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チョコレート・ハウス1  作者: 猫又


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26/32

雪の降る前に

 すぐに誘われて、店の前に堂々と違法駐車している黒のミニバンに乗り込む。市長の息子と新井ともう一人はやけに体格のいい大男だった。市長の息子のボディガード的存在だろうと。藤堂ほどではないが背は高く、前からみても横から見ても同じくらいの身体の厚さがある。筋肉も隆々としていて、やっつけるのは少々やっかいかもしれない。

 乗り込んだミニバンは後部座席がすべてフルフラットシートになっていて、ふわふわした毛皮が敷かれていた。ここで女の子を陵辱するんだろう。一体、何人が犠牲になった事やら。言われるままに靴を脱いで、這い上がる。ボディガードがスーツケースを持ち上げて渡してくれた。

「ありがとう」

 ボディガードは運転席のすぐ真後ろに座った。新井はその横。

 美里はフラットシートの後方で足を投げ出して座った。

 市長の息子が運転席へ座り、ぴかぴかの黒いミニバンは派手な音をたてて急発進した。

 そして予想通りの道を走る。車は山道を登って行った。

 美里はスーツケースのジッパーを開けた。ボディガードが美里の手元をじっと見ている。

 床にでも埋め込んであるだろうスピーカーがうるさい音楽を流していた。

 ボディガードも新井も動かない。余計なおしゃべりもしない。

 これは市長の息子が楽しむ為の遊びであって、彼らは傍観者なのだろう。


 真っ暗な場所にぽつんと外灯がともっていて、その横には公衆便所があった。

 かろうじて電気がついているが、薄暗く今にも切れそうにちらちらとなっている。

 車はその横で止まった。

 市長の息子がすけべ面で振り返った。

「ちょっとトイレに行きたいわ」

 と言うと、ボディガードが市長の息子を見た。息子が軽く肯いたのでボディガードは車のドアを開けた。

 美里はバッグを肩にかけて、ブーツを履いた。

 外へ出ると暖かい社内とは違い、すさまじく寒かった。

 吐く息が白い。

 この分ではホワイトクリスマスになるかもしれない。

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