表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
三章・反逆者は満を持してその牙を突き立てる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/226

反逆者は武闘大会にて、復讐対象の道化と相対する

 



「…………断る」




 シェイドの口から発せられた一言により、その場の空気が凍り付く。



 それは、レティアシェルによって捩じ伏せられ、未だに地面に倒れされられた状態のままながらも彼女の話を聞いていたらしく、まぁコイツなら良いよコイツなら、と言う『お前何様目線だよ?』との総ツッコミを受けそうな態度を取っていたシモニワは当然として、直接断られたレティアシェルやその背後にて控えていた三人も例外無く衝撃を受けて固まってしまっていた。



 そんな五人に対してシェイドは、追撃となる言葉を放つ。





「…………目的も、理由も話さず、それでいて人類の為になる活動?バカも休み休み言えよ、アホらしい。

 そんないい加減な誘い文句で釣れるヤツなんてそうそう居やしないんだから、少しは考えてモノを言う事だな。

 どうせ、参加するのならば武闘大会でわざと負けろ、か、もしくは、ソイツと結んだ誓約を解除しろ、だとかの条件を付けるつもりだったんだろうが、そもそも話に乗られないって可能性を考慮しておくべきだったな」



「…………ま、待って下さい!妾は、嘘など口にはしておりません!信じて下さい!?」



「じゃあ、逆に聞くがね自称王女様。

 何も無い処からパッと出て来て、これまで俺が置かれていた処遇を知りながら頭を下げるだけで事を終わりにしようとし、更に散々一方的に突っ掛かって来てくれてる阿呆を無理矢理許させた上で、ソイツを頭に据えた集団に目的も説明せずに所属しろ、と言われて頷けると思うか?

 思うんなら、俺はあんたの頭の中身を心配してやらざるを得なくなるんだがね?」



「……で、ですが!?妾達には、貴方の様な有用な方を一人でも多く集めなくてはならない理由が!?」



「……だから、その理由を、まず最初に説明しろ、と言っているんだが?

 ソレを為さず、現実的な賠償もせず、それでいて上辺だけの言葉を整えておきながら実質的には『使えそうだから手駒として使ってやる、ありがたく思え』だと?そんなモノ、俺でなくても出される答えは変わらないと思うがね?」



「………………」



「……ハッ!図星を突かれたら、今度は黙りか?

 なら、もう俺に用事は無い、と勝手に判断させて貰うが、構わないよな?」




 僅か数手で反論を封じ込められてしまった自称王女のレティアシェルが言葉を失った事を切っ掛けとして、その場にて踵を返すシェイド。



 呆然と立ち尽くす彼女の背後から、何か言いたげな視線を三人が投げ掛けてくれてはいたが、ソレに付き合ってやらなくてはならない理由が彼に在るハズも無く、そのまま当初の目的を果たすべく歩みを進める彼の足を止める事は、結局誰にも出来はしなかったのであった……。






 ******






『さぁ、ではいよいよ、本選へと駒を進めた最後の参加者達の入場です!』




 ――――自称王女に遭遇した翌日の朝、国王による本選開会の宣言に続く形で大闘技場に響き渡るアナウンスを耳にしながら、シェイドの姿は早くも参加者控え室に在った。



 まだ始まってから十分も経ってはいない為に若干早すぎる気来が無いでも無いのだが、これは大会の運営上の都合によって開会の宣言よりも遥かに早く、この大闘技場に集められる事となってしまったから、と言うのが身も蓋もない真実、と言うヤツだ。



 何でも、本選の開会が宣言されてから勝ち抜きの組み合わせを決めてしまっては時間が掛かり過ぎる為に、開会が宣言されるよりも前に組み合わせを決めてしまう為に、ほぼ早朝と呼んでも過言では無かった時間帯に呼び出される事となってしまったのだそうだ。


 …………お陰様で、若干ながらも寝不足の気が彼へと襲い掛かっており、今もたった一人しかいない参加者控え室にて生欠伸を噛み殺している処であった。




『初戦、最後の組み合わせ!

 まず、東側から入場するのはこの方!ガイフィールド学校の生徒会長を務める、若き天才!かのゲドリアス家の次期当主の座を確約された、貴公子!天から二物も三物も与えられた、文字通りに『選ばれた人間』!

 クラウン・グル・ゲドリアスゥーーー!!!!』




 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!




 比較的静かになる様に設計されているハズの控え室にいてもなお、耳をつんざくその歓声に顔をしかめるシェイド。



 観客席は、これまでに登場した王女(自称では無く本物であった様子)や他の参加者達の『熱い戦い』によって既にヒートアップしており、最後の最後で出てきた美形の貴公子が見せるであろう華麗なる勇姿に期待して、最高潮に沸き上がっている様子だ。


 ……実際に、観客席に居て、同じ様に観戦出来ていたのであれば、多少はそのテンションにもついて行けたのかも知れないが、参加者は試合が自身の試合が終わってからでないと観客席への移動は出来ない、と止められてしまった上に、そもそも次が自身の試合である以上、控え室から遠くには行けないのが道理と言うモノである為に、比較的低いテンションのままで響き渡るアナウンスへと耳を傾けて行く。




『幼少からその才気を発揮したクラウン少年は、通常であれば数年掛かる処を僅か一年程度で貴族学校を卒業し、貴族家としてのノウハウを獲得!その上で、今度は自らの心身を鍛えんと欲したが故に、このアルカンシェル王国に於いての冒険者育成学校の最高峰であるガイフィールド学校の門を叩いたのです!

 その結果、現在ではそちらでも生徒会長を務めて生徒達を一丸に纏め上げているだけでなく、弱冠齢十八にして既にその手に『固有魔術』を掴んでいるとの情報も在ります!更に言えば、一月程前に在ったと言う、突然発生したキマイラの変異種を見事に討伐して見せたのは彼である、との情報も寄せられております!

 此度の武闘大会の優勝候補の一人でもある彼が、一体どの様にして華麗なる勝ち様を我々に見せてくれるのか!注目の集まる一戦であると言えるでしょう!!』




 そこまで聞いた段階で、彼のみが残されていた控え室に闘技場の係員が入ってきて手振りで着いてくる様にと促して来た。



 どうやら、タイミング的にそろそろ移動しておかなくてはならない様だ、と判断したシェイドは、特に逆らう様な事もせず、素直にその係員の指示に従って控え室から出て行くと、闘技場の内部に設えられた出入口へと目指して進んで行く。



 そして、後は入場するのみ、となった段階で、それまでのアナウンスよりも明らかにやる気が減衰した、と言わんばかりの様子が窺える声色にて、彼の入場を告げるアナウンスが会場へと響いて行く。




『……え~、続きまして、クラウン選手の対戦相手、シェイド・オルテンベルクの入場です!

 オルテンベルク姓をお聞きの方々は既にお分かりかも知れませんが、先に登場した可憐なるカテジナ・オルテンベルク選手と同様に、かの『英雄』として名高い二人の血を引いたもう一人の遺児がシェイド選手です!

 先に登場したカテジナ選手は、その血筋に恥じない戦いぶりを発揮し、オルテンベルクの才はここに在り!と宣言して見せました!

 果たして、ガイフィールド学校に於いて、無能との判断を下されていた彼が、どこまでクラウン選手を前にして抗って見せてくれるのか、楽しみに見させて貰うと致しましょう!』




 そのアナウンスと同時に、案内していた係員から、何処と無く投げ遣りな雰囲気で入場を促され、それに従う形で会場へと足を踏み入れるシェイド。



 すると、その次の瞬間には、彼の事を観客席から挙げられる言葉の数々が出迎えた。



 …………とは言え、ソレは先程クラウンが入場を果たした時のソレとは大きく異なり、やれ『さっさとやられちまえ!』だの『無能が何でこんな処にいやがる!?』だの『お前がクラウン選手に勝てる訳が無いだろうが!』だのと言った、罵声やブーイングの類いであり、その純度はほぼ百%と言っても良いモノとなっていた。



 基本的には、分不相応にこんな場所へと出てきた『無能』に対しての怒りを発散したがっている者や、ただ単に『雑魚』(と思われる『無能』)が強者にいたぶられる様を見たがって興奮している者が多く見受けられるが、中には彼の凶行や狂乱を目の当たりにして知悉している者も混ざっているらしく、どうか倒されてしまってくれ、と言わんばかりの恐怖が込められたモノも幾つか見受けられる様子であった。



 そうして浴びせられる罵声の類いであったが、当の本人は特に気にする様な素振りを欠片も見せず、涼しい顔をしながら前に開けている通路を進み、闘技場中央部に据えられた試合の舞台へと向けて歩いて行く。


 周囲よりも一段高くなっているソコこそが此度の武闘大会の試合場所であり、ソコから落ちてしまえば場外として失格になるとの事だ。



 基本的に、ルールとしては予選の時と同様(殺しはNG、武器の使用は在り、真剣もOK)であるが、その場外負けのルールだけは追加されている為に、一応ソコに登る前に軽く見て確認してから舞台の上へと登って行くシェイド。その様子は、特に周囲を気にする事も無く、至極自然体なソレである様に見えていた。



 一方、彼が試合の舞台へと上がった事で久方ぶりに相対したクラウンは、何故か酷く緊張している様な様子を見せていた。


 額には汗を掻き、以前よりも窶れたものの未だに整った様相を見せている顔は青ざめ、頻りに唇を舐めながら小さく震えている様子であった。



 …………流石に、この様ではまともに試合にはならないんじゃなかろうか?と思ったシェイドが舞台に立っている審判へと視線を向けるが、特に止める素振りは見せていないながらもクラウンの事は気にしている様子から、あぁそう言う事ね、と納得して期待に胸を高鳴らせ始める。



 そして、何時仕掛けられても反応出来、何時試合が始まったとしても良い様に軽く構えていると、若干ながらも離れていたハズのクラウンが、小さく震えながらも彼の元へと足を踏み出しつつ、その右手を差し伸べて来た。




「…………や、やぁ、シェイド君。久し振り、だね?

 最近は、俺の方も色々と忙しくて、ね?中々学校の方には行けて無かったんだけど、き、君が元気そうで良かったよ。

 ……お、おおおお、俺と君とは、あ、の時の擦れ違いが、最後になってしまっていたから……ど、どうにか仲直り……したいと、思って、いたんだよ……。ち、丁度、良い機会だし、ここは、試合の前に、仲直りの握手と行こうじゃないか!そうだそうしよう!そうした方が絶対に良いから!なっ!!??」



「………………」




 …………何故か、酷く必死なモノに見える表情にて、酷く手汗の滲んだ右手を突き出して来るクラウン。



 絶対に握手する、と言わんばかりの気迫と共に伸ばされたその手を、特に返事する事も躊躇う事もせずに受けて見せるシェイド。



 互いが互いに握り締め合った硬い握手に、試合前の親愛の握手か!と観客席が沸き起こり、再度周囲は喧騒に満たされる。



 …………そして、ソレにより、余程近くで見ている者で無ければ、彼が握手に応じると同時にその貴公子然とした表情をクラウンが醜く歪めた事も、審判に対して試合開始を宣言する様に指示を出した事も、審判が試合開始の宣言を言い終わるよりも先に、クラウンの手の平の内から膨大な魔力による爆発が起きた事も、事が終わるまで観客席には何が起きたのかが伝わる事は無かったのであった……。





卑劣なる仕込み!

突然の爆発!

果たして、どうなる!?



なお、次回は閑話となる予定ですので悪しからずm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いや普通にフラグだよね(笑)
[一言] 面白いですが、主人公の一言一言が長い気がします。 なんかよく喋るなあ…という印象が強いです。 罵倒しながらも、相手の言葉を丁寧に説明するのは少し違和感が。
[一言] シェイドを下げるだけじゃなく、ちゃっかりキマイラ討伐の功績も奪ってるとかさすがゲス家きたない >果たして、どうなる!? 何事もなかったかのように、無傷でふつうに握手したまま立ってる、に一票…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ