美鈴、どこかへ飛ばされます

　ここはギルドの従業員用の休憩室。

　美鈴とリムは、片づけが終わるとルイドを部屋の中に入れた。

　ルイドは部屋に入るなり美鈴をみて驚く。

「ほう、なるほど。コリャ、思っていたよりもいい女じゃねぇか」

　そう言いながら美鈴の顔を覗き込む。

「あ、ありがとうございます。あーえっと、」

　顔を赤らめ美鈴は、何か言おうとするも言葉に詰まりアタフタする。

　リムはそんな美鈴をみてクスッと笑った。

「ミスズさんって、仕草まで可愛いんですね」

　そう言われ美鈴は、更に恥ずかしくなり両手で顔を覆う。

「うむ。これじゃ、余計アイツの状態が悪化しかねん。だがまぁ、ハッキリ断られれば落ち着くかもしれんがな」

「マスター。それはどうでしょうか？　ミスズさんも、ゾラさんのこと好きみたいですよ」

　リムはそう言いルイドをジーっとみる。

「え、ええっと……気になっているので、多分そうだと思います」

　自信なさげな表情で美鈴はそう言った。

「そうなると両想いか、だとしたら、」

　そう言いルイドは、腕を組み難しい表情で考え込む。

(んーどうする？　両想いってことは、諦めさせるより二人をくっつけた方がいいんじゃ。だが、どうやって？)

　そう考えているとリムがニコニコしながら話し始める。

「マスター。先程ゾラさんのことについて、ミスズさんと話し合い決めたのですが」

「ほう。どう決まった？」

「はいそれは、このあとミスズさんとゾラさんを二人っきりにして－－」

　リムはどうするのかを説明した。

　それを聞きルイドは、目を閉じてしばらく考えたあと口を開く。

「なるほど。ミスズがタイミングをみつけ、ゾラに気持ちを伝えるってわけか。確かに、その方がいいかもしれんな」

「では、準備はできているのであとは手筈通りに、」

　そうリムが言うとルイドは、口角を上げ「ああ」と言った。

(どうしよう。本当に大丈夫なのかな？)

　そう思いながら美鈴は、いよいよかとドキドキし始める。

　その頃天空城では、スイクラムが宙に浮かぶ球体を覗きミスズたちの様子を伺っていた。

「ミスズとエリュードをくっつける、ですって!?」

　そう言い髪を掻き乱し顔を引きつらせる。

(このまま放って置いても大丈夫だと思っていましたが、そうでもなさそうですね。ですが、ミスズをどう処分したら、)

　そう模索していると、ふと思いついた。

「フフフ、処分するのに最も相応しい場所があるじゃない」

　そう言い高笑いをする。

　その後スイクラムは、真剣な表情になり宙に浮かぶ球体に手を翳し神語で詠唱し始めた。

　唱え終えると、宙に浮かぶ球体に映る美鈴に目掛け術を放つ。

「さて、どうなるかしらねぇ。フフフ、楽しみですわっ！」

　そう言うと、再び宙に浮かぶ球体を覗き監視を始めた。

　場所は戻り、ここはギルドの従業員用の休憩室。

　リムとルイドが話をしている側で美鈴は聞いていた。

　そんな中、美鈴はリムとルイドの目の前から忽然と姿を消す。

「おい、コリャどういう事だっ!?」

「いったい何が起きたのでしょうか？」

　あまりにも突然起きた出来事だったため、二人は何が起こったのか分からず困惑する。

「……リムっ！　悪い、おれは大至急エリュ、いや、ゾラにこのことを知らせてくる。嫌な予感がするんでな」

「はい、承知しました。ですが、このあと私はどうしたらいいのでしょう？」

　どうしたらいいのかと首を傾げ考え込んだ。

「そうだな。とりあえずこのことは、他のギルドの者には内緒にする。リムお前は、至急ライル・ダヴィスを探して俺の部屋に連れて来てくれっ！」

「あのライルを？　この私に、みつけだせるでしょうか、」

　そう言うと自信なさげな表情を浮かべる。

「うむ、難しいかもしれん。だが、確かライルはギルドに登録していたはずだったな」

「はい、……なるほど。それなら、冒険者登録証を持っているはずですね」

「ああ、それにライルはダークエルフだ。ヒューマンが多いこの辺じゃ目立つだろう」

　それを聞くとリムは頷いた。

「それでは、探して参ります」

　そう言うと一礼をしこの場を離れる。

　それを確認するとルイドは、急ぎ自分の部屋へと向かったのだった。

(確かゴルイドが、ミスズは女神に召喚されたって言ってはずだ。コリャ、もしかすると女神が関わっているかもしれんな)