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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
三章・反逆者は満を持してその牙を突き立てる

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反逆者は武闘大会を前にして、不躾な来訪者を鼻で嗤う

 


 シェイドがランドン校長からの提案を受け入れてから、数日が経過した頃。



 彼の姿は、カートゥに複数個在る小闘技場の一つに存在していた。



 そこに居る理由としては、当然開催された武闘大会に参加する為、なのだが、何故本命である唯一の『大闘技場』では無く『小闘技場』に居るのか、と言うと、その理由は単純なモノである。



 …………その理由とはズバリ、参加者が多すぎるから、である。



 元より、ガイフィールド学校に所属している生徒は全員が強制参加、と言う事になっていた。


 ソレに加え、王家の方からの横槍で、他校に所属している生徒でも、手続きさえ済ませれば参加できる様になっていたのだ。



 それ故に、参加者が膨大な数へと膨れ上がり、大闘技場一ヶ所でトーナメントを行う、なんて事をしていては時間が幾ら在っても全く足りない、と言う状態になってしまっていた。



 流石に、王族が参加し、国王が直接観覧に来る、と言う様な武闘大会をそんなにダラダラと長引かせる事は出来ない。何より、多忙だと言われてもいる国王が観覧するのだから、限られた時間の内側にて事を収める必要性が出てしまっていた。



 …………ならば、どうするのか?



 そう問われてガイフィールド学校側が出した答えが、コレ。


 カートゥ内部に幾つも造られ、現在も市民の娯楽の一つとして様々な用途に活用されている小闘技場にて、予選、とも呼べるモノを予め執り行い、本選に進む者を絞る事で必要な時間を短縮させる、と言うモノだ。



 カートゥに在る小闘技場の数は十六。


 そして、本選に進める者も、同じく十六。



 誰であれ、どんな身分であれ、外部参加者であったとしても、平等にこの予選に参加を強制される。例外は無いし、シード権による特別枠も、存在していない。


 一つの小闘技場には十数人から数十人(人数はランダム)がそれぞれ割り振られているが、それらは(すべから)く一律に、予選はバトル・ロワイアル方式で行われる。



 …………大方、あの古狸の事だから、ソコで敗れて落ちるのならばソレで良し。そうでないなら、同じ様に勝ち上がって来た連中に倒させればそれでも良し、と言った様な、どう転んでも問題なしな風に考えての所業であったのだろうが、ぶん投げられる方は堪ったモノでは無い。


 そもそも、そんな『数の力で~』と言う様な事態で解決出来る程度の相手であるのならば、特大の地雷を踏み抜く覚悟で彼に声を掛ける様な事はしなかっただろうし、実際にソレを成し遂げている以上は、やはりそう言った認識は持っていた、と言う事なのだろう。多分。



 なんて事を考えながら小闘技場を眺めていると、彼へと向けて一直線に突き進んで来る人影が一つ。


 遠目に見てもソレだと判断出来る黒髪の持ち主は、以前因縁を付けられた『シモニワ』と呼ばれていた男であった。




「…………おい、お前!

 ソコのお前だ、この卑怯者!あの時は、良くもあんな事が出来たモノだな!お前には、人の心や正義感と言ったモノが無いのか!?」




 脇目も振らず、その瞳に何故か『怒り』を宿した状態のままでシェイドへと詰め寄って来るシモニワ。



 周囲から向けられる好奇の視線や、何事か?と気にする者による囁き等を丸っと無視し、大袈裟なまでの身振り手振りを交えてシェイドの事を詰り倒す。




「あの後!あそこに倒れていた皆を救護室まで運んだが、その殆んどが重傷だと診断されたんだぞ!?

 しかも、その内の何人かは冒険者としての将来を断たれ、一人は今でも意識不明のままだ!

 将来を夢見てあの学校に通っていた、罪も無い彼らをそんな状態にして、それでもまだ『自分は関係無い』だなんて態度が取れると思うなよ!?」



「…………シモニワ。マサヨシ・シモニワ」



「……な、何だ!?お前、まさか俺に文句でも在るのか!?正しい事しか言っていない俺に!?

 それに、何でお前が俺の名前を……!?」



「……お前の言う正しさや正義だなんてモノには、欠片も興味は無い。あの時、俺の事を助けなかった『正しさ』だなんてモノに価値は無いし、その報復を妨げる『正義』だなんてモノは存在その物が害悪ですら在る」



「…………は、はぁ?お前、一体何を……?」



「物事の一側面だけを見て、ソレが事態の全てなのだと思いたければ思っていれば良い。

 ……だが、ソレは、俺の目に入らない処でやっていろ。正直、不快で不愉快だ。吐き気すらしてくる」



「…………な、ななななっ!?お前、俺の正義を侮辱するつもりか!?」



「……おや?まだ、理解出来ていなかったか?

 なら、言葉を変えようか。

 正義ゴッコがしたければ勝手にやってろ。但し、俺の見えない場所でやることだ。正直、幼稚な正義感を振りかざすお前の姿は見ていて不愉快なんでね。

 次、俺の『正義』を邪魔するのなら、殺される覚悟を決めた上でやることをお薦めするが?」




 自ら詰め寄ったハズなのに、胸ぐらを掴み上げられた訳でも、直接殴られた訳でも無く、ただただ彼の言葉に込められた怒りと憎悪に気圧され、碧の瞳に込められたドロドロとした絶望と殺意とを目の当たりにして言葉を失ってその場から後退る。



 パクパクと開閉だけはしているその口は、言葉にするのであれば差し詰「お前に一体何が!?」だとか「そこまで言われなきゃならない理由は!?」だとかになるのだろうが、言葉として放たれていないモノに反応してやる程に彼は優しくは無いし、遠目にイザベラとナタリアの二人がこちらへと焦った顔をしながら駆けて来ている事を確認していた為に、背を向けながら失望の意味を込めて『フッ!』と鼻で笑ってやる。



 すると、流石にそこまでされては言葉を失ってもいられなかったのか、背後にて何かを喚き散らしているのが耳に届いて来るが、その時には既に二人が追い付いていたらしく何やら咎められる形で足止めを食らい、追い掛けて来る様な事態にはなっていなかった。



 ソレを気配にて把握しながら、自らが割り振られた小闘技場へと足を進めて行くシェイドは、数日前のランドン校長との最後のやり取りを思い返して行くのであった……。




「…………あれが、王家から送り込まれた、刺客としての『稀人』ねぇ……?本当に、か……?」







 ******







「そう言えば、一つ聞きたい事が在ったんだった」




 直ぐにでも退室する、と思っていた彼が突如として振り返り、そんな言葉を汗を拭っていたランドン校長へと投げ掛ける。



 即座に、どんな無茶な質問が飛んで来るのか、と身構え、普段から浮かべている柔和なソレへと戻り掛けていた表情を引き締めたランドン校長は、手振りで『取り敢えず聞くだけは聞きますよぉ?』と示し、口にしかけていた問い掛けの続きを促す。



 ソレに促される形にて、なんて事は無い、と言わんばかりの様子にて、シェイドは問い掛けを口にする。




「いや、なに。別段、そこまで緊張する必要なんて無いさ。

 ただ単に、俺は『シモニワ』ってヤツについて知りたい、ってだけだからな」



「…………シモニワ、ですか……?」




 訝しむ様にして、そう問い返すランドン校長。



 それに対してシェイドは、彼の反応を確かめる様にしながらも、気軽そうな様子を崩す事無く言葉を続けて行く。




「あぁ、シモニワ、だ。

 家名なのか、それとも名前なのかは知らないが、取り敢えずそう呼ばれていたな。

 俺としては、今日初めて見たが、あの黒髪はそうそう見逃すハズも無いと思うんだが、ありゃ一体何処の縁者だ?」



「…………シモニワ、黒髪、そして、今日初めて見た……となると、恐らくは彼の事でしょうねぇ。

 マサヨシ・シモニワの事で間違いは無いでしょう」



「……ほぅ?知っていたな?

 そうやって、直ぐに出てきたと言う事は、何かしら知っているんだろう?」



「……えぇ、まぁ、否定はしませんよぉ。

 何せ、彼をこんな中途半端な時期に、この学校へと無理矢理編入させてくれたのは、何を隠そうこの国のトップですからねぇ」



「…………へぇ?じゃあ、アイツは王家縁の者、って訳か?」



「……いいえ。どうやら、そうでもないみたいなんですよねぇ……」




 そう言いながら、ランドン校長は机の上に置かれていた書類の内、一番上のモノを手に取って軽く読み上げる。




「……一応、書類の上では王家の遠縁で、少し前まで他国に居て平民と同じ生活をしていたからこの国や貴族家としての振る舞いに疎い。比較的直近に稀人の血が入っているので、彼らが世界を渡る際に手に入れる特殊な力を継承している可能性が高く、ソレの扱い方の学習、並びに覚醒を促す事を目的としてこのガイフィールド学校へと編入された、となっていますが、流石に怪しすぎるんですよねぇ……」



「事前の情報網に、ソレっぽいのが引っ掛かっていなかったから、か?」



「えぇ、まぁ。

 忌憚の無い事を言ってしまえば、そう言った特異な存在は否応なしに目立つモノです。

 ですので、殊更執拗に隠されでもしない限りは、実際に現地で経歴の通りの生活をしていた、となれば何かしらの情報は入ってきていたハズなのですよねぇ……」



「…………で、事前にそう言う類いの情報が入って来る事も無く、該当しそうな相手にも心当たりが無く、かつこの時期にわざわざ編入させると言う事はつまり…………って事か?」



「えぇ、恐らくは、王家の方から送り込まれた、学校内部からの工作員、と言った処でしょうね。

 尤も、ソレが『学校の生徒の質は低い、と言う演出を行う為』なのか、それとも『王族と当たった際に少しでもダメージを減らして次に繋げさせる為の手段』なのか、どちらかなのかソレ以外の何かなのかすら、良く分かってはいませんからねぇ」



「…………成る程、そっちから命が下されていたから、あの二人はアイツにベッタリしている羽目になった、と言う訳か。ざまぁねぇな」




 そうして、知りたがっていた編入生の情報を、大雑把に、とは言え得られたシェイドは、今度こそ二人に背を向けて校長室から退出して行ったのであった……。





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― 新着の感想 ―
おお、転生者ブッコロフラグですか?
[一言] えーと、あの稲庭うど…あぁごめんシモニワ君かwホント幼稚と言うか自分に酔ってるだけの痛い奴だなって思いました。正論言われて何も言い返せず押し黙ったり、喚き散らしたりと何とまぁ器の小さい男だか…
[一言] シモニワの偽善者っぷりもウザいなあ…死…いや、ほら…人間はみんなに愛されているうちに消えるのが一番だって偉い人が言ってたし…ねぇ?(ゲス顔
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