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放課後レンジャー  作者: kyo
第3章 異世界に来てみたら

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第49話 異界人との遭遇

「健ちゃん、プペ」


 先に何かがいる。注意を促すと、二人とも頷く。わかっていたようだ。

 大きな蛇だ。何かをぐるぐるに巻いている。



《お、どこだ? また外か? 明るい》

《異世界編になってから細切れだな》

《続きの森の中って感じ》

《あの木、絶対日本じゃないな》

《CGに決まってるじゃん。あの鳥だって、あんなのないだろ》

《花だって。いつ見てもどこまでも〝異世界〟意識してんな》

《お、蛇》


 わたしが布団叩きで傷をつけると、蛇はこちらに首をもたげた。

 そこを健ちゃんがキックした。

 お、ぶっ飛んだ。


《つえーな、アリスも、クマも!》

《今回はプペの活躍はなしだな》

《あれ、あの蛇なんか巻きつけてないか?》



 動かなくなった。

 あれ、このぐるぐる巻かれているの、子供?

 ええっ? っと駆け寄り、巻いている尻尾をかっさばき、子供を自由にする。

 ぐったりしている。

 ポーションを口元に垂らした。

 ピクッとして、目を開ける。

 薄い水色の瞳だ。髪の毛は藍色。小学低学年ってところかな。

 ものすごく痩せているけど、頬は多少ふっくらしている。


《も、もしかして、初異世界人なんじゃ?》

《そういう設定だろうな》


 女の子だと思うけど、ズボンを履いていて。

 ぼてっとした大きめの服を紐でウエストのところで縛るスタイル。

 薄い布のものを何枚も着込んでいる。

 肌が見えるところが赤くなっている。見ていても寒い。


「あ」


 わたしたちを見て、なんか軽くパニックを起こしてる?


「蛇ならやっつけたから平気よ」


「へ、ヘビ?」


 日本語に聞こえたけれど、恐らく違う言葉じゃないかなと思う。口の動きと聞こえる言葉の数っていうか、違う気がする。



《なんて言ったんだ?》

《芸細かいなー。異世界語なんだろう。アリスとクマはわかってるみたいだけど、視聴者には相変わらず置いてきぼりだ》

《戦闘終わったから、そろそろ切れそうだな……》



「あなたたち、街の人ですか? 村には何の用で? 助けてもらってありがたいけど、村にはもう本当に作物もお金もないんです!」


 目の端にじわっと涙が滲みだす。

 わたしは健ちゃんと目を合わせた。


「わたしたち街から来たんじゃないわ。えっと、それに食べ物は持っているから大丈夫だし。えっと、あなたダンジョンってわかる?」


「ダンジョン?」


 その子は目を大きくした。


「ダンジョン、魔物の住処ですよね?」


 まぁ、そうかなと頷く。


「わたしたち他の国でダンジョンに入ったの。そして出てきたら、見知らぬ場所に出ちゃったのよ。それでここがどこかもわからなくて、どこか聞きたくて、人と会いたかったの」


 今の説明で合ってるよね?と健ちゃんを見上げれば、微かに頷く。


「ええっ。ダンジョンってこの辺にはないはずですけど」


 わたしたちはダンジョンから出て3日ほど歩いたというと、少女は起き上がって、村長さんに言わなきゃと焦り出す。


「じゃあ、お兄さんも、お姉さんも、街よりもっと遠くから来たのね?」


「ええ、すっごく遠くからね」


 そんな話をしているうちに、少女の緊張が溶けてきたみたいだ。

 改めて魔物から助けてくれてありがとうとお礼を言われた。

 プペに怯えたけれど、わたしはテイマーで、プペと仲良しなところを見せると、プペを撫でた。腰がひけていたけど、一度触れてしまえば、可愛いと言って何度も撫でている。

 わたしたちはダンジョンのことで大人と話したいから、一緒に村に行ってもいいかと聞いて、一緒に行くことにした。


 

 1時間ぐらい歩いたかな。こんな小さい子なのに、すごい。獣の足音を察してすぐに隠れたりする。


「わたしは優梨。あなたのお名前は?」


「アン」


「アンちゃんか。アンちゃんは村から一人で出てどこに行ってきたの?」


 尋ねるとアンちゃんは唇を噛んだ。


「今年はあまり作物が取れなかったの。それで冬になる前に少しでも食べ物を取りに森に来るんだけど、兄ちゃんが病気になって、私一人できたの」


 本当は子供一人で森に入るのはいけないことだそうだ。


「アンの村に冒険者っているか?」


「うーうん、いないよ」


 わたしと健ちゃんは顔を見合わせた。


「アンちゃん、街って遠い?」


「7日ぐらいかかるよ」


 なるほど〜。

 ダンジョンから4日ぐらいの位置に街がありそうだ。

 そっちに行って、冒険者を連れて行かなくちゃ。

 とりあえず、アンちゃんを村に送り届けて、街の場所を教えてもらおう。


 アンちゃんはほっぺを真っ赤にしている。薄い布地の服を重ねた服。獣の皮で作られたような、けれどボロボロのブーツ。手はあかぎれしていて、荷物は持っていないように見えた。


「食べられるものは何か見つかったの?」


 アンちゃんは首を横に振る。


「罠にもかかってなかった」


 そっか、罠を仕掛けていたのか。でも獲物がいた場合、それをどうやって持ち帰るんだろう? 袋みたいのは何もない。


「あ、村だよ!」


 少しずつ開けた場所になり、腰まで行かないような木で作った柵がある。

 動かせる柵があり、そこから入れるようだ。

 昔話に出てきそうな、こじんまりした村という感じ。




 お、大人発見!

 ずいぶん大きな人。やっぱり薄い布を何枚も重ねて着ていて、わたしたちを見るなり、大声をあげた。


「アン、そいつらは何だ?」


「ユーリとケンだよ。ダンジョンのことを知らせに来たんだって」


 アンちゃんが走り寄る。


「ダンジョン?」


「はじめまして、ケンです」


 わたしも慌てて健ちゃんに続いた。


「はじめまして、優梨です」


「何者だ?」


「俺たちは商人です」


 え?


 わたしは驚いて健ちゃんを見てしまった。


「商人?」


「作物や素材が取れるダンジョンに入って、素材を集めていました。中が揺れて、ダンジョンから出たら見知らぬ場所に出てしまったんです。ここはユオブリアとは違いますよね?」


「ユオブリア? ユオブリアっつったら、海を渡ったとんでもねー、遠くだぞ」


 やはり、大陸も違いそうだ。


「ここはツワイシプ大陸ではないですか?」


「ツワイシプでもねーよ。ここは島国だからな」


 ……島国か。


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