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16 デートで彼女が最初に行きたがる場所は?

「二つ疑問があります。まあ、そのうち一つは何となく察しがつきますが」


 沈黙を破ったのはディーグルだった。


「神の力を自由に付与すると言っても、そのリザレさんには自分の思い通りになる手下がいるのですか? 神の力を得た者が反乱する可能性もあるではありませんか」

「いるからこそ、可能なのだ。より正確に言えば、リザレの奇跡でそれが可能になる。彼女の奇跡は、服従ウイルス。自分と戦って敗れた者をウイルス感染という形で奇跡を発動させて、絶対服従させる。逆らった者には強烈なペインを与える。反乱もほぼ不可能だ」

「なるほど」


 納得するディーグル。俺は納得できん。何でそれがウイルスという形なんだよ。普通に制約の呪いとかじゃダメなのかと。ウイルスという意味が何かるあのかねえ。

 例えそんな服従ウイルスなんて奇跡がなくても、強大な力を与えることができるようになるだけでも、力に魅せられた手下をそれなりに増やせるはずだ。反乱のリスクはあるけどな。だがそれに加えての服従ウイルスとのコンボ――これは確かに強力無比だ。


「もう一つは……やはり聞くのはやめておきますか」


 ディーグルが躊躇いがちに言った。俺にはその質問が何であるかはわかる。


「何でネムレスは、リザレに危機感を抱きつつも、殺しもせず、巫女としての力も奪わず、放置しているのかってことだろ?」


 俺がディーグルのもう一つの質問を言い当てた。


「ネムレスはリザレを警戒している一方で、信じてもいる。いや、信じたいといったところか。その気持ちは俺にもあるし、わかるよ」

「大体言われてしまったが、そういうことだな」


 ネムレスが小さく微笑む。その微笑がどこかとても儚く見えて、俺の胸がきゅんとくる。


「さらに付け加えるならば、だ。もしリザレが本当にこの世界の敵になった時、僕はリザレと相対できるかどうか、わからない。僕はこの世界も大事だし守りたいが、リザレと太郎のことも大事なんだ。そうならないように努めたいが、最悪のシナリオになった際は……現時点ではどうするか決めあぐねる。僕は基本的に本能の赴くままの神だからな」


 リザレの暴走なんて、俺も考えたくないな……。ましてや本格的に敵になるとか。


「もしもの時に、何か対抗できるよい知識が無いかと思い、僕はリザレと別れてこの図書館にこもっていた。どの都市でも基本僕は、図書館にこもって知識を漁っているがな」

「俺を呼んだのは? 心を失くした神々を倒すためとか、そんなこと言ってたけど、今予定が変わったと言ってたしさ」


 俺がネムレスに問うと、ネムレスはすぐには答えず、俺の次の言葉を待つ。


「リザレの暴走も念頭に置き、それを制御するか止める手立てを一緒に見つけるため、ここに呼んだんじゃないのか?」


 仕方ないから俺の考えを述べる。


「神々を討つ旅をするというのも間違ってはいない。それはもちろんいずれ行うつもりだ。それでなくても魔雲の地には心を失くした神が多い。ここでは邪神というくくりにされているがな」


 いずれ……か。優先順位は相当下がったんだろう。おそらくは、リザレの動向によって。


 そういやサラマンドラ都市連合では邪神だの悪神だのと呼ばれているのは、心を失った神々とはまた別物というか、心を失った神に対しての認識自体が無かったな。ラクチャのじっちゃんですら、心を失いながらも普通の神様扱いだし、ネムレス以外は気付いていなかった。しかし魔雲の地においてはそれが、邪神という形で認識されているのか。


「俺達は当面どうすればいいんだ? 俺はネムレスのおっぱい揉み続けているのが、理想なんだが」

「しばらくはソードパラダイスでのんびりしているといい。ここは退屈しない場所だ」

「おっぱい抜きにしても、俺はせっかく会えたネムレスと一緒に、のんびりしたいんだけどなあ」

「読書の邪魔をしなければ、一緒にいても構わないぞ」

「おっぱ……」

「読書の邪魔をしなければ、一緒にいても構わないぞ。読書の邪魔をしなければ、一緒にいても構わないぞ」

「太郎、しつこいゾ」


 ぐぬぬぬ……かぶせて遮られた。しかも合計三回も言われた。おまけにゴージンにまで注意された。おのれ~……


「少しは甘えさせてくれたっていいだろーっ。少しは同じ時を過ごしたっていいだろーっ」

「まあずっと読書しているわけでもないから、少しも近づくなとは言わん。しかし僕がずっとかまっていられるわけではないから、その間はソードパラダイスの観光でもしていればいい」


 ちぇっ。俺はずっとネムレスと一緒にいて、いちゃいちゃしていたいのに……


「ディーグル、ゴージン、改めて今後とも太郎のことをよろしく頼む。僕の調教が至らないせいで、苦労をかけるとは思うが。いや、実際苦労してきたのも、太郎の記憶を通じて知っているが」

「いえいえ、こちらこそしっかりと調教が行き届いていなくて、この有様で申し訳ありません」


 何こいつら……。また俺のこと問題児扱いしやがって。ふぁっく。


***


 その後しばらくの間、ネムレス交えて四人でお喋りして、楽しい一時を過ごした。特に重要な話はなく、ほぼ雑談。

 その間にネムレスとディーグルが、何度も俺のことディスったのは言うまでも無い。こいつら俺の保護者面して、変な所で意気投合しやがって……


 で、ネムレスが美味い飯屋に連れて行ってくれるという事になった。何か忘れているような気がするし、実は覚えてるけど、忘れたふりのままでいいな。ドロカカのことなんて。


 部屋を出た所で、ネムレスが院の者に呼び止められて、場所を移して結構長い時間話し込んでいた。長い話になるという事で、俺等は遠慮して図書室で時間を潰していた。


 その後、馬車に乗って街の中を移動。馬車に乗って外を眺めていると、高い建築物が多く目に付く。葉隠市では都市中心部以外ほとんど無かったがな。今いる場所は、わりと上級市民向けな地区であるし、施設の集中した場所でもあるが、葉隠と比べてかなり高い建築物が多い。葉隠では高層建築物が一種のタブーみたいな感があったが……


「太郎さん、ドロカカさんのことは気にならないのですか?」


 忘れていたかったのに、飯屋で食事中に、ディーグルがわざわざその名を挙げてきた。


「太郎の記憶を通じて知っているが、古代の知識の解析中だったな」


 ネムレスが俺の方を見る。


「古代神の巫女が十年もしつこく追いかけてくるのだから、相当重要なデータが詰まっている可能性が高かろう」

「私もネムレスに同意見です。そして、ドロカカという人物を私は信用できません。妙に野心がありますからね。禁断の知識が危険なものであれば、彼の野心と結託し、ろくでもないことが起きる可能性もあります」


 と、ディーグル。そう思うなら何で呑気に食事しているんだか。


「かといって、お前はヤバそうな奴だからとか言って、ドロカカからそいつを取り上げることもできんだろ。それじゃあモリノと同じだし、結局やらなかったんだから」


 危うきは罰せとか超野蛮。


「警戒した方がよいという話であロう」


 ゴージンが言った。


「我はドロカカのことは信じきルには値せぬが、警戒すレばうまく付き合えルとものと考えル。ああいう手合いはいルものゾ。傭兵生活の際に何度か見た」

「言いたいこたーわかるけど、警戒したからと言っても、この件に関しちゃどーにもならんだろ。ドロカカに野心があって、今解析しているデータとやらがすげーヤバいブツなら、もうそれでアウトじゃんよ」

「そうであレば、我等でもって全力で止めねばなラぬ。そうであロう? 我等に責任が無いとは言えぬ。彼奴をここまで導いたのは、我等のようなものゾ」


 優等生的発言するゴージン。まあ正論であるが。


「モリノがしつこく追っていた時点で、危険な知識ではないという可能性は、悲観的だな」


 そう言ってネムレスがティーカップを口に運ぶ。


「ヤバい知識だとして、ドロカカがどう扱うかが問題だ。ネムレスはその場合どうするんだ?」

「実はすでに手を打ってある」


 俺の質問に、思ってもみない答えが返ってきた。


「正確には、手を打たざるを得ない流れだった。賢者院を出る際、僕は院の者数名と長話をしていただろう? あの中には、ドロカカの件で僕に報告する者がいた。賢者院の問題児である大賢者が帰還して、怪しい禁忌の知識の解析を行っているとな。すでに賢者院の者達がドロカカの動向は注視している。何かあればすぐ僕にも連絡が来る。僕も彼等に幾つか指示を出しておいた」


 ネムレス、わりと抜け目無かったんだな。というか、賢者院という組織が見逃すはずもなかったか。


「他にも話はあったが、主に禁断の知識の件と、ドロカカという人物の人となりだ。君達もすでに知っている事なので、後者は語るまでもないな。モーコ・リゴリ遺跡の第四次探索隊は、非公式の元に行われたものだ。ディーグルも参加した第三次探索隊で犠牲が出すぎたため、おおっぴらには行えなくなった。第四次でも犠牲が多かったが故、それ以降モーコ・リゴリ遺跡の探索は一切行われていない。成果は無く犠牲だけ出したと思われた第四次の成果を、死んだと思われたドロカカが持ってきたというだけでも、賢者院のお偉いさん達は興奮と動揺を隠せぬようだ。で――」


 ネムレスの視線がディーグルへと向く。


「私は食事の後、賢者院のお偉いさん方の相手をせねばならぬ。第三次探索隊に参加したディーグル。君も来てくれないか?そうすれば話がスムーズに進む」

「御所力できることがあれば何なりと」


 ネムレスの要望に、ディーグルは胸に手を当てて優雅に微笑み、了承する。


「太郎とゴージンは観光でも行っておけ」

「えー、何で俺等だけ締め出すんだよ」


 いきなりのけものにされて、ぶーたれる俺。


「気遣ったつもりだが? はっきり言えば退屈な話だぞ。長引くのも目に見えているし。ディーグルにつき合わせるのは申し訳無いと思ってる」


 都合が悪い話だから締め出すとか、そんなわけでは無いようだ。ていうか俺とネムレスは、精神感応しあっているので、嘘の類は無理だ。わかってしまう。もちろんネムレスの方が上位にあるので、俺はネムレスに秘密を抱けないが、ネムレスの記憶まで俺は覗けない。しかしそれでも、ネムレスが俺を騙すことは無理だろう。


***


 そんなわけで、俺はゴージンと二人で観光とあいなった。


 都市観光と言っても、このソードパラダイスという都市国家は半端無く広いので、都市の一部を観光するに過ぎない。東京なんかよりずっと広くて、人口も多いんだからな。


「ひゃっはーっ、うるせーのがいなくて、久しぶりにゴージンと二人っきりのデートタイムだぜー」

「レロの神殿でもタッグを組んだではないか」


 はしゃぐ俺に、ゴージンがとんでもなく見当ハズレなことを口にする。


「あれデートじゃねーし、大分前の話じゃん」

「そうか? 然レど愉しき想い出には相違なきゾ」


 むう……そう言われると嬉しくなっちゃうじゃないか。


「ディーグルと一戦交えた時の事も良き想い出であルが、太郎と二人で行動した時は確かに愉しき哉」


 むう……思い起こしてみると、俺とゴージン二人っきりで行動って、片手で数えるくらいしかないな。同じベッドで寝た事とかは除外して。


「よし、今日はデートな。俺が決めた。そう決めた。そのつもりで臨むように」

「応」


 強引に決定する俺に、笑顔で気合いを入れて頷くゴージン。


「まず我が行きたい場所のリクエストをしてもよしや?」

「もちろん」


 図書館から借りてきた地図の本を開いて確認するゴージンに、俺が頷く。


「なラばここゾ。そう離レてもいない」


 ゴージンが本の地図を指して俺に見せる


「真っ先に闘技場か、ゴージンらしいな」


 微笑む俺。見物する方……だよな?

 その都市名通り剣を尊ぶ国故に、ソードパラダイスにはかなりの数の闘技場がある。市民の一般的な娯楽の一つであるという。

 綺羅星町を思い出すな。あの街では闘技場でなくても、ストリートファイトも見世物にして賭博とかやってたけどな。


 俺とゴージンが向かったのは、最も近い場所にある、都市で最も巨大で有名な闘技場だった。


 移動は俺が絵で出した、足がタイヤになったメカドラゴンで向かった。メカドラゴンというより、竜のような車? 俺とゴージンはドラゴンの中に入って外からは見えない。


 闘技場近くで、乗り物での移動ができなくなったので、仕方なく降りる。乗り物が入るスペースなどないくらい、道が人で溢れかえっているのだ。

 闘技場の周囲からしてすごい熱気と人だかりだ。大通り一面、通勤ラッシュを髣髴とさせるほど、人だらけ。人の多さだけなら、綺羅星町のそれをも明らかに上回る。綺羅星町よろしく露店も多く出ている。


 デートということもあってか、ゴージンの方から手を繫いできてくれた。嬉しい。すごく甘酸っぱい気持ち。うん、本当はわかってる。俺が人ゴミの中でうっかり迷子にならんようにするためだけってこと、わかってる。うん。それでも嬉しい……。


「お嬢ちゃん達、闘技場初めて? ソードパラダイスも初めてっぽいね? 見ればわかるよ」


 ロバの耳を生やした軽そうな金髪の男が声をかけてきた。ナンパかよ。


「ちんちんあるよ。見せてやろうか? ほれ、近うよれ」

「いや……ちんちんはいいけど、こっちさっき全部すってオケラなんで、入場料とかけ金支払ってくれたら、いい席に案内してあげるし、いろいろ解説もしてあげるよ」


 わざわざ空の財布を逆さにして振ってみるロバ男。

 日本人的な価値観からすると、何だかいかにも怪しくって相手にしない方がよさそうに思えるが、ここは文化が違うからなあ。ついでに言うと、いつでも実力行使でねじ伏せることが可能。


「いくらいるんだ?」

「お、すまないねえ」


 入場料を別とすると、男の口にした値段は大したこと無かった。むしろ安いとすら感じてしまうほどだ。


「倍率の表示されてない試合が幾つかあるな」


 試合内容を示した掲示板を見て、俺が言う。


「ああ、それは剣神が出る試合だ。賭けにならないからな。まあ剣神でもすごーくたまに負けることもあるがね。ただし、わりと闘技場に出ることの多い、実力四位の剣神である墨子でさえ、滅多に負けん。剣神王マガツに至っては、一度として敗北を喫したことがない」


 スミコ? 女で日本人か?


「しかも長いこと旅してた剣神ヘカティも戻ってきて出場だ。今日は中々豪華だね」

「つーか、疑問なんだけど、神と対戦組まれりゃ試合にならないの明白じゃん。普通勝てんわ。まるで神の力を誇示するショーじゃないか」


 思ったことをズバズバ容赦無く口にする俺。このロバ男が信仰心厚い奴なら怒るかもしれんが、そんなタイプじゃないと見た。


「神も奇跡を用いず、純粋に剣技のみで戦うから勝機はある。今言ったように、剣神が負けることなど滅多にないが、神に勝った剛の者もそれなりにいるんだ。神に勝った者は最高の名誉を授かるわけだから、トップクラスの剣士達は、神に何度も挑んでいるさ」


 それでも勝率は悲惨だから、賭けの対象にはならない、か。

 ゴージンでさえ、純粋な武のみでアーゼーに全くかなわなかったしな。これがディーグルだと話は違ってきそうだが。


 ロバ男がかけ金を支払い、券を買ってきた。呆れたことに、かなり勝率低い奴だ。


「お主、毎度そうやって他人にかけ金と入場料を支払わせたうえで、穴場狙いばかリしておルのか?」

「ん? そうだよ。お嬢ちゃん達みたいな、金もってそうで、人のよさそうな旅人とか、すぐ俺わかるしね」


 呆れて問いただすゴージンに、ロバ男が笑顔で認める。ちゃっかりもここまでくると、逆に清々しいな。

 ちょっと高めのいい席を買い、三人で座る。ロバ男の名前はロバートといった。嘘だ。ナミャーロだった。ロバ耳のくせに猫みたいな名前だ。


「次は剣神墨子の番か。相手はブンブ……勝率七割の猛者だが、まあ普通に墨子の勝ちだろうな」


 苦笑いと共に解説するナミャーロ。


 リングに現れたのは、グレートアックス二刀流という、すげえ使い辛そうないでたちの禿頭のドワーフ。こいつがブンブだろう。

 さらにもう一人が現れた所で、一際高い歓声で、闘技場が沸く。白くひらひらした和風巫女的な衣装をまとい、こちらもまた日本刀大小二本を鞘から抜いて引っさげた、長い黒髪の女性だった。やや垂れ目で、おでこを丸だしにした、おしとやかそうな美人だ。これが剣神の一人、墨子か。


「墨子は剣神としての序列こそ四位だが、このソードパラダイスの実質的な統治者だ。執政の全権を握っているといっていい。まあ、たまに口出しする剣神王の決定には逆らわないから、真の意味でのナンバーワンは、剣神王マガツなんだがね」


 ナミャーロが解説する。つまりマガツが王、墨子が宰相みたいな立ち位置か。


 勝負はナミャーロの予想通り、あっさり墨子の勝利で終わった。あの両手で振り回すようなグレートアクス二刀で、一体どう戦うか見てみたかったが、ブンブはろくに得物を振る暇すら与えられず、あっさり日本刀で切り刻まれてダウン。もちろんペイン抑止機能付きの得物である。


 その後、さらに二試合続き、そのうち一試合はナミャーロが賭けた試合であった。倍率6.2倍とか、かなり力の差が明白な試合。しかし勝負はどう転ぶかわからないもの。でも倍率通りの結果で、ナミャーロは券を放り捨てて肩を落とした。で、また新参を探すわけか。


「さて、本日のメインイベント見て帰るかねえ。久しぶりに帰国したヘカティと、剣神マガツとの、神同士の戦いだ。結果はわかっているが、それでも見ものだぜ。ヘカティがどれだけ腕を上げて、どれだけマガツに食い下がれるかな。勝負ってのは結果が全てじゃねえ。過程こそ楽しむものさ」


 得意げに語るナミャーロ。


「流石大穴狙いばかりしている男の仰ることは、一味違うな」

「だろー?」


 俺の皮肉がわかっているのかわかっていないのか、ナミャーロは上機嫌に頷く。


 まずはヘカティがリングに現れ、場内が歓声で包まれる。俺達と会った時同様に、漆黒の鎧で身を包んで顔も見えない。サービスで顔くらい見せてやりゃいいのに。

 つーか、綺羅星町の闘技場は花道があったわけだが、ここにはそれが無くて、いきなりリングの端についた扉から現れるから、入場シーンが味気ないわ。


 そしていよいよ、最強の剣神マガツが現れる。これまでで最高潮の歓声――ではなく、久ぶり帰国のヘカティのほうが歓声でかかった。

 マガツは他の四人の剣神達と違って、もう見た目からして、強そうなオーラぷんぷん放っていた。つーか、2メートルを優に超すであろう巨体に、腰巻一つだけという蛮族スタイルで、ぼさぼさの赤毛長髪、超逆三角形超筋骨隆々というボディー、得物は常人なら両手持ちであろうグレートソードを軽々と片手で担ぎ、どう見てもパワータイプのウォリアー。


 ヘカティを応援する声の方が多い。判官びいきか? あるいは無敵無敗の戦神が崩れ落ちるやもしれぬドラマが見たいのか、単純にヘカティが人気ある神なのか。


「ヘカティの方が人気があルのだな」

「まあ、マガツの強さはもう絶対的すぎてな、それが返ってアンチも生んでしまっている。それにマガツ自身、ぶっきらぼうすぎる奴だからなあ」


 ゴージンの言葉を受けて、ナミャーロが解説した直後、試合が開始された。

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