第55話 始まりの村⑥冒険者カード
地下1階にていっぱいの魔物を倒してもらったので、1階に上がった。
ご飯を食べてから町へと出発することになると、カマちゃんが走ってきた。
みんなビクッとする。
「な、なんですか、あれは?」
「炊飯器っていってもわからないよね? ご飯を炊くものなんだけど。ちょっとバトルが好きで、自分で魔物を獲ってご飯を作ってくれるんだよね」
かぱっと蓋をオープンすれば、お肉と野菜がゴロゴロ入った炊き込みご飯だ!
美味しそう!
アンちゃんとダレン君のお腹がキュルッと鳴る。
大急ぎで野菜のスープと、簡易お漬物を作って、ご飯にした。
変わった食べ物と思ったようだけど、気持ちいぐらいに食べてくれた。5合以上の炊き込みご飯が一食でなくなった!
炊き込みご飯も、スープも、お漬物も評判がいい。
ガーちゃんもやってきて、獲っていたものを渡してくれた。お礼を言って、それをアプリで換金しようとすると、お金の種類が増えている。
健ちゃんと相談して、少しその新しい硬貨に替えてみて、この世界のお金かと尋ねるとそうだという。
10進法で助かった。わりと細かく硬貨が分かれている。その上は板だったりするみたいだ。普通の買い物をできるという硬貨に替えておいた。
みんなが倒して手に入れた魔石やドロップ品は荷車に積んで、町へと出発。
「どうでした? 我々は役に立ったのかな?」
「はい、十分に! 時々入って欲しいぐらいみたいです。あ、でもダンジョンは危険もありますから。はい、今回は助かりました!」
「ケンやユーリから見て、俺らはどうですか? 俺たちって冒険者としてやれると思いますか?」
え?
バーカードさんたちは、地下1階限定だけど、手応えを感じたそうだ。それで考えた。森を獣に荒らされた。もちろん捉えるつもりだけど、森だけにいつまでも拘っている必要もないんじゃないかと。ダンジョンの作物はものすごくありがたい。あれを取りに行き、地下1階なら戦えそうだ。これは冒険者になっておいて、肉を取るのもありなんじゃないかと。魔物のお肉が美味しかったみたいだ。
村のみんなにも食べさせてあげたいらしい。
わたしたちは地下1階の魔物は、はっきり言えば全く強くはないけれど、あの階であれだけ戦えれば十分だと思うことと、冒険者として登録しておくのもありだと思うと言った。定期的にあのダンジョンに潜ってもらえれば、こちらとしても願ったり叶ったりだしね。
そういうと、成人組の目が輝きだす。目標を見つけた時のそれとよく似ていた。
ダンジョンの戦いで自信がついたのか、森で獣にあっても果敢に挑んだ。わたしたちが手を貸す必要もなく、3日後、町の門が見えた。
塀でぐるりと囲んでいるようだ。
見回りをしている人もいて、体制が整っている感じだ。
門を通るとバーカードさんたちは顔が知られているから顔パスだけど、わたしたちのことを聞かれた。
途中で相談しておいた通り、最初の設定でいくことにした。ダンジョンの報告は義務らしいしね。
そして健ちゃんとは相談した。農作物、あんなすごいのがあったら詰め寄せたり、売ったり(農作物は獲ってある程度時間が経つと復活する)、それからあのダンジョンを独り占めしようとするものが現れるかもしれなくてその対策をだ。
ま、マスターさんに丸投げすることにしたんだけど、2つ入り口を作ることにした。村の人はあの農作物の1階に行ける。けれど、やましい考えがある人にはもう一つの入り口から入ることになるように。そこから入っても何もない空間となる。空っぽの1階となるのだ。
わたしたちは身元保証とするのに、冒険者の登録をすることを勧められた。
バーカードさんたちと一緒に登録することにした。
でもその前に野菜を売ろう!
村の分は帰りにまた獲っていけばいいからね。
野菜は新鮮だし、質がいいとのことで、いい値段で買ってもらえたようだ。
これで薪が買えると嬉しそうにしている。
冒険者登録をする前に魔石を買ってもらうことにした。
物凄い小さいのも買ってもらうことができ、そこそこの値段になったようだ。
ダレン君とアンちゃんの喜ぶこと。
バーカードさんたちと違う窓口で手続きをしようとしたところ、門番さんから話がきたのか、ユオブリアでの身分証を出してくれればそれで繋がりますよと言われる。
一瞬健ちゃんと目を合わせたけれど、何か疑われてもと思って、シンプルな元の世界のレンジャカードを出した。すると受付のお姉さんは、それを水晶見たいのに当てて、
「はい、こちらで手続きをしましたので、こちらで冒険者カードと同じ働きをします」
とにっこり微笑んだ。
え? 異世界だけど……共有できるんだ。
ダレン君が仕切りに羨ましがる。
年齢が10歳からなんだって、冒険者に登録できるのは。
アンちゃんたちが眠ってから聞いたんだけど、ダレン君とアンちゃんは本当の兄妹ではないらしい。身寄りのないふたりを流行病で亡くなったお父さんが面倒を見ていてくれた。ダレン君はお手伝い要員になれるけど、アンちゃんはまだ幼い。町の孤児院に入れようと大人たちは言ったそうだけど、俺が育てると言ったそうだ。男気あるね!




