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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
三章・反逆者は満を持してその牙を突き立てる

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反逆者は目当ての賞品に期待を馳せるも、乱入者に場を掻き乱される

丁度書き始めて早二月となりました


コレからも、よろしくお付き合い頂ければ幸いですm(_ _)m

 



『…………では、コレより表彰式に移りたいと思います。

 優勝者は、前へとお進み下さい━━』




 試合の終わった闘技場に、アナウンスが響き渡って行く。



 一応『伝統在る武闘大会』と言う体で開催されている催しである為に、行程の一つとして優勝者に対する表彰やら何やらが用意されていた模様だ。


 通常であれば、大会で一番……とは行かないまでも、ソレなりの盛り上がりを見せる事となる場面の一つであると言えるだろう。ソレが優勝者が王族である、と言う事ならばなおのこと、だ。



 …………だが、会場や観客席は、その予想に反して静まり返り、お祝いムード、と言うよりは寧ろ、お通夜でも開いているかの様に、重苦しい空気を伴った沈黙が蔓延する事となっていた。



 それは、参加者と授与者に別れている王族にも当てはまっており、レティアシェル王女は授けられた記念品のトロフィーを苦い顔をしながら受け取り、ソレを渡した国王はとある一点を忌々しそうに睨み付けていた。



 …………その一点に居た者こそ、この場が祝賀モードになる事を妨げただけでなく、会場全体の空気を重苦しいモノへと変える原因を作った張本人であり、今大会の準優勝者として舞台に上げられているものの、最初から最後まで何かのカタログを眺めながらニヤニヤとし続けていたシェイドその人であった。



 厳粛かつ格式在る催しの大締めであっても、特に意に介する素振りを見せない彼に対し、準決勝まで進んだ事から彼と同じく表彰式に出席する事を許可されていた(彼の場合は準決勝者なので強制)二人の内、それまで隠していた感情を隠そうともしなくなった為に愛しそうな視線を彼へと向けているナタリアでは無く、額にシワを寄せて忌々しそうに彼の事を睨んでいたシモニワが、最早我慢ならない、と言わんばかりの様子にて彼の肩を掴みカタログを取り上げようとする。



 …………が、当然の様に、視線も向けずその場から動く事もせずに伸ばされた手を回避し、バランスを崩した瞬間に足を払われて一人で勝手にその場に転ぶ事となり、周囲からは『何やってるんんだ、アイツは?』と言う訝しむ様な視線と共に、愚か者を見た際に投げ掛けられる冷笑が彼へと目掛けて降り注ぐ事となる。



 ソレによって羞恥心を煽られたらしいシモニワは、急いで立ち上がり、着ていた上質な衣服から埃を払うと、顔を怒りと羞恥心とで染め上げながら彼へと小声で話し掛ける。




「…………おいっ!式の途中なんだぞ?国王様の見ているのに、何でそんな無作法な事が出来るんだ!?

 最低限、何かを見ながら読みながら、なんて事は止めろ!失礼に当たるだろうが!?」



「………………失礼云々を言うのであれば、同じ様に静粛さを求められる進行に於いて、一人話しているお前はどうなるんだろうな?」



「………………ぐっ!?」



「ソレに、俺のコレは向こうにも許可を取っての行動だぞ?まぁ、ソレを許可しないと表彰式は欠席するぞ、と脅したのは間違いないが、ソレでも許可が在るのには代わり無い。

 それで?無許可で不躾な発言をしてくれてるお前は、一体何を咎めようとしている、と?言ってみろよ、雑魚」



「……………………ざ、雑魚、だと……っ!?」



「俺に手も足も出なかった癖に、ソレで『雑魚じゃない』とか抜かすつもりか?もう少し、まともな言い訳を考えてから口開けよ、雑魚」




 彼からの辛辣な言葉により、憤怒を顔に浮かべながらも反論を口にする事も出来ず、不出来な唸り声を漏らす事しか出来ずに引っ込む事となってしまう。



 ソレを鼻で嗤ったシェイドは、既に意識を手にしているカタログへと再び視線を落とし、ウキウキとした表情にてページを捲っていると、今度は残る一人が彼の横へと近寄ってきて、その耳元へと囁き掛けてくる。




「……ふふっ。シェイド君、今とっても楽しそうな顔をしていますよ。

 何か、そんなに欲しいモノが賞品として登録されていたのですか?」



「………………まぁ、否定はしない。

 いずれ手に入れる予定のモノも多いが、やはり手に入れられる時に手にしておかないと、中々機会に巡り会え無いだろうモノも在るんでね。どれにしようかと悩んでいるよ」



「……時間さえ頂けるのでしたら、私が入手して差し上げましょうか?

 家の力を使ってでも、確実に入手してプレゼントして上げますよ?」



「…………割りと魅力的な提案だが、残念ながらお断りしておくとするよ。

 流石に、今日明日で『オリハルコン』やら『世界樹の枝』やら『百年竜の魔石』やらを取り寄せる事は難しいだろう?」



「…………流石にそれは、私では無理ですねぇ……。

 最高硬度を誇り武具の素材としては最高評価を受けている稀少金属に、魔術の発動体の素材として用いるのに最適との呼び名も高い世界樹の一部。彼の建国王が倒した『龍』の下位眷属とは言え百年の時を生き抜いた『竜』の魔石とは、中々に豪華な賞品が並んでいたみたいですね?

 その内の一つ手にするだけで、私の家程度であれば傾く事になりかねない程の値段は当然としましても、機会が無ければ決して手には出来ないモノばかりです。殿下が参加されていたから、とは言え、学校側も良くそこまでの品々を集める事が出来ましたね?」



「あぁ、そう言う訳で、折角だが提案はお断りさせて貰おうか。

 元々、優勝すれば全部貰える、って約束だったんだが、取り敢えず向こうの一番の目的は達成出来てるハズだから、二つ三つ程度は貰って行っても構わないだろうよ」



「…………怖いので詳しくは聞きませんが、一体何をどなたと約束していたのでしょうか?

 余程の事では無いと、そのカタログに乗っている品々を『全部差し出す』とはならないハズですよ?

 先程名前を並べられたモノ以外にも、求めても機を逃せば二度と手に入らない、と言う様なモノも幾つか見受けられましたからね?」



「そこは、あまりほじくらない様に。一応、ナイショの約束、って事になってるから。

 もしほじくるつもりなら、俺が後でプチっとする事になるけど、ソレでも構わないからほじくってみるか?」



「いいえ、止めておきますね。

 私も、シェイド君になら手に掛けられても良いとは思いますが、流石にお情けも頂けていない今ヤられるのは少し勿体無いので、ここは大人しく引かせて頂きます」



「その方が良い。

 俺も、無関係な輩ならともかく、顔見知りの相手を好き好んで消したくは無いんでね」




 その彼の言葉により、少々頬を膨らませて拗ねた様でありながら、それまでの大人びた振る舞いとは裏腹な年相応で大変に愛らしい表情を浮かべたナタリアであったが、忠告に従ってソレ以上の追求を断念して元居た位置へと戻って行く。



 その際に浮かべていた表情により、以前よりも一層その執着を深めたのか再びシモニワが彼女に対して言い寄ろうとしていたが、最早貴族家としての体裁を装う事に価値を見出ださなくなっていたナタリアによる無表情での拒絶によって、何故かそれまでの憤怒に加えて憎悪すら感じさせる視線を彼へと向けて投げ掛けてくれる様になっていた。



 そうこうしている内に表彰式は進み、後は閉会の宣言が下されるのみとなる。


 なれば、後は適当な処でランドン校長を襲撃するなり、多少待って向こうから接触してくるのを待つなりすれば、目当てにしている賞品を入手する事が出来るだろう。



 先に挙げた三つが一番の目玉であり、かつシェイドが最も欲する品々である、と言える。


 他の賞品も中々に魅力的なモノばかりであった。モノによっては、彼以外の者であれば即座にそちらを選んだであろう品も在り、そちらも選べたのであれば選んでいたのだろうが、やはり今必要としているモノとしては先の三つが揺るぎ無いモノとなるだろう。



 ……とは言え、流石に現状ではその三つを素直にねだったとしても、入手するのは困難だろう。


 何せ、元々の目的であった『冒険者ギルド、並びに育成学校の価値を王族へと再確認させて国内でのパワーバランスを取り戻す』と言う事は、先の試合にて思う存分力を見せ付けた事によって無事に果たされている、と見て良いハズだ。流石に、あれだけのモノを見せられて、彼が所属している(と言えなくも無い)組織に対してデカい態度を取る事も、嘗めた真似をする事も出来ないハズなのだから。



 …………しかし、約束した内容としては『優勝する』と言う事になっていた。ソレにより、王族に対して完璧にマウンティングを取りたかったランドン校長とラヴィニアに取っては予想外と言わざるを得ない結果だろう。


 正直、準決勝しているし大本の目的は達成したのだから充分なのでは?とも彼は突っ込みたい処であるが、あくまでも『優勝者は当校or当ギルドに所属している者である』と言う事を言いたかったのだろう事は容易に想像できるので、やはり約束の通りに全て、とはならない可能性が高い。



 ならば、取り敢えずオリハルコンは最低限確保するとしても、世界樹の枝は最悪自身で取りに行けば良いのだから、やはり遭遇しないと入手出来ない百年竜の魔石を優先するべきか、と結論を出した彼が、舞台から国王が退去したのとタイミングを同じくしてカタログを閉じた正にその時。





 唐突に、舞台の中央へと、フードを目深に下ろした人影が現れた。




 気配も、予兆も無く、本当に唐突に姿を現したその影に、俄に会場全体が騒がしくなって行く。



 会場を警備していたハズの騎士や国軍が右往左往し、指揮官と思われる者達が実際に担当していた者達へと怒鳴り声を挙げたりする最中。



 舞台に現れたその人影は、徐に被っていたフードを取り去り、その()()()()()()を衆目へと晒しながら、たった一つの要求を会場へと響き渡らせるのであった……。





「…………某、栄え在る魔王陛下の部下の一人、隠密方頭のズィーマと申す者。

 此度の来訪、そなたらへと危害を加える事が目的に非ず。此度は、魔王陛下よりそなたら人類に対する宣戦布告の勧告並びに、『とある人物』の見定めを兼ねての来訪である。

 故に、今はそなたらに手出しはしないと約束しよう。その代わりに、この場へと『勇者』を呼び出して貰う。コレは、提案では無い。そなたらよりも上位の者による、命令なのだと心得られよ」





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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、アレですな。 某教師を暗殺する作品のクラス対抗での最後のテスト終了後の空気になっていますな! [気になる点] 今回の大会はお偉いさんが強く開催を希望したとのコトでしたが、優勝賞品の用…
[気になる点] 魔族の言う『勇者』とは?1.シモニワ2.王女3.シェイド4.教師。不穏な空気を感じたから第一候補から逃れる為に棄権したのかな?
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