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第23話 君の瞳に恋してる

 ゲームセンターの奥、プリクラの台が並んでいる辺りまでやってきた。プリクラは使う機会が無かったためどれを選んだらいいかよく分からない。さてどうした物かと思っていると、たくさん並んでいる台の中から六花さんとエミリアさんが出てきた。


「あれ、六花さん?」

「エミリアもいるです……どしたの?」

「お、大和も来たね」

「大和さん……ぐす」


 泣き顔になっている六花さんは俺の後ろに隠れてしまった。一体何があったのかとエミリアさんの方を見ると、彼女は何か長方形状の紙をピラピラさせてくる。ん、それが撮ったプリクラだろうか。


「どうしたんですか?」

「六花とプリクラ撮ったんだけどねー」

「そ、それ以上は言わないでください……!」


 プリクラを見ようとした時、後ろから六花さんがいきなり俺の目を塞いできてしまう。アマンダはエミリアさんが持っているプリクラを見たのか、なんだかよく分からない声を出している。


「Oh...」

「とっても面白く撮れたのにー」

「見ないでください! 見られたら、見られたらお嫁に行けません……!」


 そ、そこまでの写真となると逆に見たくなってしまうと言うのが男の性。だがここまで言われてしまってはたとえ見たくても見ることが出来ない。六花さんを裏切る事なんて出来る訳が無いからな。


「んー、残念だね。そこまで言われたら仕方ないよー」

「ううっ……」

「あ、あの、エミリアさん。プリクラ使いたいんですけど、どれ使えば……」


 目を塞がれながらさっきまでプリクラを使っていたであろうエミリアさんに質問をする。すると、少し考えた後に彼女は答えてくれた。


「そうだねー。隅にある奴が一番いいと思うよ。あと六花、そろそろ外してあげれば?」

「あっ、はい……」


 エミリアさんに言われるがまま六花さんは俺にしていた目隠しを解いた。もう一度指さしでプリクラの筐体の位置を説明してもらい、一言お礼を言った後にそこへ向かう。別れ際に六花さんがほんのりと顔を赤く染めていた様子が頭に引っかかったが、そんなに恥ずかしかったのだろうか。

 おすすめされた筐体の特徴はよく分からない。どれもこれも同じような感じにしか見えないし、機能が違うと言われてもピンとこない。アマンダだったら使ったことがあったかと思って視線を向けてみたが、頭に疑問符を付けて返されてしまった。


「ダーリン、プリクラやったことありますか?」

「ないんだ……」

「エミリア、呼ぶ?」

「それはしなくていい、かも。まずはやってみよう」


 自信はないがとりあえずお金を入れてみる。400円。結構高いじゃないか。エミリアさんが選んでくれた筐体だから大丈夫だろう、と自分を奮わせ、心配そうに見守っているアマンダを背に硬貨を4枚投入した。


〈ようこそ! 好きなモードを選んでね♪〉


 そうして画面に現れたのは「カワイイモード」と「キレイモード」の2つ。正直違いが分からない。アマンダの方をちらと見ると、彼女は何も答えずに俺の顔をぼんやりと見つめ返してきた。彼女も何が起きるか分からずに戸惑っているようだ。


(……やっぱりアマンダは「カワイイ」だよなぁ)


 そう言って「カワイイモード」の方をタッチする。

 すると間髪入れずに次の指示が飛んできた。


〈撮影する背景を選んでね♪〉

「アマンダ、なんか好きなの選んでいいぞ」

「ん、じゃあ私が選びますね……」


 背景はアマンダの好きな物を選んでもらうことにした。沢山ある中からわくわくして選んでいる彼女の後ろ姿は見ていて微笑ましい。そして、選び終わった彼女はにっこりと微笑んで俺の右腕に抱き付いてきた。セーラー服越しおっぱい……!


〈撮影タイム! 荷物は手前の方に置いてね! それじゃあまずは1枚目!〉


 今回撮影するのは全部で5種類。先程アマンダが選んでくれた背景から1枚が画面に映し出され、手前のカメラに写っている俺たちの姿も現れた。こうして見ると、アマンダを片腕にくっつけている自分の姿は思った以上に恥ずかしい物がある。アマンダは何も悪くないのだが、自分の姿を見ると言うのが気まずいと言うか。


〈二人でピース!〉

「ピース!」

「ぴ、ピース……?」


 元気に人差し指と中指でVの字を作ったアマンダに倣い、こちらもVサインを作る。なかなかこういう自撮りチックな撮影はやった事が無かったが、アマンダと身を寄せ合い、画面内に入るようにしてポーズを彼女と合わせた。

 そうしてカウントダウンが始まり、終了後にカシャリとシャッター音が入る。アマンダと二人きりの写真が1枚完成した。続けて2枚目。


〈二人でぎゅー!〉

「え……?」

「ぎゅー、ですか?」


 筐体から流れる女性の音声に俺もアマンダも戸惑ってしまう。とりあえず言われるがままにアマンダと抱き合うような姿勢になった。胸元に彼女のおっぱいがむにむにと当たっている。それだけで頭がとろけてしまいそうなのに、目の前でアマンダが顔を赤くしているのがあまりに可愛くて……


「ダーリン、は、恥ずかしいです……」

「そ、そうだな、アマンダ」


 二人で身体を密着させながら画面を見る。そうしてカウントダウンを迎え、俺の若干強張ったような顔とアマンダの蕩けた顔がカメラに収められてしまった。この写真が見つかったらもうバカップルではないと言い逃れは出来ないなぁ……

 と思っていると、更にレベルの高いお題が飛んできてしまう。


〈ほっぺにちゅー!〉

「えぇ……」

「ちゅ、ちゅー、ですか?」


 アマンダはそれ以降何も言わなくなってしまう。こちらもただ棒立ちしたままで彼女と見つめ合っていたが、アマンダは、ほんの少しだけど動き始める。カウントダウンが始まって残り数秒と言う所になると、目を閉じたアマンダは右頬に優しいキスをしてくれた。そしてその様子もカメラに収められてしまう。


「んっ……なんだか恥ずかしいです」

「写真に撮ってるからかな……」

「きっとそうです、ううっ」


 筐体のカメラにアマンダとの甘いひとときが収められる。すっかり蕩けてしまっているアマンダも、彼女のせいで駄目になっている自分の姿も同じく記録されていく。


〈今度は好きなように撮ってみよう!〉


 指示はそこで終わる。目と鼻の先、とも言える距離のまま俺とアマンダは見つめ合った。

 会話は無い。だけど、この後、お互いが何をしたいか分かってしまっていた。


「んっ……」


 アマンダの腰のあたりに手を置いて、そっと口づけする。次第に彼女がこちらへ近づいて来て、とうとう身体がむちりと密着した。彼女の暖かい舌、柔らかい身体、心地よい香り。プリクラを撮っていることすらも忘れ、アマンダの全てに夢中になっていく。


「ダーリン……んちゅ……」


 もっとアマンダの事が欲しい、と舌を奥の方まで入れて絡める。それに応えるようにアマンダも激しいキスを返してくれた。こうなってしまえばもう周りの事など見えるはずがない。二人で夢の世界に浸ってしまい、気が付いたら既に全部の写真を撮り終えてしまっていた。


「あ……早く隣のスペースに行こうか」

「は、はい、です」


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