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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
四章・自由を手にした反逆者は得物を求めて国を渡る

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反逆者は道半ばにして呼び止められる

第二部兼第四章本編の始まり始まり~

 


 ────滅んだハズの魔族。アルカンシェル王国を襲撃する。



 そんな報せが他国にも知れ渡り、各国が対魔族との戦争に向けて協力を開始し、その準備に奔走し始めてから一週間程が経った頃。



 アルカンシェル王国の国土の中を、地面に落とされた一つの影が移動していた。



 その影は、他に道を往来する旅人や商人達よりも移動する速度が速い、と言う特徴が在ったが、何より他の異なる点として、その影の落とし主は他の皆の様に地面に足を着けて移動している訳では無く、彼らの遥か頭上を飛んで移動している、と言うモノを挙げる事が出来るだろう。


 しかも、地を行く者達が出す速度のソレとは、段違いにも程がある速度にて、地上の街道沿いに移動しているのだから、最早怪奇現象の一つとして数えられたとしてと、不思議では無いだろう。



 幾ら魔術が存在し、人の生活に寄り添っている世界であると言っても、本人の技量であったり、魔力量の関係であったり、空には空の魔物が生息していたりする為に、普通は行われない、と言う点に関しては割りと『超常現象の類い』である、と言われる事をやらかしてくれている張本人へと視線を向けて見れば、ソレは案の定ブラウンの髪の毛を風に遊ばせ、翠の瞳を鋭く(すがめ)ながらも強い意思の光を宿している一人の青年の姿が在った。



 …………そう、言わずとも知れた事かも知れないが、その影の落とし主こそ、アルカンシェル王国にて魔族を撃退し、その上で王国を見限って退去したシェイド・オルテンベルクその人である。



 既に首都であったカートゥを出立して久しい彼だが、実は未だにアルカンシェル王国内部に留まる事となってしまっていた。


 それは、何故か?



 理由としては、至極簡単な事だ。


 ただ単に、アルカンシェル王国の国土その物が、かなりの広さを持っているから、と言う事なのだ。



 元々、ドラゴンとも呼称される竜の最上位種であり、地域によっては神の一柱としても数えられていた『龍』が支配していた土地を、その眷属諸ともに建国王が討伐して人の手に奪い取って見せたのがアルカンシェル王国の始まりだ。


 それ故に、当時討伐された龍が支配していた土地はほぼ全て彼の王国のモノとなっていたし、周辺国も『龍の機嫌を損ねるのは……』と言う事から隣接していた土地の幾分かの実効支配を諦めていた節が在った為に、そこら辺も纏めて王国の領土となっていたのだ。



 その為に、人族が主導して支配する国家の中では随一の土地面積を誇り、かつ縦にも横にも長く広大な土地を持つ国家として力を蓄える事が出来ていた、と言う事なのだ。


 ……まぁ、もっとも。事の起こりの関係上、どうしても天然の魔力溜まりが各地に発生しやすく、その為に他の国土よりも魔物の発生や被害が多いために有効利用や開発が進んでいる訳でも無く、国土の広さの割には国が富んでいたり、国力が飛び抜けて高くなっている、と言う訳でも無かった様子だが。



 そんな理由から、全方向に無駄に広く、国土のほぼ中心地点に等しいカートゥから他国へと繋がる国境を目指そうと思えば必然的にソレなりに時間が掛かってしまう事になる、と言う訳なのだ。



 通常であれば、多頭立ての馬車を飛ばしに飛ばしても約半月程は掛かる事はざらに在るし、天候や時期や方向によってはもっと掛かる事も普通に在る。


 彼の様に、ほぼ七日程度で国境近くまで移動して見せる、と言う事は割りと人間離れした偉業であったりもするのだが、本人としてはその様な意図はあまり無さそうだ。



 …………何せ、普通に歩いて行くよりは楽に済む(彼の場合は消費魔力と自然回復分の魔力が大体同じくらい(トントン)か、もしくは回復する分が少し多い位になる為)上に、特に同行者が居る訳でも無く、急がなくてはならない理由が何かしら在る訳でも無いので、これでも比較的のんびりゆっくりとした旅路である、と本人としては認識しているのだから。



 そんな訳で、本人としてはほのぼののんびりと空を飛び(実際には鳥か何かかと見間違われる程度の速度は常に出ていた)、時折襲い掛かって来る空に住む魔物を撃退し(常に飛んでいる為に基本的に討伐出来ないモノばかりで強力&貴重なモノばかり)、夜には地面に降り立って結界を張った上で焚き火等を駆使して料理を作ったり、寝袋等で確りと睡眠を取っての悠々自適な快適旅(注※ソレが出来るのもソレを『快適』と呼べるのも主人公だけです)を送っていた為にソレなりに時間が掛かってしまっていたが為に、未だにアルカンシェル王国国内に留まる事となってしまっている、と言う訳なのだ。



 とは言え、それも今日か、もしくは明日までの事。


 何故なら、国を退去する際に立ち寄ったギルドにて入手した(強奪した)地図に依れば、もうすぐ目指していた国境付近に到着するハズだから、である。



 基本的に、詳細な地図は軍事力に繋がる為に、一般には市販されていない。


 が、魔物の暴走や天災による地崩れ、大規模な盗賊団の討伐と言った諸々の仕事に於いて、地形や現場近隣の村や町、と言ったモノの情報は重要な意味合いを持つ事となる。



 なので、一定以上の大きさをもつギルドの支部には、その周辺地域のある程度詳細な地図と共に、国全土を記した大まかな地図が国から貸与される事となっているのだ。



 そして、ソレを知っていたシェイドは、例の大会で授与される予定であった賞品の内、目を付けていたモノ(世界樹の枝、オリハルコンのインゴット、百年竜の魔石)を強奪すると、そのついでに、とばかりに常備されているそれらの『写し』を一組ずつちょろまかして来た、と言う訳なのだ。


 流石に、原本を持ち出すと後々面倒臭い事になりかねなかったし、その上国から貸与されている原本は特定の段階を踏んでからでないと、貸与された建物から持ち出した場合はソレを成した者に対して激烈な呪いが掛かる様に呪詛が組み込まれているので、ソレに対処するのが面倒だっただけ、とも言えるのだけれど。



 とまぁ、経緯は置いておくとして、そうやって無事(?)地図を手にしていた彼は、そこに記されている地形や街道に沿う形にて空を行き、時に曲がりくねる道を真っ直ぐ突っ切り、時に上下の激しい丘を真っ直ぐ横切り、時に谷や崖と言った切り立った地形を無視して真っ直ぐ飛んで移動した為に、ここまでの短時間にて国外への脱出を果たす算段を付ける事が出来た、と言う訳だ。



 後は、一応目指す先の国との国境線に設えられている関所にて正式な手続きを踏み、何処に出しても恥ずかしく無い状況にてアルカンシェル王国から退去するだけ!となっていたのだが…………




「………………アレ、どう見ても、俺の事を認識してやがるよな……」




 …………のだが、彼は今、少々不思議で困った事態に直面していたのだった……。







 ******







 …………事の起こりは、少し前。


 彼が、空を飛んだ状態のまま、現在地を確認するべく『道具袋(アイテムバッグ)』から地図を引っ張り出していた時の事であった。



 一緒に出した方位磁石の魔道具と共に軽く周囲を見回し、これまで辿って来た道筋や近辺の地形から現在地を割り出そうとしていた正にその時。


 偶然とは言え、地上に落とされた彼の視界の中に、とある影が写り込む事となったのだ。



 …………その影は、パッと見た限りでは、距離の関係も相まって、彼の視力を以てしても『普通の旅人』である様にしか見えなかった。


 と言うよりも、そこは近くに村や町が在る様な場所では無く、また狩り場や採取の為の場となりそうな森が近くに在る訳でも無い、正に旅人が道中に通り掛かる程度の場所でしか無い為に、必然的に旅人だと判断をせざるを得ない、と言う事情により、そう判断した訳なのだが。



 そんな、地を行くハズのその人影は、彼がその場で地形を確認し始めた時から、その場を動こうとせず、何故か止まったままそこに佇んでいた。


 てっきり、休憩でもしているのか、と特に疑問にも思わずにいたのだが、問題は地形の確認を終えて地図や道具を仕舞い込み、さぁ出発しようか!となった時に発生した。



 …………そう、何故かその地上の人影が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。



 ソレには、余りに非現実的であり、思わず彼をして自らの背後を確認する、と言う事を行う羽目になってしまったのだ。



 それは、何故か?


 言ってしまえば、簡単な事。彼が、地上から認識される事は有り得ないハズだから、である。



 基本的に、この世界では『飛行』と言う行為は『実現可能だが非効率的に過ぎる』と言う認識であり、一般的な行動とは取られていない。


 極一部の高度な技量を誇る魔導師が、早急に問題を解決せんとして、稀に行われる様な行為である、と言う程度の認識でしか無い。



 ならば、人々は地に落ちる影を見て、上空に人が居る、と思うだろうか?


 実際に人が居たとして、呼び掛けたり何なりとした処で、ソレに応じると思えるだろうか?



 …………基本的には、その双方共に『否』である。



 片や、そもそもがソコに人が居る可能性が在るとは認識していないが故に。居ても、ソレは魔物である、との認識故に、だ。


 そして、もう片方も、基本的に魔力消費の激しい魔術を行使し、更に本来のテリトリーである空にて遠慮も呵責も無く獰猛に襲い掛かって来る魔物を相手にする危険性に目を瞑ってまで速度を求めての行軍なのだ。呼び止められたからと言って、無関係なモノを相手にして足を止める様な無駄を行うとは、とても思えはしないだろう。



 故に、基本的に上空へと向けて呼び掛ける事も、ソレを受けてそちらに向かう様な事も無い為に、その様な事を無駄に行う様な者は居ないハズなのだが……




「…………でも、やっぱり俺の事を認識して呼び止めようとしてやがるよなぁ……あの様子じゃあ、確定っぽいしなぁ……」




 なのだが、その場から横方向にスライドすれば慌てた様子で更に両手を振り回して存在をアピールし、思わず『俺の事?』と自らを指差して見れば、遠目に見ても明らかな程に大きく頷いて見せるだけでなく、両腕を使って大きく『○』とジェスチャーをして示して見せたのだ。


 ……これは、例外的に彼自身が捕捉されており、明確に彼個人に対して何らかの用事が在っての呼び掛けなのだろう、と断言せざるを得ない。



 そう判断したシェイドは、数瞬応えるか否かの判断を下す為に思考を巡らせるも、やはり呼んでいるだけで攻撃を加えて来ている訳でも無いのだから、と結論を出し




「…………はぁ。まぁ、仕方無い、か……」




 との呟きを一人溢してから、ゆっくりと地面へと向かって降下して行くのであった……。




果たして、彼を呼ぶ人影とは一体?

新キャラの予感?

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― 新着の感想 ―
[一言] 写しで一組ずつでも面倒なことに…、もう既にそれ以上に面倒なコトになっていますな!! アレは何だ⁉ 鳥か? 飛行機か? イヤ、反逆者だ!!
[気になる点] いきなり魔王様のご出勤かな?(笑)
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