催した。グラーブ、アスガル、マリータと、本来なら相容れない関係同士の、各国のリーダーが集まり、グラスを打ち合わせた。

 それから間もなく、グラーブはレノと偽装デートに出かけ、ファルスはニド、タマリア、ウィーと共にそれを護衛した。そこでちょっとした行き違いがあり、ウィーがファルスに恋の告白をしたも同然の結果になってしまった。

 万事丸く収まるはずが、グラーブに性暴力疑惑が持ち上がり、学園の前に市民団体の人間が屯するようになった。事情を調査した結果、まずジュガリエッタが遊興のために大金を使い果たし、その事情を利用して、帝都の理想に陶酔していたナリヴァが、グラーブを裏切ったことが判明した。

 悪いことが続いて気落ちしていたファルスだが、醤油のための種麹を得ることができて、一転、有頂天となった。


登場人物:

[ファルス], [マツツァ], [タオフィ], [ポト], [トエ], [ウミ], [ミアゴア], [タウラ], [ファフィネ], [カエデ], [フシャーナ], [ケクサディブ], [ラーダイ], [フリッカ], [マホ], [コモ], [ニド], [ウィー], [タマリア], [ギル], [ヒメノ], [ヒジリ], [グラーブ], [リシュニア], [アナーニア], [ベルノスト], [ケアーナ], [マリータ], [アスガル], [コーザ・ノンシー], [ランディ], [アルマ], [ビルムラール], [レノ], [オーモ], [ミドゥシ], [ジュガリエッタ], [ナリヴァ], [ファイ]


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『第四十七章 帰省の旅』


 年末に、ファルスは一時帰国することにした。これに先立って、ギルの下宿先で忘年会を催した。

 サロンの年末の集会に顔を出す前に、ケクサディブと語り合った。先日の性暴力疑惑などについて、何が原因だったのかを考えた。

 サロンでは、ベルノストの扱いがそれとなく格下げされていた。主従の間に、溝が生まれているようだった。

 ある日、冒険者ギルドに呼び出されて、先日の迷宮攻略についての説明を求められたが、その帰りにファルスは、ジュサと再会する。ジュサは最後の戦いに備えて、自分を鍛え直すために帝都にやってきていた。ファルスは帰国時にファンディ侯の船を借りることが決まっていたので、ジュサにウィー、マツツァやタオフィ、ビルムラールを伴って一緒に向かった。

 目的地は、ファンディ侯の寄り子の領地だった。先立ってポイタートに到着したファルスは、侯爵家の家宰であるピハッサー、代官のウァナバーンらとこの件について話し合った。それからフゥニ男爵領に向かい、領主のデュコンにより詳細な話を聞いた。

 魔物の狡猾さから、今夜早速襲撃があると考えたファルスの読みは当たった。ファルスは魔物を逃がさないために、先に魔物が根城にしている遺跡に向かって、前後から挟み撃ちにする計画をたてた。だが、奥で治癒魔術の触媒となる花を見つけたビルムラールがファルスを呼びつけたことで作戦が瓦解。背後から襲いかかってきた魔物によってパーティーは混乱状態になった。ここでファルスは滅多にないほどの不覚をとったが、ジュサが捨て身の一撃を叩きこみ、二十年間の因縁に決着をつけた。

 魔物の正体はコカトリスだった。石化魔術を解除する秘薬をフシャーナから与えられていたおかげで、被害に遭っていたジュサの元恋人のヌラドゥシャも甦ることができた。老境に足を踏み入れたジュサとしては身を引くつもりだったが、彼女がジュサの手を取って、一緒に生きることを選んだ。

 そのままファルスは領地に向かったが、その途中でシーラが姿を現した。シーラは将来の危機に備えて、ファルスの記憶を一時的に封印すると宣言した。

 領地に帰ったファルスはノーラ達に迎えられた。ノーラが雇った料理人はチャルだった。どうも昆虫料理に目覚めたらしく、変な品を出しては城内の人を困らせていた。シーラはその奴隷ということで、正体を隠していた。

 ユーシスは、ロージス街道の開拓計画が順調であることを報告した。会議の後、ノーラの私室に向かうと、そこにはラピの姿を含んだ絵がかけられていた。ワングが絵師に描かせたものが届いていた。ノーラはここで黒猫のノールと共に、静かに暮らしていた。

 夜、ファルスの寝室にウィーがやってきた。話し込んでいると、突然、新調されたベッドがウィーに襲いかかり、拘束してしまう。これはホアの仕業で、ファルスを襲うために特製のベッドを用意しておいたためだった。

 ディー・アスリックは王都出身の商人、ホーカーと結婚し、ファルスの傍を離れた。エディマは、アイビィから引き受けた世話係が自分一人になってしまったと呟く。

 ノーラはフィルシャの問題行動に頭を抱えており、解雇したいと言った。また、マルトゥラターレをピュリスからティンティナブリアに招き寄せたいとも言った。

 ファルスは、シーラによって記憶の一部を封印されたが、以前に彼女から受け取ったゴブレットについては、部分的に記憶していた。大量に人を殺したことで、もう使う資格がないと認識しており、処分したがっていた。どうすればいいかわからず、城の外に出ると、シーラが通りかかった。彼女はエキセー川に投げ込むようにいい、その通りにすると、カフェオレ色の濁流が、澄み切った清流に変わった。

 領地での仕事を終えたファルスは、帝都に引き返した。


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『第四十八章 花々弥々集う』


 帝都に帰ったファルスは一年前と同じように、旧公館の面々に迎えられた。ヒジリは、軽々に危険を冒したファルスに小言を言った。

 帰郷の際、不覚をとったことを反省したファルスは、郎党達相手に槍術の鍛錬に励んでいたが、うっかり池に転落して凍えているところで、ナギアの到着を知らされる。今年から帝都に留学するためにやってきたリリアーナが面会を求めていた。リリアーナは、ヒジリとの婚約が、ファルスの希望によるものではないらしいことを察していた。

 新学期にファルスは学園に向かったが、そこにはジョイスがいた。エオの入学に合わせて、彼の帝都に渡航してきていた。修行の目的もあって、しばらく帝都で暮らすという。校門をくぐったところで、ファルスはリリアーナに飛びつかれ、そのまま奪われまいとするヒメノに掴まれ、リシュニアに手を握られ、マリータまで出てきて左手も抑えられた。そんな状態で、後ろからやってきたソフィアと再会した。結局、フシャーナに助けてもらって、この場は乗り切れたが、これによってファルスには「学園の美女を独り占めにするプレイボーイ」との噂が付き纏うようになった。


登場人物:

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― 新着の感想 ―
最後の方でなろう風になってますね。宣言通りだ
[気になる点] > 結果、ユンイは彼を恨んでいた女達によって嬲り殺しにされた。 殺してはないのでは。 死因は自殺ですし。 > 陸路でスッケまで到着した一行は、ワノノマの棟梁オウイのもてなしを受ける…
[一言] あけましておめでとうございます!良いお年を
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