表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/185

36 綺羅星町の夜

 エロい店で時間を潰し、店の外に出たら町は夕闇に染まりつつあった。

 きっとあの店の店員らには、変な客達だと思われていただろうなー……ま、いっか。


「そろそろかな。闘技場行こう」


 ズルパパニに促され、俺達は闘技場へと向かう。


「すごい人だかりだな」


 滝澤が呻いた。いかにも闘技場ですといった感じのコロッセオめいた外観の建造物。周囲には長蛇の列が並んでいる。


「時間までに入れないなんてこたーないから、安心していいぜ。この町の日常娯楽だしな。並んでいる奴は少しでもいい席取りたい奴等だよ」


 ズルパパニか解説する。


「いい席は早い者勝ちなのかよ……」


 呆れる俺にズルパパニは首を横に振る。


「いや、指定席だってもちろんあるよ。値段は張るけどね。並んでいる連中は自由席の中でいい席を取りたいっていう話なだけさ。庶民の娯楽だし、高い指定席買うのはこの町のごく一部の成功者か、観光客ぐらいだよ」


 なるほどなー。並ぶのも悪い席取るのも嫌だから、俺は指定席だなー。値段を見に建物の窓口に行ったが、最前列指定席が四千円。他の指定席が七百円か。安いじゃん。まあ物価安いからそう思うのだろう。自由席は百円と、席による差が凄い。

 この町の物価は大体葉隠市の四分の一くらいと考えると、指定席は確かに高いな。それでも自由席四百円てのはすげー安いな。


「最前列指定席五枚買ってきたぜー」


 と、俺がチケットを見せびらかす。


「まじでー? くっそー、金持ちの停まり人めー。いや、でも最前列で見られるなんて初めてだし、超感謝」


 ズルパパニが手を合わせてこすり、頭を下げる。


「相手にペインを与えて行動不能にした所で停止ルールな。故意の殺人はもちろん禁止。とはいえ武器も一応ペインの見切りがしやすいように作ってあるから、事故なんて滅多におきないんだがね」


 席に着いた所で、ズルパパニが解説する。


「ペインの量をセーブすル魔法のかかった武器であルな。我もペインの見切リの訓練の際に使ったであルが、彼の魔法がかかリし武器は、ペインの量自体を減少すルが故、実践向きには非ず。幾度もしつこく攻撃せねばなラぬ」


 ゴージンが語る。

 例えるなら、ゴージンは真剣でばっさり斬っても殺さずにおける技を持つが、ここの闘技場出場者は、スポンジを巻いた木刀で殴り合って、殺しはせずにその手前までひたすらぽかぽか殴りあうとか、そんな感じかねえ。


 試合が始まった。とは言っても前座試合らしい。ズルパパニ曰く、選手は試合の実績に応じて下位、中位、上位のランクで別れていて、最初は下位ランカー同士か、下位ランカー及び中位ランカー複数が入り混じって複数で戦う試合ばかり行われるらしい。

 選手の得物こそ様々だが、ペインを抑える魔法がかかっているせいで、相手にヒットしても一撃で倒れるという事がない。ひたすら体力の削りあいを行う、回避も含めたプロレスを見ているかのようだが……


 正直これじゃあ、プロレスの方がずっと面白いぞ……。素直にプロレスにしとけよと言いたい。いや、昼間に街中で行っていたストリートファイトの方がまだ緊張感があった。金もかかっていたしね。

 こっちも賭博はできるらしいが、どの選手がどれだけ強いかも全くわからんし、贔屓の選手もいないのだから、金賭ける気にはなれんなあ。


 前座の幾つかが終わり、イベントも中盤にさしかかろうとした時、急に歓声が沸き起こった。まだセミファイナルもメインイベントも先だろうに、何事だ?


『ラゴク! ラゴク! ラゴク! ラゴク!』


 陳腐な例えだが、割れんばかりの大歓声という奴だ。

 裸獄? 何だ、その楽しそうな地獄は。いや、亡者が男なら楽しくは無いな。美少女限定にしてくれ。


「ラゴクか。ここで三番目ぐらいに人気の奴だ。中位ランカーにも関わらずね」


 ズルパパニが解説すると、片手斧二刀流のドワーフが花道に現れる。こいつが声援を受けているラゴクか。


「あまり強そうには見えませんね。華のある選手にも見えませんし、どうしてこんなに人気なのですか?」


 ディーグルがズルパパニに尋ねる。


「あいつはここにもう十六年もいる古株だ。六年前までは、たったの一勝もできなかった万年負けっぱなし野郎だったんだぜ」

「その負けっぱなしが勝ち始めたから人気が出たと?」


 今度は俺が口を開いた。


「そうそう。六年前から少しずつだけど、勝つようになってきたんだよ。どんなに負けまくろうとも、才能が無いだのやるだけ無駄だのと笑われても、奴は諦めなかった。そしてとうとう一年半前、下位ランクを脱し、今や中位ランクの中でも上位に近い位置にいるんだぜ」


 まるで友人を自慢するかのような、誇らしげな口調でズルパパニは喋る。


「ここに来ている奴らは皆それを知っているからな。十六年ずっとラゴクを見てきた奴もいる。負け続けてきたラゴクが、それでもこの闘技場にかじりつき、勝ち星を拾えるようになって、なおかつ今や着実に上へと向かっている。もうそれだけで最高のドラマだし、燃えるし、惹かれるだろ? 競争を否定する停まり人達にゃー、わかんねーだろーけどな」

「いや、わかるよ」


 俺が言った。諦めない心でしがみつき、前に進むことを止めなかったというラゴクが、俺には眩しく見えた。俺も絶対に諦めないと心に誓っていたはずなのに……


 試合はラゴクの負けで終わったが、試合内容そのものはそれまでとうって変わって面白いものだった。

 ラゴクの戦い方が非常にみっともなく泥臭い代物で、もう本当に無我夢中でしがみつき、へばりつき、立ち上がり、叫び、喚き、しかしだからこそ熱い。観客達の心を惹きつける。多分ズルパパニの話を聞かなくても、俺はこの試合に熱中していただろう。ディーグルは華が無いと称したが、俺はそうは思わん。


『続きましてはお待ちかねのスペシャルイベントですっ。飛び入り参加する腕自慢猛者募集~っ!』


 ラゴクの試合後、アナウンサーが舞台に立ってそんなことを叫ぶ。


『バトルロイヤル形式で、勝ち抜いた者は上位ランカーのライト・ブレイブ・ホルスシューターと戦えます。ブレイブ・ホルスに勝った者には、なななななんと、賞金200万円が授与されますっ!』


「これって、やる奴いるのか? つーか、飛び入りが勝つことなんてあるの?」


 不審げに尋ねる俺。


「やる人は結構いるさ。でも飛び入りが勝つなんてことは滅多に無い。バトルロイヤルやらされた後で弱った所に上位ランカーあてられるんだもんよ」


 ズルパパニが苦笑をこぼして答える。

 あうあう、だったらここで勝てば、それなりに注目浴びるよな。名の知られている奴なら尚更。よし、いいこと思いついた。


「ディーグル、お前参加してこい。ちゃんと勝てよ。いや、できれば派手に、圧倒的に勝ってこい」


 俺がそう命じたが、ディーグルは俺に冷ややかな視線を投げかけ、口元に皮肉っぽい笑みを浮かべている。


「我が偉大な主よ、私に護衛の任務を放棄して、見世物になれとおっしゃるのですか?」

「ふざけて言っているわけじゃなく、真面目に命令だ。考えがある。お前は名が知られているから、今この町にいるというアピールをすれば、噂にもなるだろ? それが狙いだ。護衛はゴージンに任せろ」


 皮肉っぽく笑っていたディーグルの顔が引き締まり、非礼をわびるようにして頭を垂れる。いや、実際そのつもりだったのだろう。


 もしこの町にあいつが今いるなら、ディーグルがこの町にいると知れば、俺もいるということも知るだろう。ちなみにディーグルには、あいつが俺を誘ったことは教えてない。そうしたらここに来ることを絶対反対するもん。


 何人かが客席から舞台へと上がる。もちろんディーグルも上がる。合計九人になった。

 ボディーチェックがなされ、元々携帯していた武器は一旦預けられる。ディーグルも腰に差していた刀は預けた。

 様々な武器が舞台の上に置かれていて、飛び入りした客はそれらの中から好きなのを選んで手にするが、ディーグルは徒手空拳のまま。さあ、無双ショーの始まりだ。


 ゴングが打ち鳴らされるや否や、手近にいた屈強なオークの男と人間の巨漢の喉元を、それぞれ片手で掴み、持ち上げるディーグル。

 他の参加者が仰天する中、持ち上げた二人の頭と頭を思いっきりぶつける。白目を剥いて崩れ落ちる二人。


 驚いて固まっているコボルトの男に延髄斬りを見舞い、またあっさり昏倒。


 手強い奴がいると見なして、延髄斬り後に体勢を崩しているディーグルめがけて他の六人が一斉に襲いかかった。うんうん、これがバトルロイヤルの醍醐味だよなー。突出した選手は複数で狙われて、わりと早い段階で負けちゃうことがあるってね。


 でもディーグルの強さはもうあれだ……どんな形容も馬鹿らしく安っぽくなるほどの強さっていうかね……

 崩れた体勢のままディーグルは、最も早く向かってきた長身のエルフの両足首を両手で掴んで、すくい取るようにして転倒させる。そしてエルフの両足を素早く湧きに抱え込み、ブンブンと振り回して回転しだした。ジャイアントスイングだ。


 他の五人は近寄れなくなったどころか、そのうち二人がエルフの頭に自分の頭を打ち付けられて、あっさり失神。もちろん回されているエルフ自身もそれで白目を剥いている。これで残り三人。


 残った三人のうち二人は、戦意喪失して武器を落としてギブアップ。うんうん、賢明な判断スなあ。残ったドワーフが果敢にハンマーで向かっていったが、カウンターで顔面に膝蹴りを食らわされて、あっけなくダウン。


 開始十秒そこそこで九人相手のバトルロイヤルを制したディーグルに、観客一同、声もなく啞然。ズルパパニも口をあんぐり開けている。


「ふーむ……奴が強いのはわかっていたが、あれほどまでとはな……。しかも全然本気だしてないぞ」


 滝澤も苦笑をこぼし、唸っていた。

 ちなみにその様子は、勝者と戦う予定だった上位ランカーとやらも見ていたようで、戦うことなくあっさり戦意喪失して試合放棄。ディーグルは二百万円ゲットして、アナウンサーにマイクを差し出され、勝利のコメント。


『あー、えー、信じなくてもいいですが、私の名はウィンド・デッド・ルヴァディーグルと申します。綺羅星には観光に来ましたが、戦えばお金が貰えると言われて、ちょっと遊んでしまいました。それだけです』


 神殺しとして知られているウィンド・デッド・ルヴァディーグルの名を耳にし、会場がどよめきに包まれた。よしよし、うまくいくといいな。


***


 夜の綺羅星町。明らかに昼間より活気がある。屋台もさらに多く出ているし、人も多くなっている。


「うーん……葉隠市との違いといったら、物価が安い。賭け事などの娯楽に対して寛容。道があまり整備されていない。高い建物がそこそこある。建物が全体的にボロっちい。魔法技術以外のテクノロジーもそこそこある……と」


 屋台の飯屋に座って飯を食いながら、乱す者と停まり人の町の違いを挙げていく。

 屋台の店主はゴブリンで、ズルパパニのお勧めのゴブリン料理を出してくれる店なんだと。肉性植物の塊と茶色いシチューが、容器上のパンの中に入れられている。中のシチューがこぼれないように外のパンをシチューと同時に食っていく。食うのは中々難しいが、味は格別だ。


「それなりに違いはあるけど、決定的にこれっていう違いも無いよな。別の国に来たような感覚はあるけどさ」


 脇坂がわざわざ勧めるほどだから、よほど価値観変わる何かがあるのかと期待してみたが、今の所そんなものは見当たらない。


「一日くらいでわかるかよ。ていうかさ、実際住んでみないとわからんと思う。両方に住んでみた者の意見としてはね」


 ズルパパニが言った。


「悪い面としてはインフラが整ってない所だな。娯楽施設にばかり金かけるけど、それ以外はあまり見ようとしないな。規則もほとんど無い代わりに、お役所はやることなすことすげー適当だぜ」

「この町での労働も適当なのか?」


 滝澤が尋ねる。


「お役所以外は仕事をきっちりするけどなー。ライバル多いし、浮き沈み激しいもんよ。すぐ事業が潰れたり職失ったりで、仕事を転々としている奴が多い。でもそれが当たり前として皆受け入れているし、悲観してないぜ。無職になっても特に困らんよ。日雇い労働はいくらでもあるし」


 ふと俺は思った。大きな違いと呼べるのはその辺だなと。

 葉隠市はどの店も、真面目に儲けるために商売しようという意欲があまり感じられない。正直、今屋台で食ってるゴブリン料理の方が、葉隠市の飯屋で食ったどの飯よりも美味い。葉隠の飯屋が不味いってこともないけどな。


 葉隠もそれなりにいい雰囲気ではあるが、こちらはより活気がある。

 一番駄目なのは……うん、下界だな。行き交う人々の目が死んでいるといつも思っていたが、こっちの世界に来てからその見方は正しかったと確信したよ。流石地獄と呼ばれるだけはある。

 葉隠にしても綺羅星にしても、窮屈さが無い。下界は「あーしなくちゃだめ」「こーであるべき」みたく、何もかもが押し付けがましく、とことんひでー社会だったからな。死んでこっちに来てつくづく思う。何のためにあんな馬鹿な世界に必死にしがみついて、皆生きていたんだよと。まさに地獄。


 そしてここでようやく俺は、脇坂がここに来るよう言った意味を理解できた。

 乱す者はこの世界の平和を忌み嫌う。だからこの世界の多くの人達は、乱す者が下界のような弱肉強食な法則をこの世界にもたらそうとしていると見なし、警戒している。この世界を変えたくないために、下界で育まれた科学文明も極力持ち込まないようにしている。

 だがこの綺羅星を見た限り、全然そんなことはない。どんなに競争社会であろうと、享楽的であろうと、テクノロジーを忌避する事無く取り入れようと、この町は下界とは全く違う。


 乱す者の目指す理想は、この世界の人達が恐れているような方向性とは、異なるものではないかと、今ようやく思い至った。

 乱す者全ての共通する理想というわけでも無いだろうけどな。ネムレスは乱す者を警戒していたし、下界と同じ世界を望む者もいると思われる。


「太郎さんの感想としてはどうです? 葉隠市より綺羅星町の方に住みたいですか?」

「いやー……こっちが気に入らないわけじゃないけど、暮らすなら葉隠かな」


 尋ねるディーグルに、俺は苦笑を浮かべて答える。綺羅星は暮らすには不適だわ。ズルパパニの言うとおりインフラも整ってないようだし、汚いしうるさいし、治安もよく無さそうだしで。遊びにくるには面白いと思うけどね。


「ケチつけるわけじゃないけど、停まり人の刺激の無い社会って、そんなにいいもの? あんな停滞して変化の無い世界はキツいと思うけどな。こっちは変化がめまぐるしくて飽きないよ。失業も含めてな」


 最後の言葉は冗談めかして笑っていたズルパパニだが、冗談でもなく事実なのだろう。

 この世界が文明の発展やら競争社会を拒む理由は、死ぬ前の下界が極めて面倒な世界であったから、こっちに来てまで面倒な人生を送りたくないからだろう。

 また、死ななければ永遠に生きるという世界で、延々とあくせく必死に頑張って生きるのもしんどい。頭の中は皆爺婆ということもある。老後はのんびりしたいならば、死後ものんびりしたいだろう。なので、のんびり世界になってしまうのも無理は無い。


 だが活力に満ちた人間には物足りない世界だ。そうした人だけを綺羅星町のように分けておけば、それで済む話なんじゃないのか? 何でわざわざ戦争しているんだ……? それが不思議でしゃーない。やっぱり乱す者にもいろいろいて、ネムレスが警戒しているような過激な連中が悪いのかねえ。


「俺が今やっているガラクタ集めだって、これはこれで楽しいんだ。たまに掘り出し物とかあるしー」

「まあ、それはいいとして、明日の予定を今のうちに言っておくか」


 ズルパパニの言葉を遮り、皆が飯を食い終わるのを見計らって俺が話を切り出す。


「明日は滝澤の娘さん探しをする。ズルパパニ。この町に奴隷のオークションとかやってる、ヤバい店知ってるか?」


 俺の質問に、ズルパパニの顔色が劇的に変わった。


「ヤバいもんは大抵あっちだよ。しかしあのスラムじゃない」


 山の方を指して、声を潜めて言うズルパパニ。昼間に見たスラム街がある場所だ。夜なので家こそ見えないが、山の中腹まで無数の明かりが灯っているのが見てとれる。


「あの下なんだよ。ここは元々鉱山の町だった。戦争を重ね、交渉を重ねた結果、停まり人の都市連合にも、ここを中立地区として、さらには乱す者達の管理下にある町として、認めさせた。で、鉱山内部も今は地下街となっているんだが、そこいらが綺羅星で最もデンジャラスな場所だ。綺羅星の暗黒街と言ってもいい」

「そんな危険な場所に太郎まで来る必要は無い」


 滝澤が腕組みして口を挟む。


「元々これは俺個人の問題だ。太郎は葉隠軍にとって無くてはならない存在だし、俺の事情で危険に巻き込むわけには……」

「あのなあ、俺の性格見て物を言えよ。つーか滝澤が逆の立場だったら、『危険だし俺は葉隠軍のエースだからパスね』とか言っちゃうのか? ここまで来てふぁっきんなこと言ってんじゃねーよ。この町に来るだけなら一人でも来られるだろうし、アリアも協力があった方がいいと考えたからこそ、俺にお前を連れて行くように言ったんだろーが」


 やや不機嫌気味な声音で説き伏せる俺。滝澤は視線を逸らして押し黙る。


「何かいろいろありそうだけど、ガイドの俺のこともちゃんと守ってくれよ」


 ズルパパニがおどけた口調で言う。


「ヤバい場所だからガイドを断るかと思った」

「怖いけど面白そうだしなー。面白いことには何でも首突っこんでみたくなるのが綺羅星町民てね」


 そう言ってズルパパニはウインクしてみせた。


***


 翌朝。俺はわりと早く起きて、ベッドの中でまどろんでいた。

 ズルパパニは家族を心配させたくないからという理由で、俺達と同じ宿には泊まらず自宅へと帰った。朝の十時頃に来るらしいので、合流したら山腹のスラムへと行く予定だ。


 突然ノックも無くドアが開く。つーか、鍵かけてあったはずだけど……

 一瞬警戒した俺だったが、入ってきたのがディーグルだったので、その警戒も解く。いや……鍵をおそらくは魔法で解錠したのだろう。そのうえノックも無く入ってくる理由は何だ?


 ディーグルは無言で俺が寝ているベッドに近づくと、ベッドの上に乗って大きく跳躍し、背中から俺の体に落下する。


「ぐげばっ!」

「いい加減起きてください、太郎さん。大変なんですよ」


 セントーンをかましたディーグルが、そんなことをほざいた。


「何しやがんだてめーっ!」

「いくら起こしても起きないからやむを得ず」


 真顔で大嘘ぶっこくディーグル。


「嘘つけっ! 俺はずっと起きてたし、声かける前にセントーンかましただろうが!」

「そんなコントしている場合じゃないんですよ。滝澤さんがいません」


 ディーグルの報告に俺は言葉を失くした。あんにゃろめ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ