ボディガード
ボディガードが美里の後をのこのことついてくる。
公衆便所の中へはいり、車の方を振り返ると誰もこちらを気にしてはいなかった。ボディガードは美里に背中を向けて、入り口に立った。
美里はバッグからスタンガンを取り出した。
ボディガードは背が高かったが、美里ががんばって腕を伸ばせば首筋には届く。
バチッと音がして、ボディガードはうなり声をあげてよろめいた。
すかさず右手に用意していた両刃のコンバットナイフをうなじの部分に突き刺した。
ぐるぐりぐりと感触がしてナイフはボディガードのうなじに突きたったが、筋肉というのはかなり弾力がある。
るりかの時のように尖った物なら簡単に突き立つが、ナイフのような幅広い物は難しい。
そこから真横に切り裂いた。
渾身の力でナイフを振り払ったので、首が裂けた。
血がドシュッと飛んだ。
ボディガードは叫んだような動きをしたが、ナイフと大量に出た血がすでに喉の奥をつぶしていたので。
ぱくぱくと口を開いているだけだった。
ボディガードの身体は崩れ落ち、トイレ入り口をふさいだ。
「あら、もうここのトイレは使用禁止ね」
ボディガードの身体をまたいで車に戻る。
市長の息子が一人で戻った美里をいぶかしげに見た。
「あの人、自分もトイレがしたいから先に戻れって言うから」
と言った。
次に新井に、
「ねえ、喉が乾いたわ。ビールでも買ってきてよ」
と言うと、新井君は市長の息子を見た。
息子がうなずいたので、新井は渋々車を出て行った。自動販売機はトイレの横にもあったが、少し離れた公園の入り口にもあった。ビールを買う為には公園の入り口まで行かなければならなかった。




