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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
四章・自由を手にした反逆者は得物を求めて国を渡る

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反逆者は『天才』を自称するモノを退ける

 



「…………お前が、何処の誰だろうと、どんな実力を持っていようと、どんな知識や見識を持っていようと関係無い。

 俺の雇い主は、お前を排除すべき害悪だと判断した。故に、このまま引かず、通行の邪魔を続けると言うのであれば、力ずくで排除させて貰う。

 これは、警告であると同時に最終通告だ。確りと考えてから、口を開く事を推奨する」




 そう告げるシェイドの背後で、距離を置いて停まる隊商を目の当たりにしたソレは、動揺も顕に彼へと言葉を投げ掛けて来る。




「…………ち、ちょっと待って下さいよ!?

 ぼ、ボクは、ただ単に、隊商に参加させて欲しいと訴え掛けただけじゃないですか!?

 そりゃあ、確かに『お礼』として隊商内部の問題点を指摘して差し上げようとは思っていましたし、ソレが一部の界隈では何故か不評でボクの評価が著しく貶められてしまっている事は耳にしていましたが、それでも天才たるボクが指導してあげた事を理解できずに利益を上げられない連中が悪いのであって、ボクの考えに賛同してくれた人々は大きな利益を━━━」



「…………ふむ、どうやら噂の存在である事は確定事項である様子だな。

 既に街を離れている事もあるし、今後の憂いを取り除く為にも、この手の妄想逞しいガキは排除して然るべきだろうし、依頼人からもそう言われている。

 残念だったが、ここでお前は始末させて貰う。恨むのならば、悪評が広まる程にやらかしておきながら、手口を変えずにいた間抜けな自分を恨む事だな」



 ━━━━ボッ!!!



「…………なっ!?クソッ!?

 ボクの話を聞こうともしないだなんて、コレだから低能で無能な現地人(・・・)は馬鹿で困るんだよ!いきなり攻撃して来るだなんて、ボクの基本的人権をなんだとおもってるのさ!?」




 会話の途中で『有害』だと判断された為に、その足元に再度『手加減した』魔術を撃ち込まれる事となる自称『天才』。



 その際に、何やらシェイドには理解不能な単語を複数並べた悪態を溢して行くが、ソレに気を取られる事無く魔術を行使する。


 流石に無抵抗かつ、目に見えた被害を与えられている訳では無い為に、即座に命を奪うつもりは彼には無く、また依頼人であるガウォルクが所属する商会の評判に気遣って、取り敢えず殺さずに無力化する、と言う事を念頭に置いて、最大限手加減した魔術を手足に対して狙いを絞って放って行く。



 威力の方は絞っており、最悪手足の一本位はもげる事になるかも知れないが、それでも死にはしない、と言う程度の威力は込められたモノであり、ソレを放つシェイドにも、最低限の手心を加えているとは言え、別に死んだら死んだで構わないか、と言う心構えにて放たれた魔術の数々。


 …………しかし、それらを放たれてもなお、『天才』を自称し、数々の隊商に不和の種をばら蒔いて来た『ソイツ』は、未だに理解不能な言葉を喚き散らしながら、五体満足な状態にて、シェイドの手によって放たれ続けている魔術を回避し続けていた。



 その事実に、魔術を放つ手を止める事はせずに放ち続けながらも、訝しむ様に眉を潜めて行く。



 …………確かに、言う通りに凡百な低級冒険者、とは言えない動きをしている。身体捌き、と言う点を見ても、確かに低級冒険者程度には収まってはいないとも言えるだろう。


 ……が、その程度だ。その程度でしか(・・・)無いのだ。通常であれば、まだまだ本気を出していないとは言え、彼が展開している弾幕を回避しきる事が出来る程の身のこなしを習得している様には、とてもでは無いが見えていない。



 だが、現実として、『ソレ』は回避に成功してしまっている。


 華麗に回避し切って無傷で身綺麗なまま、とは行かず、時に転び、時に地面を転がり、身体を泥と土埃と汚した生き汚さ丸出しの状態であったとしても、間違いなく致命的な攻撃は一度たりとも直撃を受ける事は無く、全て回避して見せていたのだ。



 わざと外している?否。ソレだけは、余程特殊な事情が無ければ有り得ないし、現在そんな事情が存在してはいないために、彼のプライドに懸けて否である。


 では、偶然外れている?否。コレだけの数の弾幕が全て外れるとは、到底あり得る事ではないし、もしそうであるのならば、幾らなんでも彼がそこまで外すハズが無い。


 ならば、魔術による幻惑か?これも、否。目の前の存在が魔術を行使していた形跡は無いし、彼を幻惑出来る程に魔力が多いわけでも、技量が優れている訳でも無い様にしか見えない。



 …………ならば、何故?


 何故、未だに五体満足なまま、ここまで攻撃から逃れる事が出来ているのか……?



 そんな疑念が彼の脳裏を支配する中、身体中を地面に転がった際に出来た擦り傷や、同じタイミングで着いた土汚れにて汚しながらも、必死な形相にて回避し続けていた『ソレ』が、忌々しそうな表情を隠そうともせずに足を止めずに悪態と共に吐き捨てて行く。




「…………クソッ!?何なんだよ、コイツ!?

 現地人がボクの先進的な考えを受け入れられない様な野蛮人だって事は分かってたけど、コイツは異常に過ぎるだろう!?

 なんで、()()()()()()()()()()()、しかも()()()()()()()()()を使って漸く回避し続ける事が出来るレベルの弾幕を、全力で展開しているとは言え当たればボクの手足が吹き飛びかねない様な威力で放てているんだよ!?有り得ないだろうが!?

 こんな事になるんだったら、最初からこっちを使っておくんだったよ!やれ、お前ら!!」



「…………?一体、何を……?」




 またしても彼にとっては理解不能な事を口走り始めるソレに対し、更に困惑を深める事と成ってしまっていたが、不意に背後に控えていたハズの隊商の方が騒がしくなっている事に気が付く。


 ソレに釣られる形で振り返ると、ソコには隊商を形成している馬車の集団へと向けて近寄りつつ在る、魔物の群れと思わしき集団とソレが巻き上げている土煙であった。



 彼らが通って来た、首都であるウィアオドス側から迫りつつある魔物の集団に対して




「…………おいおい、マジか……?」




 と、思わず、と言った風な感じで呟きを溢す事となってしまうシェイド。



 そんな彼へと向けて、集中が切れた事によって魔術の発動が終わった彼の背後から声が掛けられる。




「…………ふ、ふははっ!

 どうですか!?これで、ボクに集中している暇は無いでしょう?あの隊商の防衛の要は貴方なのでしょうが、貴方は先程までの魔術発動でもう魔力が残っていないハズです!なら、もう貴方は頼りにはならない。違いますか?

 ……ですが、この場を切り抜ける唯一無二の手段が残されています。当然、聞きますよね?」



「…………自分を隊商に迎え入れれば、直ぐにでも対処して見せる、とでも言うつもりか?」



「えぇ、正にその通りですよ!

 ボクであれば、この状況であろうと簡単に逆転して見せられます!何せ、ボクには上級上位の魔物を倒したと言う、何よりの実績が在るのですからね!

 あの程度の魔物の群れ、消耗した貴方達では不可能であったとしても、ボクであれば簡単に蹴散らせて見せます!ただし、ボクをあの隊商に参加させる事が、最低限の条件になるのは言わなくても理解できますよね?」



「………………」



「さぁ、判断を下して貰いましょうか!

 ボクが、ボクこそが!ボクだけがこの状況を打開出来るのだと、未だに理解できない訳では無いでしょう?

 今ならば、貴方にはボクに土下座して謝罪して貰う事になりますが、ボクを隊商に加える様にとリーダーに掛け合うだけで「いや、必要無いが?」…………は?」




「…………『天才』を自称する割には、頭の回転が鈍いみたいだな?

 なら、分かる様に何度でも言ってやるよ。お前は、必要無い、と」





 彼の返答により、憎々しげにソレが表情を歪め、更なる悪態を溢そうとするのと同時に、彼らの元へと髪を乱す程の突風が突如として襲い掛かって来る。



 ソレにより、咄嗟に目元を守る為に掲げられた腕を戻し、吹き込んで来た方へと視線を向けるとソコには、つい先程まで魔物の群れがいたハズの空間には()()()()()()()()()、ただただその場所には大きなクレーターのみが残される事となっていた。



 その事実に、唖然としながら目を丸くして固まってしまうソレと、小さいとは言え国営の街道を壊してどうするんだ……と軽く頭を抱えるシェイド。



 そうこうしている内に、ほぼ確実にソレをやらかした犯人であるサタニシスが、まるで投げられたボールを飼い主の元へも持ってきた大型の飼い犬の様な感じで、さも『褒めれ!!』と言わんばかりの様子にて駆け寄ってくる姿を目の当たりにしたシェイドが、再び先程まで展開していた術式を再度展開する。


 その上で、先程のモノよりも弾幕の密度を上げつつ手加減を緩める様に改変し、確実に当たる様に手心のランクを落としたモノに魔力を充填して行きながら、先程のモノとは別の意味で愕然とした視線を向けてくるのを無視して再び口を開き、こう告げる。




「…………ソレで?確か、あの時呟いてやがったよな?

『最初からこっちを使っておけば良かった』『やれ、お前ら』ってさ。

 つまりは、さっきのアレはお前の指図って事で良いんだよな?

 ……どうやったのか、なんて事には興味は無いが、お前みたいな危険分子を隊商に引き入れるメリットが、在るのか?在るのなら、お望みの通りに土下座だろうがなんだろうがやってやるが、どうなんだ?」




 その口調は至極冷えきっており、かつ殺意が透けて見える程のモノであり、その場に近付きつつあったサタニシスは後に




『あの場には絶対に踏み込みたく無いし、シェイド君からそんな声を向けられる事には絶対にならないようにしようと心に誓った』




 との証言を受ける事となるのであった……。




…………はて、何やら気になる単語がチラホラと……?

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― 新着の感想 ―
[一言] うっわぁ…コイツあのアホの同類かよ……。まぁよく言えば年頃の何処にでもいる様な普通の子供、悪く言えば自意識過剰で幼稚なクソガキが自分が住んでいた世界とは価値観など何もかもが違う異世界に来て、…
[良い点] 自分からボロを出しましたぞ。 ミンチ確定ですな。 [気になる点] この世界に来る日本人(?)は自分の我を押し付けるか、自分の杓子定規でしか世界を図れないのですかな…? 現実でも国どころか地…
[一言] たまに小説に出てくる、こういう日本人ぽい奴らはヤバい脳改造でもされてるのかと思ってしまう。というかそうであって欲しい
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