16 おっぱいベッド大作戦(後編)
外見を人間の年齢で言えば、十三か十四あたりだと思われる。あどけない顔立ちには憂いと躊躇いの色が見え、俺達と対峙しているにも関わらず、視線を逸らして合わせようとはしない。
とても乱す者達の最上級指導者の一人とは思えない。威厳など微塵も無く、それどころか弱々しく頼りないイメージだが、同時にとてつもなく禍々しいオーラも放っている。
ちなみに乱す者達は別に一枚岩の組織ではないので、彼等をひとまとめにして頂点に君臨する存在はいない。様々なカラーを持つ集団が無数に独立していて、その中で最上級指導者と呼べる存在がいる。一つの集団の中とて派閥もあるし、異なる集団で横の繋がりはあまり無いらしい。
シリン・ウィンクレスは、星の数ほども有る乱す者の集団の中の一つの棟梁である。それもかなり先進的かつ武闘派な集団の頭を張っている。脇坂達が行っていた魔物育成計画を行っていた乱す者も、このシリンをトップに抱く系列組織だった。
一説では、葉隠市を含むここいら一帯――サラマンドラ都市連合地域の多くの都市に戦争を吹っかけている乱す者は、全てシリンに統率されているとすら言われている。ようするに葉隠市からしてみれば、敵の親玉だな。
さらにこのシリンという男、ただ乱す者の長の一人というだけではない。様々な逸話を持つ、生ける伝説の一人でもある。かつてはウルメルという復讐を司る女神の神聖騎士であったが、主たる神を殺害してのけ、叛逆の神殺しとなったんだと。
通常、神聖騎士や巫女は、主である神に逆らうことなど容易にできない。神より奇跡の力を授かる代償として、強烈なマインドコントロールによって、忠誠心が刷り込まれているからな。それに神聖騎士と巫女が行使する奇跡の力は、神より借り受けた力であるがため、主である神が死ぬと、奇跡も起こせなくなる。
にも関わらず、シリンは主たるウルメルに背いた。奇跡の行使が出来なくなる事も承知で、主を殺害した。如何なる事情で仕える神を殺害したのか、その理由は定かでは無い。まあシリンに限らず、主たる神の横暴が酷くて、巫女や神聖騎士が神に背いた逸話も、多少はあるっちゃあるがな。
正直俺は信じられないわ。神聖騎士の俺だからこそ、神に魅入られた者が神に背くなど想像がつかない。
夢の中でネムレスと向かい合っているだけで、俺の心は至福に満たされる。心底服従したい、へつらいたいという、そんな欲求が沸いてくるのだ。俺はそれに委ねるのが嫌で必死に抑えてこそいる。相当理不尽な命令があれば俺とて逆らうかもしれないが、それでもネムレスを殺そうなど、とても考えられない。
「久しぶりですね、シリン。君が直々に来るとは、どういう風の吹き回しです?」
知り合いらしいディーグルが声をかける。
「わっ、わわ脇坂をか返してもらいにきたの。か、かか彼は有能な人だから。あ、あ、あとね。僕達の施設を壊してくれた、お、お返しもしにきたんだ」
物凄くどもりながら、ディーグルと視線を合わせようとせずに、泳いだ目で答えるシリン。この同時多発テロは、脇坂奪還が目的だったわけか。それを告げるということは、その目的はもう達成されたってことかな。
つーか、こいつ……こんな超シャイで、乱す者の長なんかよく出来るな……
「ああ見えても芯はしっかりしている子なんですよ、彼は。油断はしないでください」
俺が受けた第一印象を見抜いたかのように、ディーグルが俺の耳元で囁いた。
すげー照れ屋ではあるが、やることはしっかりやる奴って感じか。まあ奴から放たれているオーラで、何となく分かる。
「昔はいい子だったんですけどね。ある事をきっかけにグレちゃいました」
「最初から乱す者だったわけじゃないのか」
「ええ、仲間の一人でした。でした」
過去形二度言ってわざわざ強調するディーグル。しかも相手にも聞こえるような声で。
「デッド、あ、相変わらず、みみ乱す者狩りをしているみたいだね」
こいつはディーグルのことをセカンドネームのデッドと呼ぶのか。
「久しぶりに揉んであげたい所ですが、今の私の優先事項は、このちんちくりんを守護する事でしてね。それ以外の無用な戦闘はできないのが、心苦しい所です」
嘘だなーと、ディーグルの言葉を聞きながら俺は思った。シリンのことをすげー睨みつけて、どう見てもやる気満々じゃんよ。
「神々を嫌うのに、し、神聖騎士に仕えるようになったんだね。で、デッドも変わっていってるんだ。ぼ、ぼ僕もこれでも結構頑張って、変わったつもりだけど」
「君は相当変わりましたよ。悪い方に。正直、君を一刻も早く殺してあげたくて仕方ないです」
シリンの方はいまいちつかみどころがないが、ディーグルはシリンに対して敵意たっぷりだ。二人の間で一体何があったのやら……
「か、可哀想」
シリンがようやくこちらを見た。視線の先は――俺かよ。
「ここ子供なのに、し神聖騎士なんかにされちゃって、停まり人にいいように利用されちゃってさ」
言葉とは裏腹に、シリンから殺気が迸る。
片手を上げて、俺を指差す。指の先から魔力の光が放たれる。
レンティスが潜り込むかのような飛び方で光を回避し、そのまま前方にいるシリンめがけて猛スピードで突っ込む。ディーグルが刀に手をかける。俺はというと、振り落とされないようしがみつくだけで精いっぱいだ。
ディーグルが跳ぶ。おいおい、マジか。空中にいるシリンに斬りかかったようだが、レンティスが今度は上昇したため、飛竜の体が邪魔になって、下の様子がわからない。
「子供を殺すなんて、ざ、残酷なことしなくちゃならないなんて。ぼ、ぼ僕が可哀想」
すぐ間近から声が聞こえて、俺はゾっとした。すぐ隣に気配までもがしっかりある。
奴の上空へと飛んだはずなのに、垂直に空へと昇っていくレンティスの背に、シリンもしがみついていた。
そこでやっと俺は下を見ることができた。腹部に傷を負い、血を撒き散らしながら苦渋の表情で落下するディーグルの姿。
そんな……まさか……あいつが……
「そのうえかつてのなな仲間に恨まれて、その仲間を傷つけなくちゃいけない。こ、この辛さ、君にわかる?」
俺から目を逸らしながらも、シリンは手を伸ばし、俺の肩に手を伸ばす。
レンティスの動きが止まる。止まるなよ。下に降りてディーグルが落ちる前に拾えよ。一体どうしたんだ……?
「その顔、怯えてるね? そそして僕のこと、き、気持ち悪がっているね? いいいつもこうなんだ。だ、誰も僕に同情なんてしてくれない。僕をさ蔑む。責める、避ける。だ、だから僕ね、僕が僕をかばってあげることにしたの。僕が僕のこと可哀想だと思うようにしたの」
キメえ……ウゼぇ……でも何だか確かに可哀想な気もするわ。
「きき君、ど、どう思う? ぼ、僕のこと。キモい? ウザい?」
視線を逸らしたまま眉をひそめて、何故か俺の肩を掴もうとした手を引っ込める。ふぁっく……どんな答えを述べても殺されそうな気がするわ。
「キモいしウザいけど可哀想だな。自分しか見てないから、自分を見てもらえなかった事に気がついてないタイプってぽくて、それが可哀想だ」
シリンの手が離れた。シリンが顔を上げて俺を見る。
「しょ、正直に言ってくれて、ありがと」
照れくさそうに微笑み、俺の頭を撫でるシリン。油断させといて、次の瞬間には殺しにかかるかもしれないと身構えたが――
「き、君面白いから、い、いい今は殺さないでおく。こ、こ殺したくても……できないけ……どっ」
シリンの顔が苦痛に歪む。俺の頭を撫でていた手が膨張し、弾け飛んだ。
シリンがレンティスから離れて飛ぶ。一体何がどうなっているんだかさっぱりだ。
レンティスがここでようやくディーグルを拾いに下降した。いや……もう遅いだろ。
そう思ったが、下を見ると、ディーグルの体がぐんぐん上昇してくるのが見えた。魔法で飛んでいるのか。
「太郎さん、ひょっとして私がやられたとか思っていませんでしたよね?」
レンティスに掴まるなり、すでに傷も消え去り、腹のあたりに血の痕があるディーグルが、にやにやと笑いながら言った。
「思いっきりやられたように見えたがな」
「一応こっちもやり返しておいたのですよ。君に手出しできないよう、呪術をかけておきました。にも関わらず途中で気付いていながら、承知で君に触れて呪術のペインを食らうとは。シリンらしい」
呪術って……エルフのイメージと全く合わんな。
そしてディーグルは上空を舞うシリンを見上げ、呪文を唱え始める。漢字を音読みで並べ立てている。また和風魔法か。
「水子囃子」
完成した術名は訓読みも混ざっている。
ディーグルの上空に、薄く引き伸ばされたような、まるで布のような体を持つ化け物が、何体も現れる。いや、よく見るとそれは、人の形をしているようにも見える。
それらは一斉にシリンめがけて上昇していくと、大きく広がってシリンを包み込んだ。
「何だよ、あれは」
「水子霊ですよ」
ディーグルの答えは全く予想外のものだった。
「霊なんてあるのか? 死ねばすぐこっちにくるんじゃなくて」
「死に無自覚な霊魂が肉体を失った状態で彷徨う事は、珍しいことではありませんよ。死の自覚が無かったり、強い未練や怨念を抱いていたりすると、霊になります。神に捨てられた地でも、ここでも」
バスの男も地縛霊にでもなって、あっちにいりゃよかったのにな……
そんなことを思って霊に包まれたシリンを眺めていると、霊の内側から、真っ黒い霧のようなものが噴きだしはじめた。霊達が黒い霧によって侵蝕されるように消える。
「も、もっとかか可哀想なことになるよ……。と、停まり人がね……」
シリンが言っている間に、黒い霧は急激に広がっていく、最早上空に浮かぶ黒い雲となっている。
「これは不味いですね」
ディーグルが呟いた直後、レンティスがかつてない速度で飛翔した。
「どうなるんだ!?」
大声で問う俺。
「八つ当たりですよ。見ていればわかります」
暗い声で答えるディーグル。
言葉の意味はすぐわかった。黒雲から、黒い雨が降り出した。
レンティスが高度を急激に下げる。ほぼ地面に近い所まで降りてきた。
黒い雨がすぐ横の地に落ちる。落ちた箇所から黒い煙がたちのぼると同時に、地面が腐蝕していく。
地面ならまだいい。建物に落ちたると建物が腐蝕し、さらには人に落ちると……
そこかしこから悲鳴があがる。それなりに広範囲に黒い雨が降っている。なんつーことをしやがるんだ……あいつは。
「太郎さんの出番です」
「わかった」
腐蝕の雨を防ぐべく、街の上空を巨大な鉄の傘で覆う絵を描く。
傘が出現する。下から見ると何が何だかわからんが、とりあえず雨は止んだ。いや、防げた。
否、防げなかった。傘の厚さは結構なものだったのに、腐蝕が止まらず、まるで酸のように黒い雨が傘を溶かして、なおも下に落ちてきた。
それどころか、巨大な傘がみるみるうちに腐蝕して崩れていき、傘の欠片まで街に落下しだすという始末。こいつは不味い……
巨大扇風機を描いて、雲を吹き飛ばせばよかったと思ったが、もう後の祭りだ。どうにもしようがない。返って事態が悪化してしまった。
「太郎さん、何とかしないと」
「急か……」
急かすなと言おうとした刹那、手に持つ鉛筆とスケッチブックに変化が生じた。
鉛筆とスケッチブックが光り輝いている。俺にはそれが何を意味するか、本能で理解していた。
やがて鉛筆は筆に変化し、スケッチブックは画板と一枚の水彩紙へと変化していた。
「太郎さん、それは……」
ディーグルが唸る。俺は迷わず筆を紙に走らせる。
水も絵の具もいらない。大雑把になぞっただけで線が思い通りに描かれる。太さも思い通りだ。色も適当になぞっているだけでついていく。
街の絵。先程見た、ラクチャが街に張ったバリアーの絵。さっきは失敗したが、今度は別の用途で発動できると、俺は確信していた。
淡い光の幕が上空に現れる。腐蝕の黒い雨も、傘の瓦礫も、光に触れると全て消え去った。
「これで……よし」
疲労感を覚えながらも、満足げに笑う。
レベルアップした能力は、思い通りの色が出るうえに、線の調整も瞬時に行える。正確さと具体性が増して、より強力な奇跡を発現できるようになった。何より描く速度が上がっている。
ただしペインを与えずとも疲労がかかるという難点があった。この力はおいそれと乱用できないな。普段はスケッチブックと鉛筆の方を使わないと。
加えて言うと、これだけではない。新しく身に着いた奇跡――筆と画板には、今までの奇跡の限界をはるかに超えた、とっておきの奥義がまだあるんだ。
スケッチブックの方を呼び出し、邪魔な傘を消す。シリンの姿はもう無かった。黒雲もすでに消えていた。
「流石はディーグルの仲間かっこ過去形だけあって、とんでもない奴だったな」
「それは絶対言われると思って、最初から諦めてました」
俺の皮肉にディーグルが苦笑する。しかし実際いろんな意味でとんでもない奴だった。おそらく奴の実力は、ディーグルとそう遜色ないのではないかとも思える。何しろディーグルに一発入れていたからな。
おまけにバスの男以上の無差別攻撃をやらかすとか、イカれっぷりも相当だ。
***
乱す者の無差別テロは、ようやく収束した。乱す者は全て殺されるか捕まるか逃げだしていた。
ケリがついたと確信できたのは、収容所から脇坂の脱獄が発覚した事だ。シリンが言うには、脇坂一人を助けるために、ここまで大がかりなことをしでかしたのだから、もう奴等がリスクを冒して暴れ続ける理由も無い。それは堀内にも伝えた。堀内は軍のお偉いさんにそれを伝えたことだろう。
「ああ……私の家が……。今夜からどこで寝ればいいってのよぉ~」
崩れた家の前で、女性が泣き崩れている。命が助かっただけでもありがたいと思えよふぁっくと思わんでもないが、まあ家が無くなっただけでも十分ショックだわな。中にある物も壊れまくりだしさー。
しゃーない、乗りかかった船だ。実験も兼ねてあれを使うとしよう。
筆を実体化させる俺。さらに画板――ではなく、スケッチブックの方を実体化させる。
すぐに絵を描こうとはしない。今のままでは、描こうにもかけない。何故ならこれから俺は、俺が見たこともない、知らないものを描こうとしているのだから。
筆を持った手を高々と上げる。
その直後、泣いている女性の涙が宙に浮かぶ。女性がそれに気づき、ポカンと口を開ける。涙の粒はふわふわと空中を漂い、俺が持つ筆先で制止する。
それだけでは終わらない。都市中から、家屋を失くした人達の悲痛の涙が、次から次に無数に宙を飛んできて、筆先へと集まっていく。泣いてない人は涙腺から無理矢理涙をしぼりとっている。
「何という光景……」
傍で見ていたディーグルが呻いた。そりゃそうだろう。自分でも凄いと思う。何百か、それとも何千か、物凄い数の涙の粒が次から次へ流星の如く飛んできて筆先に集まり、最早筆先は空中に浮かぶ水たまりのようになっている。無重力を漂う水の塊のようなもんだ。
涙の塊の中へ筆を入れ、濯ぐようにゆっくりと動かすと、全ての涙が一瞬にして、筆に吸い込まれるようにして消えた。
スケッチブックを宙に放り上げる俺。
空中で制止したスケッチブックが、強い風に煽られたかのように物凄い勢いでページをめくられ続ける、ページがめくられる度に、金具から紙が一枚ずつ外れて宙を舞い、淡い光を放ちながら空中で垂直に制止する。
あっという間に何十枚もの紙が、俺を取り囲むようにして、空中に制止していた。
紙の一つに俺が筆を走らせる。文字通り一筆走らせただけ。それだけで、紙に一瞬にして絵が浮かび上がった。家屋の絵だ。
家屋の絵が描かれた紙は光が増し、やがて光の塊となって、先程まで泣いていた女性の前にある、崩れた家屋の前へ流星の如く降り注いだ。
「ええええっ! 私の家!?」
女性が驚愕の叫びを上げる。ディーグルも唖然としている。そりゃそうだ。壊れたはずの家が壊れる前の状態で直っているんだから。
他の紙にも次々と筆を走らせ、それぞれ違うデザインの家が描かれていく。家の絵が描かれた紙は光の塊と化してどこかへ飛んでいく。飛んだ先では家が元通りになり、目の前の女性と似たようなリアクションをしている人達がいることだろう。スケッチブックからはなおも次々と紙が外れて、宙を舞う。
やがてスケッチブックが閉じて消える。一体どれだけの枚数を描いたか自分でもわからないが、宙に浮かぶ紙全てに家の絵を描き終え、俺は大きく溜息をついて額の汗をぬぐった。
流石に枚数が多すぎた。この能力はペインとも無関係に消耗するので、体がもうガタガタだ。
「何となくわかりますが、どういうことなのか一応解説をお願いします」
作業を終えるタイミングを見計らい、ディーグルが声をかける。
「今までは俺の想像力でしか絵を描けなかった。まあ、それが当たり前だけどさ。でも今の俺は他者の涙と強い想いを通じて、涙の主の記憶を絵に再現して、奇跡を発現できるようになったんだ。だから俺の知らない物も、正確に実体化できるようになった。俺が見たこと無い家とその中にあるもの全て、元通りになっているはずだ。ペイン関係無く疲労しちゃうのがタマに傷だが」
そこまで喋った所で、よろめいて倒れそうになる俺の体を、ディーグルが受け止めた。
「まあ直せるのは物だけで、失われた命に関してはどうしょうもないけどな。理想としては、そっちを取り戻したかったんだけれど……」
「今日の太郎さんは十分よく頑張りましたよ」
虚しげに語る俺を、ディーグルが抱きかかえて優しく微笑むと、珍しく熱のこもった声でそう告げた。
***
嗚呼……極楽だ……。この感触……想像していたよりずっと素晴らしいぜ。
兵舎のグラウンドに戻り、地面に横たわるレンティス。その豊満な胸に全身で抱きついている俺。
ディーグルは約束通り、レンティスの胸を自由に扱っていいと言ってくれたので、俺は思う存分おっぱいベッドを堪能して、今日の疲れを癒していた。
レンティスは嫌な顔一つしないどころか、まるで慈しむかのように、時折俺の頭を鼻先で撫でている。あうう……レンティス超いい奴……。とてもディーグルの使い魔とは思えねーぜ。
「ちょっとディーグル、あの子は一体何してるんだい、いやらしいねっ」
そこにランダとゴージンがやってくる。ランダは俺がレンティスのおっぱいベッドで寝ているのを見て、露骨に顔をしかめて毒づいているが、気にしない気にしない。
「今日の太郎さんは凄くよく頑張りましたからね、特別に御褒美です。そっとしておいてあげてください」
今日のディーグルは、らしくもなく優しい。いつもこんなんだといいのに。
「太郎はやはリ子供なのだロう。母恋しいに相違あルまい。ランダ、大目に見てやレ」
良心的な解釈をしてくれるゴージンだが、その解釈をランダの前で口にするのはヤバいかもしれない。
「そうかい。なら明日からあたしがたっぷり、太郎に母性というものを叩きこんでやろうかねえ。乳でさえあれば何でもよさそうだしね」
ほら、こうきた。でももう今の俺は全てがどうでもいい。明日からのこともどうでもいい。今はこの素晴らしい感触だけが全てさ。
続きは二月になります。




