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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
五章・得物を手にした反逆者は、試し切りも兼ねて迷宮へと挑む

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反逆者は名工と出会い、望む得物の製作を依頼する

 


 紙袋を抱えたまま、短い足にてズンズンと進んで行くゾンタークの後ろを追って行く二人。



 周囲は金属を叩く作業音が満ち溢れ、道は行き交う人々にて満たされていた為に、只でさえ低身長で見失い兼ねないのに加えて、比較的パッと見た限りの外見的特徴に差異が少ないドワーフ族である彼を見失わずに進むのはソレなりに骨が折れる作業であったが、流石にシェイドとサタニシスが振り切られる様な事態になる事は無く、ゾンタークの背中を追い掛けて進んで行く。



 暫くの間、そうして人気の多い表通りを進んでいると、次第に人気が少なく、それでいて金属を叩く作業音だけは大きく響いているらしい裏通りの方へと向かって行くゾンターク。


 必然的に、怪しくなって行く雰囲気を前にしながらも、目的地に辿り着く為に必要な事だから、と二人もソレを追い掛けて足を踏み入れる。



 そうして裏通りを進むこと暫し。


 とある工房の前にて、ゾンタークの足がピタリと止められる事となり、同時に『到着した』と言う確信が二人の胸中に確かに芽生えて来た。



 …………分野を問わず、ある一定以上の水準に達する程の技巧を持つ者は、ある種独特な気配を放つ事になる。



 そんな、なってからで無いと根本的に理解できない様な言葉が、思わず脳裏を過る事となる二人。


 未だにゾンタークによって紹介をされた訳では無く、実際に顔を合わせた訳でも無いながらも、そこに在る、と言う事実を感じさせるだけの存在感がその工房の奥から漂って来ており、これはもしかしたら、と言う期待を否応なしに予感させるモノとなっていた。



 とは言え、今回初めて訪れた二人と比べ、日々弟子として親方に師事して作業をしているゾンタークからしてみれば慣れたモノであるらしく、何て事は無い、と言わんばかりの様子にて扉へと歩み寄り、普通に押し開いて中へと入って行ってしまう。




「親方!親方!!

 ただいま帰りました!ついでに、お客も拾ったんで案内して来ました!俺じゃ手に余る案件みたいなんで、親方の方でお願いします!!」



「うるっせぇな!!そんな怒鳴んなくても聞こえとるわ!!

 それに、客だと!?儂の処に直接来たのならともかく、そうやってテメェが引き受けたと抜かすなら、テメェで世話見てやるのが筋ってモンだろうが!!儂は、そうやって教えたハズだぞ、このボンクラが!!!」



「…………いや、親方、俺言いましたよね?

 俺じゃあ手に余る案件だから、って。元々、俺の知り合いだったんでこっちに連れて来ましたけど、親方が嫌だ、って言うのな、仕方無いですけど他の工房紹介しなくちゃならなくなるんですけど?」



「だから、テメェがやりゃ良いって言ってんだろうがよ!!

 技術だけなら、テメェは既に独り立ちだって認めてやらんでもねぇくらいには在る、って前から言ってんだろうが!!

 そうやって、一々自信無さげにしてやがるから客も他に逃げるし、仕事もしくじるんだって前々から言ってんだろうがよ、このボンクラが!!!」



「だぁかぁらぁ!俺じゃどう逆立ちしたって無理な話を持ち込まれたから言ってるんでしょうがよ!?

 確かに、俺でもオリハルコンの扱い位は出来ますよ!?それに、武具として扱う程度に世界樹の素材を馴染ませる事も、核として魔石を組み込んで発動体としての機能を持たせる事も出来るでしょうよ、実際にあんたからの無茶振りでやらされたから!!

 でも、それらを()()()()()()()()で、しかも生半可な量の魔力を流されたとしてもびくともしやしないレベルで仕上げるだなんて事が、まだ俺に出来るハズが無いでしょうがバカなんですか!?!?」



「はぁ?何抜かしてやがんだテメェ?とうとう頭おかしくなりやがったか?

 テメェには、以前その組み合わせをする際の打ち方も教えたハズだろうがよ。それでいて『打てねぇ』だなんて寝言抜かしやがるたぁ、テメェ鍛冶屋嘗めてやがんな?あぁ!?」



「だから何度も言ってんだろうがよ!?

 そうやって形を作れたとしても、その後のクオリティーが伴わねぇんだよ!?

 それに、相手は俺が只の鉄で作ったとは言え、渾身の傑作を軽く魔力を流しただけで崩壊させた様な相手だぞ!?そんな相手が求める様なモノなんて、俺程度で拵えられるハズがねぇだろうが!?出来るんだったら、ここまでごねちゃいねぇよ!!!」



「………………は?テメェが作った一振りを、魔力を流しただけで崩壊させた、だと……?

 それって、アレか?少し前に、テメェがドヤ顔で自慢して来やがった、そこそこ出来の良かったアレの事か?

 アレを、儂とてそこそこ本気で掛からねば、再現出来ぬであろう一振りであったアレを、意図的に破壊する訳でもなく魔力を流し込んだだけで崩壊させた、だと?

 …………それは、当然、そやつが()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事なのだろう……?」



「…………だから、違うと言っているでしょう?親方。

 俺が連れてきたお客は、軽く試す程度にしか魔力を流し込んでいなかったんですよ。ホンの少し、インクの質を試す為に、水桶に垂らしてみるみたいな感覚で。

 …………ただ、あの時は、そうして垂らされた魔力(インク)多過ぎて(濃すぎて)、垂らした先の傑作(水桶)消滅する(破裂する)事になった、ってだけの結果しか残りませんでしたけど、ね……」



「………………お、おいおい、そりゃぁ、マジモンの化物じゃねぇかよ……」



「だから、俺は最初から言っていたでしょう?

 俺では手に余る案件だから、親方に話を持ってきた、って」



「…………チッ!

 仕方ねぇ。そう言う事なら、儂がやるしかねぇだろうな。

 それで?そいつはもう連れてきてるのか?来てるんなら、さっさと中に入れちまえ。他の連中に、余計なちょっかい掛けられる前にな」




 外で待機していた二人にも聞こえる程の声量にて行われたやり取りの後、ゾンタークが入り口から顔を出して入ってくる様に促して来る。



 それに従って工房の中へと踏み入ると、店舗型として幾つもの作品や武具が飾られている空間が三人を出迎える。


 様々な武具や道具か壁に掛けられたり、棚に飾られたりしている光景には、男の子としてのアレコレが擽られる為に思わず足を止めて鑑賞しようとするシェイドであったが、先導するゾンタークにとってはそこには用が無いらしく、さっさとカウンターを上げて奥へと向かってしまった為に、泣く泣くソレを諦めて同じ様にカウンターの奥へと向かって進んで行く。



 居住スペースに繋がっているのか、それともただ単に倉庫として利用されているのかは定かでは無いが、二階へと繋がっているらしい階段を横目に廊下を進んで行くと、開け放たれた分厚い扉とその向こう側に在る鍛冶場がシェイドの視界へと飛び込んで来た。



 素材を溶解させる巨大な炉に、頑丈そうな金床。


 大小様々なハンマーに、熱した素材を掴むヤットコ。


 細やかな細工を施す際に使用される道具類に、ソレを行う為の作業机。



 他にも、素人目には判断の付かない様な様々な設備や道具が処狭しと並べられ、混沌とした様相を呈しながらも何処か『秩序』を感じさせる趣となっているその鍛冶場に、思わずシェイドは目を輝かせながら見入ってしまう。



 そんな彼の様子に、ゾンタークは理解を示す様に頷き、サタニシスはまるでオモチャを前にした子供を見る様な生暖かい視線を送り、最後の一人である白髭を蓄えた老齢に在るドワーフは、意外なモノを見た、と言わんばかりの様子にて彼の事をしげしげと観察して行く様であった。



 暫し鍛冶場内部を見回していたシェイドであっが、流石に三人分の視線が集中していれば正気を取り戻すのも早く、羞恥心から僅かに頬を染めながらも咳払いを一つ行い、場の空気を変化させながら、この工房の主である、と推定出来る老人のドワーフへと声を掛ける。




「…………それで、俺の得物を打って貰える、と聞いたのだが、本当だろうか?」



「………………あぁ、そうだな。

 どうにも、聞いた限りでもコイツじゃ無理そうだからな。流石に儂が打つしか在るまいよ。

 …………しかし、話を聞いていた限りじゃあ、どんな怪物とお目見えする羽目になるかと思ってたが、案外と普通のガキじゃねぇか。あんた、少し魔力を放って貰っても構わねぇか?一応、どの程度なのか知っておきてぇからよ」



「………………やれ、と言うのならばやるが、どうなっても知らんぞ?

 取り敢えず、軽くだけやるから、そこから判断してくれ、よっ!!」



「…………あぁ?どっちかっつうと、全力でやってくれた方が良いんだが……って、なんだと!?」




 ━━━━ブワッ!!!




 …………そう、何かしらの音を聞いた様にも感じられる程の『圧力』が、彼の言葉と共に鍛冶場の内部を満たして行く。



 それにより、放っている本人であるシェイドは当然として、隣にいるサタニシスも平気そうな顔をしているが、以前見た時よりも圧倒的に増している圧力にゾンタークは腰を抜かしてへたり込み、『名工(マスタースミス)』ギルレインと推測される老ドワーフは、それまで腰掛けていた椅子を蹴り倒しながら立ち上がると、冷や汗を額に浮かべながらも爛々とした瞳にて彼の事を注視し続けて行く。



 そんな二人の様子を目の当たりにし、流石にそろそろ良いだろう、と判断して解放していた魔力を再び閉ざすシェイド。


 軽く、とは言え解放されていた魔力により、カタカタと音を立てて振動させられていた鍛冶場内部の道具が落ち着き、掛けられていた圧力が消えた事で顔色を取り戻して行く弟子のゾンタークを横目に老ドワーフが飛び出すと、咄嗟に構えた彼の手を握り締め、老いた外見からは考えられない程に生気を宿した瞳を彼に向けながら





「…………話以上じゃねぇか!?

 今ので、軽くだと!?ふざけていやがるのか!?こんなバカみたいな魔力圧が、全力で仕掛けられた訳じゃねぇだなんて信じられねぇ!!

 だが、そんな化物だからこそ、儂の武具を必要としてやがるって事は理解した!そりゃ、並大抵のヤツが作ったモンじゃ、碌に振るえもしなかっただろうよ!

 良いだろう。儂が、お前が、お前だけが扱えるお前専用の得物を打ってやる!そら、さっさと素材を出せ!希望を吐け!そうでねぇと、打てやしねぇからよ!!」





 と上機嫌そうに告げると、取ったままの彼の手を作業机の方へとグイグイと引っ張って行くのであった……。




…………どうやら、おじいちゃんに気に入られた模様

何故……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ベ〇セルクのドラゴンこ〇しの如き、ツヴァイハンダー 揺れる炎のような、フランベルジュ シンプルなデザインの騎士剣 中華の魂、青龍刀 優美さは随一、レイピア 刀剣でありながら殴り合いのように…
[一言] …………あとがきの最初の一言が「どつやら」になっております……
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