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放課後レンジャー  作者: kyo
第2章 相棒

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第35話 調査④処世術

 先ほどまで皆さんの怪我人への処置を、見よう見まねでやってみていたが、意識のない人はいなかったのだ。

 どうしよう、どうすればいい?


 助けを求めるように、ふと振り返れば、わたしの周りに物が散らばっていた。


「プペ」


 黄緑色の液体の入った瓶を、プペが吐き出したところだった。

 落ちているのは、魔石やドロップ品だった。

 確か、この黄緑色のは中級ポーション。


「プペ、これもらっていい?」


「プーぺ」


 いいと言ってくれた気がしたので、栓をポンと抜いて、口付近の顔に垂らした。少しすると、目が開かれる。

 さすが中級。患部や飲まなくても、効果が出るんだ。


「大丈夫ですか? わかります?」


 口の中でモゴモゴ何かを言った。


「……君は?」


「レンジャーです。調査に来ました」


「調査?」


「はい」


 その人は痛いのか顔をしかめながらも、体を起こそうとした。

 そして広場内の状況に気づいたのか、顔が青ざめる。

 指笛を吹いた。

 広場にいた魔物たちが、動きをとめてこちらを見た。


「お前ら、〝ここ〟に誰も入れるなって言ったよな? んなこともできねーのか? 何のために魔石いっぱい食わしたっと思ってんだよ!」


 魔物たちの目に一瞬だけ、辛そうな表情が映り込む。

 え。

 人と繋がりができると、こんな表情豊かになるんだ……。

 ってことは、コイツが変異種たちの原因ってことで。

 それを、何、今コイツなんて言った?

 誰もここに入れるなって命令してたってこと?

 それを守って、魔物たちはここを通ろうとしたレンジャーを襲っていたということなんだろう。

 それにしては5階は他のところにも散っていたけれど。

 あれ、こんなに守りの魔物がいるのに、なんでこの人、怪我したんだろう?


 冷静になりかけた頭が、次の飛び出したセリフに再沸騰した。


「早いとこ、みんなやっちまえ!」


 魔物たちがレンジャーたちに襲いかかる。


「今の言葉を撤回してください」


「あん?」


「早く!」


 わたしは相手の腕を捻って肩にのしかかる。

 お父さんに習わされてしぶしぶ行った護身術。応用でだけど、初めて使った。

 わたしより、2つか3つ上の男の人は呻いている。

 一瞬、怪我人だったっけと思ったけど、力は緩めない。

 相手の力量はわからないし、それに意識を回復させたことを後悔したからだ。

 みんなが今また襲われたのは、わたしがこの人を回復させたからだ。

 この人が叫んだことにより、元凶だとわかったし、一瞬動きが止まったのもこの人が起きたからではあるんだけど。


「あなたに中級ポーションを使う必要ありませんでしたね? 撤回しないなら、中級ポーションを使う前の状態に戻します」


「な、なにバカなこと言ってんだ?」


「わたしが回復させました。その元気になったあなたの行動は、わたしが助けた責任にもなります」


 彼は冷たい目でわたしを睨む。


「撤回してください」


 ……撤回しないね。


「プペ、中級ポーションだけ吸いあげて」


「プーぺ!」


 彼の後ろに回ったプペは触手でペタッと彼に触り、恐らく中級ポーションを吸い取った。


 わたしが家で牛乳をこぼしてしまった時のことだ。

 叫び声をあげていた。絨毯に匂いがつくと雑巾を取りに走りながら騒いだら、プペが絨毯に染み込んだ牛乳を吸い取ってくれたんだ。絨毯は湿り気もなかった。プペ、すごい! その応用だ。


 力が抜ける気がしたんだろう。


「わ、わかった。お前たち、やめろ!」


「プペ、もういいわ。ありがと」


 魔物は攻撃をやめ、こちらに集まってくる。


 プペはわたしの足元に入り込んだ。


「ニアさーん」


 わたしは首謀者はここだと、手をあげてニアさんを呼んだ。

 数えると31匹の魔物たち。

 彼の周りに集まり、彼に詰めよるわたしたちを威嚇している。


「レンジャー・爆裂丸だな? 〝爆裂配信〟は凍結した」


 ハッとして、顔まわりを探り、地面を叩き、何を探している。黒い機械……インカムをみつけ、大事そうに手を取り、その先っぽを指で叩いている。ドローンが低飛行してきた。

 何かが見えたのか、ガクッと肩を落とす。


「凍結って、何勝手なこと!」


「レンジャー規約に反してるだろ、当たり前だ」


 そんな話をしているうちに応援部隊がやってきた。怪我人の応急手当てをして、上に戻ることになる。

 拾い集めた魔石やドロップ品はマイケルさんが運んでくれるという。ラッキー!

 ポーションや中級ポーションがあったんだよね。

 これでわたしの目標は達成された!



 これからテイマーの彼に事情を聞くことになるけれど、活性化ではなく、テイマーによる変異種の増加で間違いないだろうとのことだ。その魔物をレンジャーにけしかけたというところが問題ありだそうだ。

 あ、プペの声、聞かれたなーと思い出した。

 うーーん、あの人言うだろうな、あれはなんだって。後ろ向きだったから、プペの姿は見えてなかったろうだけど。

 ………………………………。


 いいや、そん時はしらばっくれよう。

 真由やお姉ちゃんが得意なんだよね。

 真由はウルウルの目を作って「真由、知らないもーん」ってよく言ってた。

 お姉ちゃんは頬を膨らませて「なんで私にそんなこと言うの?」って怒ったりして。

 わたしは一緒にいて現場を見ていたから、やってたやんって言うたびに思っていたけど、ふたりはそうやって人の目を掻い潜っていた。

 で、わたしは思った。あれはかわいいから許されることなんだと。もし同じことをわたしがやったら、きつく問い詰められたと思うもん。

 同じようにやったら、……うん問い詰められるだろうけど。


 幸いあの人は意識が戻ったばかり。近くにはわたしとプペしかいなかった。

 わたしはレンジャーを襲うように言った言葉を撤回しろと凄んだことは認めよう。腕を捻って肩を押していたこともね。で、もう一度撤回しろって力を強めるフリをしただけだ。

 中級ポーションがどうとか言われたら、何を言われているのか意味がわからないとばかりに、聞かれたことをおうむ返しで聞き返すことにしよう。


 わたしは思ってもみなかった出来事には対応できないけど、考える時間があればそれは遂行できると思う。これは小さい頃から身と心を守るために、家族3人の顔色を常に窺ってきたわたしの処世術だ。


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