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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
五章・得物を手にした反逆者は、試し切りも兼ねて迷宮へと挑む

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反逆者と監視者は第九階層へと足を踏み入れ無双する

 


 気の良い鉱夫のオッサンと別れたシェイドとサタニシスは、それまでと同じ様に奥へ奥へと向かって移動し続けて行く。



 時折、休憩も兼ねて鉱脈と思わしき筋が露出している部分をほじくり返してみたり、思い出した様に飛び出して来る魔物を蹴散らしたりしつつ、階段を見つけ出しては階層主を蹂躙して、と言う事を繰り返して下へ下へと降って行く二人。



 流石にこの辺りまで降りてくれば、それまでの様に鎧袖一触にて十把一絡げに叩き潰す、と言う事は難しくなりつつあったが、それでも二人の実力からすればそこまで手こずる訳でも無く、また困難な相手、と言う訳でも無かった為に、着実に階層を踏破して第七、第八と階層を降って行く。



 …………そして、途中で流石に夜営を挟んだ翌日(推定)、彼らは遂に目的のブツである『アンテライト鉱石』の鉱脈が在る…………かも、知れないと言う階層である『第九階層』へと足を踏み入れていた。



 先に会ったオッサン曰く




『あんなの精製してアダマンタイトにする位しか使い途は無い』




 との事であり、彼らとしてもギルレインが何の目的にてソレを求めているのかは把握してはいない訳だが、然りとて彼の得物を見事に造り上げてくれた恩人からの頼み事である以上、途中で放り投げるなんて事は論外であった為に、こうしてこの場所に至っている、と言う訳だ。



 基本的にさっさと通り抜けてしまうだけの第一階層や、第六階層よりも下の鉱山へと至れるだけの戦力が在れば余裕で抜けられる為に閑散としていた第五階層とは異なり、本格的に人気の少ない状態となっている第九階層の内部を見回して行くシェイド。



 最近の階層ではお馴染みの自然洞窟型となっている内装であるが、ソコにはそこかしこに強力な罠が張り巡らされているらしく、彼が放つ魔力ソナーに無数の反応が返って来てしまっていた。



 おまけに、彼が放った魔力ソナーによって、逆に彼の存在に気が付いたらしい魔物達が、彼らが今いる階段付近の広場(ここは安全地帯では無い)へと向けて大規模に移動を開始している事も同時に反応として返って来ており、その膨大な量に思わずシェイドも顔をしかめる事となってしまう。



 一応、最先端攻略階層と言うことになってはいるものの、かつて到達した冒険者パーティーは、取り敢えずボロボロの状態でここに到着して付近を探索し、どんなモノが採れるのか、採れる可能性が在るのか、を探るだけ探って直ぐにトンズラする羽目になった、と言う過去が在る為に、基本的には間引きもされずに増えに増え続けてしまった魔物の群れのほぼ全てが、彼らを獲物と定めてその牙を突き立てんと迫りつつある、と言うのが二人の現状だ。



 既に、気配や足音処か吐息や臭いと言ったモノまで感じられる程の距離に迫りつつある魔物の群れ。


 このままどうにかして回避したとしても、確実にスタンピードとして溢れ出す事は間違いないであろう程の量を前にして、冷や汗を流しながら恐怖の感情を顔に張り付ける…………様な事は一切せず、逆に獰猛な笑みを浮かべて見せる二人。




「…………くくくっ、これまでの階層なら、下手をしなくても階層主として出て来てもおかしくは無かった様なのが、一々数えるのも面倒臭そうな位にゴロゴロと。

 これは、コイツの限界を知る良い機会、ってモノじゃないか。なぁ?」



「…………良いんじゃない?

 私も、そろそろ本格的に大暴れしてやりたいと思ってたのよねぇ。何処ぞの誰かさんが、私の欲求不満を受け止めてくれないから、こう見えて色々と溜まっちゃってるのよ。

 だから、ソレをわざわざ受け止めてくれる為に来てくれたんだから、精一杯『おもてなし』して上げるのが礼儀、ってヤツでしょう?ねぇ?」



「…………欲求不満云々についてはノーコメントで。

 だが、ソレ以外の点に関しては大賛成だ。

 向こうが殺る気なら、こっちも手加減してやる必要性はやはり無い。なら、きっちりかっちり始末を着けてやるのが慈悲ってモノだろうよ。

 …………処で、サタニシス?あんた、その気になれば()()()()()か?」



「当然。

 万が一、この『迷宮』の壁ごと相手を吹っ飛ばす、みたいな罠でも仕掛けられてたら怪我する事になるかも知れないけど、それでも大した事にはならないんじゃないのかなぁ?

 この場で可能性が在るとすれば…………まぁ、シェイド君に斬り付けられるだとか、シェイド君の魔術が暴発してお姉さんに向けての流れ弾が発生したりした場合なんかは、この玉のお肌が傷付いちゃう事になるかも知れないけどねぇ~?」



「了解。じゃあ、『あり得ない』って事で良いな?

 なら、二手に別れるか。その方が、さっさと片付く上に横取りなんかもされる心配が無くて、気持ち良く戦えるだろう?」



「えぇ~!?お姉さんとしては、君に私の勇姿を見て貰って、ソコで惚れさせちゃおうかと思ってたのにぃ~!?」



「…………はいはい、あんまりアホみたいな事言って無いで、そろそろ行動する!

 もう間近に来てるだなんて事は、そっちも分かってる事でしょうに!」



「ちぇ~っ!

 ………………まぁ、良いか。今回は諦めるとしておくよ。

 ……じゃあ、始めましょうか?」



「応ともさ!」




 最後に互いに視線を交わらせ、自然と拳を軽く突き合わせると、それまで立っていた階段から飛び降りて広間へと飛び込むと、直ぐ様左右に分岐していた洞窟めいた通路を突き進んで行くシェイドとサタニシス。



 一瞬だけチラリと背後を振り返ったシェイドの視界には、口許に獰猛な笑みを浮かべながら魔物の群れと相対しているサタニシスの姿が写り込んでおり、思わず内心で




(おーおー、怖い怖い)




 と呟きつつ、確実に好感を抱きながら自らの担当である前方へと向き直って大きく踏み出し、加速して行く。



 そして、あっと言う間に最高速度に到達すると、ソレを緩める事無く通路を突き進んで行き、瞬く間に魔物の群れへと接近して至近距離から得物による斬撃と魔術による火力を、遠慮も呵責もする事無しに叩き込んで行く。



 …………ぶっちゃけた話をすれば、二人にこうして強大な魔物の群れをどうこうしなくてはならない理由は特には存在していない。


 別段、ここで見過ごしては鉱山階層に居る連中が全滅してしまうから、と言う事を気にしている訳でも無いし、そもそも顔見知りが一人居る程度でしか無いのだから、そこまで気にかけなくてはならない様な間柄と言う訳でも無い。



 そもそも、ここの近くには『迷宮』都市として栄えている(らしい)ラビュリンテが存在している。


 当然、この手の事態に対する備えはされているハズなのだから、何がなんでもここで留めなくてはならない、と言う理由も特には無い。多少死人が出た処で、ここは所詮他国で彼らは異邦人なのだ。故に、彼らの知り合いがその『死人』となる事は、まず無い事なのだから。



 …………ならば、何故彼らは揃って戦う事を選んだのか?


 逃げ出す事も出来たのに、戦わずとも誰も責めなかったであろうハズなのに、何故?



 …………それは、戦う事を選んだシェイド本人にも、恐らくは分かってはいないだろう。



 別段、サタニシスに求められたから、と言う訳では当然無い。


 確かにノリノリで彼からの提案を彼女も受諾してはいたが、やはり事の決定権は彼にこそ握られている。故に彼女は参戦しはしたが、それは彼女の方から求めた結果の行動と言う訳では無く、寧ろそうして取られた行動には彼の意志が強く反映されている、と言えるだろう。



 …………では、何故彼は戦う事を選んだのか?


 実際に鎧袖一触に葬り去る事が出来ているとは言え、近付けば刃で両断し、遠ければ魔術で簡単に蜂の巣に出来るとは言え、消耗と負傷のリスクを負ってまで何故戦うのか?




 それは、彼自身も自覚していないのだろうが、ひりつく様な『戦闘』を彼自身が求めていたから、だ。




 …………今現在、表面的に見れば擦れて歪んでしまっているが、彼の根底に横たわる性根としては、そこまで好戦的では無く、寧ろ穏やかで闘争を厭う様な性質の持ち主であった、と言えるだろう。



 だが、既に彼自身が生来持ち合わせていたであろう『力』を取り戻して久しく、その上彼の両親は名声や研究欲が高じての行動であったとは言え、強大な魔物との戦闘に確かな愉悦を見出だす様な気質の持ち主でもあったグライス・オルテンベルクとシテイシア・オルテンベルクの両名だ。


 彼としては多大に不本意な事であろうが、彼の奥底には二人が持ち合わせていた『戦闘への渇望』が確かに受け継がれており、ソレが『全力を振るえる可能性の在る場面』に直面したが為に表に出てくる事となった、と言う事なのだろう。



 相対している相手が、強大な力を持った一個体であれ、数で相手を蹂躙する群体であれ、彼を傷付ける可能性を持ち合わせ、ソレに対して存分に己の力を振るいたい、と言う衝動が確かに彼の奥底には眠っており、ソレが今回の出来事に合わせて発露され、こうして彼は魔物の返り血を浴びながら殺戮の限りを尽くしている、と言う訳なのだ。



 …………実際、彼自身は知るよしも無い事柄なのだが、今現在の彼の姿を生前の両親が戦場で見せていた『英雄』としての姿を知っている者達が見れば、皆が口を揃えてこう応える事だろう。




『確かに彼は、二人の血を引く息子だろう』




 と。



 しかし、ソレを知るよしも無く、また誰からも指摘を受ける事が無かった彼は、その瞳を戦闘の愉悦で輝かせながら、身体を魔物の返り血で汚しつつ口許を半月に歪ませ、手当たり次第に魔物達を蹂躙し、その姿を魔石へと変貌させて行くのであった……。






 ******






 …………一方、彼が己の気質の一部を解放し、思う存分殺戮の愉悦に浸っていた、その頃。



 彼とは別行動をとっており、彼が向かったのとは別の通路を歩んでいたサタニシスが、彼と同じ様に口許を歪め、周囲に無数の巨大な魔法陣を浮かべつつ、今も自らの周囲へと魔物であった残骸を量産しながら一人呟きを溢すのであった……。





「…………まったく、彼と一緒に居る限り、全力で魔力を解放する事も出来ないのは少し窮屈よねぇ。まぁ、その分楽しいから良いのだけど、ね。

 ……それと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()には悪いのだけど、彼が貴方達の暴走を望んでいないの。

 だから、申し訳無いけど、貴方達にはここで終わって頂くわね?恨むのなら、こうして貴方達を産み出した『迷宮』と言うシステムを恨むか、それか弱かった自分を恨んで頂戴ね?」






………………衝撃の告白!?(以下『知ってた』禁止)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 暗く他に人がいない場所に飢えた男と女が1人ずつ…、ならばやることはただ一つ、そう—————————— ジェノサイドですぞ!! [一言] サタニシス氏はともかくシェイド氏の今の精神状態で、…
[一言] やっぱり魔王本人か……ww
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