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放課後レンジャー  作者: kyo
第3章 異世界に来てみたら

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第58話 始まりの村⑨森の主人

「やめて!!」


 殴って蹴って、サンドバッグ状態だ。


《おいおい、傷だらけじゃん》

《魔物にだってクマ、こんなやられたことないのに……》


 健ちゃん、怪我してる。ボロボロなのに、なんでやり返さないの?


「優梨、動くなって!」


 助っ人に入ろうとしたら、健ちゃんが鋭く言った。

 敵は忍び寄ろうとしたことに気がついてなかったのに。

 わたしを警戒するようになってしまった。

 健ちゃんどうして?


「嫌な目しやがるなー」


 ポニーテールがわたしに近づいてくる。


《アリス、逃げろ!》

《アリス、やっちゃえ!》


 防御、いいよね?

 わたしは掴まれる前に攻撃してやろうと構えた。

 でもそのわたしの前にダレン君が入ってきて、わたしを守ろうとする。

 え?

 そのダレン君の前に、もう少し上の少年。その前におじさんが回り込んで、子供たちを横から抱きしめるようにした。

 ポニーテールの蹴りはおじさんのお尻に当たる。


《アリスを守ったのか?》

《いい奴らじゃん》


 口の端が切れ、血を流している健ちゃんがニヤッと笑う。

 ……これを待ってた?


 バーカードさんたちが、外から走ってきた。

 大声をあげ、武器を掲げて、ポニーテールたちに切り込んだ。

 触発されてか、村人たちが、ただ怯えていたのと打って変わり攻撃を始める。


《形成逆転》

《クマはこれを狙ってたのか?》


 戦闘が始まって、わたしは健ちゃんの元へ。

 ハンカチを健ちゃんに押し付ける。口の端の血を拭う。


「大丈夫だ、なんともない」


「血が出てるのに、どこがなんともないのよ?」


「ほら、見てみろ、優梨」


 戦いは驚いたことに、村人たちが押していた。


「え?」


 驚いて声が上がる。


「だてに、狩猟をしていたわけじゃない」


 そっか。バーカードさんたちはわりと強かった。魔物と戦って勝てるくらい。村の人たちも同じような暮らしをして生計を立てていたから、きっと彼らも大丈夫と思ったんだ。


《村人、つえー》

《クマはこれを狙ってたのか……》


「こうなるってわかってて?」


「というより……俺たちは、いついなくなるかわからない。ずっと守ることはできないだろ? 今日俺たちが撃退しても、俺たちがいなくなってあいつらに襲撃されたら? ここはあの人たちの村だ。手は貸せるけど、自分たちの村は自分たちで守れないとな」


「……健ちゃん」


《クマ、すげー》

《なんだよ、クマ、惚れる!》

《……うん、思いは自由だから》

《いいんじゃね? 応援するよ》

《そういう意味じゃねーって》


 同じ幼稚園、小学校、中学校、高校と進み、同じ教育を受けてきた。

 それなのに、わたしはそんな風に未来のことまで考えられなかった。

 同い年で、同じ異世界に迷い込んだ。それなのに、この違いは何なんだろう?


「紐持ってこい!」


 あっちも数を増やしてきたけど、こちらもそれ以上に人数はいた。

 攻撃的な人たちではないけれど、獣と対峙した覚悟のある人たちだ。

 戦いが始まれば村人の圧勝だった。

 そしてそれは村人たちの自信にも繋がったみたい。わたしという女の子が健ちゃんみたいにボコボコにされてしまうのは……とスイッチが入った。

 幼い子たちも、わたしを助けようとしてくれた。


 捕らえてみれば、わたしたちを襲ってきた最初の5人、彼らが首謀者で、後の人たちはお金で雇われた人たちだとわかった。村に思い入れもないことから、次はないと脅した上で雇われた人は解放。首謀者である5人は明日町の役場に連れていくとのことだ。


 健ちゃんはポーションを飲んで、すぐに回復した。怪我も血が出たところもなんともなくなっている。


《戦闘じゃなくなると、すぐに切れるのに……続きがあるってことか?》

《だろうな。まだ戦闘の可能性がある》




 ほっとした時、布団叩きがカタカタ鳴り出した。


「プペ!」


 プペが警戒の声をあげる。

 健ちゃんも立ち上がって、周りを鋭く見る。

 何か、来る?

 パサっと軽やかな何かが聞こえた時には、目の前に象より大きな黒い獣がいた。

 黒い狼?

 健ちゃんがわたしを背中に庇う。


《でけー》

《なんだこれ?》

《黒い狼? サイズが違いすぎだろ!》


 と、みんなが伏せていた。小さな子たちもだ。


「森の主人(あるじ)様」


 ははーと代官様にひれ伏しているような感じだ。


《村人が伏せてる》

《何? 守り神様的な?》


「森の主人様?」


『珍しいな、異界人か』


 喋った!


「なぜそれを?」


 健ちゃんが言うと、ダレン君が健ちゃんの服の裾を引っ張った。


「ケンは森の主人様の言葉がわかるのか?」


 わたしたちは顔を見合わせた、この黒い狼の言葉はわたしたちだけに聞こえるようだ。


「ああ、わかる」


《あー、また会話がわからない問題!》

《フォロワー、置いてけぼり問題!》


 健ちゃんはそうダレン君に答え、そして黒い狼に向き合う。


「なぜ、そうわかったんです? 森の主人様って何者ですか?」


『我は聖なる方より森を護る役目を授かりし者。東の森がやけに騒がしく珍しい気を感じたので馳せ参じた。まさか異界の者がいるとは思わなんだ』


 黒い狼は茶目っ気たっぷりに言った。


「俺は健太」


「わたしは優梨です」


『ケンタにユーリか。その下のは?』


「あ、プペです」


「プーペ」


 村の人たちがどよどよしている。言ってなかったからな。


「わたしはテイマーでもあるので」


 後ろの方でテイマーって?って声が聞こえる。

 魔使いのことじゃないか?と言う声も聞こえる。

 こちらではテイマーではなく、魔使いというのかもしれない。


《あ、薄れていく》

《うそ、ここで切れんの?》

《こんな勝手な配信、もう見てやらねーぞ》

《って思うんだけど、見ちゃうんだよな……》

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― 新着の感想 ―
[一言] もふさまの前任か後任だろう黒狼さんや魔使いというワードだったりとかなりプラス的〜とリンクしてきましたね。 前だとするとこの話ってもしかして…という予想をしながら楽しませていただいています。…
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