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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
二章・力を手にした反逆者は復讐を開始する

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資金の目処と目標を立てた反逆者は、今後の指針を定める

 


 昼下がりのとある森に、轟音と断末魔の叫びが響き渡る。



 その内の片方を放つのは人間では無く魔物であり、もう片方を放つのは正真正銘人間であった。



 …………しかし……




 …………ビシュンッ!カッ!!ドゴン!!!



 ギァァァァァァァァァァアアアアアッ!?!?




 …………しかし、確実に上級冒険者の手が必要になるであろうオーガの群れとたった一人の人間が激突し、そのオーガ達が断末魔の叫びを挙げながら逃げ惑い、人間の方こそが周囲に轟音を響かせる事となっている、だなんて事を、誰が予想出来たのだろう。


 少なくとも、彼をここに導いた受付嬢や、彼と敵対してしまったオーガ達の想像力の内側には、存在していなかった予想なのは確かである。



 そんな惨劇を作り上げ、繰り広げている当の本人は、次々に闇属性の汎用魔術をオーガに向けて放ちつつ、時折自らの固有魔術である重力魔術を混ぜ込んで殲滅を進めながら何事かを呟き溢す。




「…………チッ!やっぱり、超重力系統は素材の傷みが激しいな……根切りには良いが、金稼ぎにはあんまり向かないと見るべきか……。

 質量操作と重量操作に関しては、まぁまぁ使い勝手も良いみたいだが、直接的な破壊力に欠けるし……力場操作を磨くべきか……?それとも、一層の事全部原型を留める程度に押し潰してしまう方が楽か……?」




 何とも物騒な検証の呟きを溢しつつ、指先から攻撃型の汎用魔術として第五階位に指定されている『レイ』の魔術により、可視化された闇色の光芒を放って迫りつつあったオーガを数体纏めて撃ち抜いて行く。



 その貫通力の高さと攻撃力、術式その物の拡張性とソレに付随する制御難易度から、中位の術式に指定されている『レイ』を無造作に使いこなすだけでなく、複数の光芒を同時に展開してオーガの群れへと放って見せるシェイド。



 ある光芒は着弾と同時に炸裂し、ある光芒は刃の様に移動してその傷口を切り広げて行く。


 更にある光芒は目標の手前で分裂して対象を蜂の巣へと変貌させ、またある光芒は通常のソレよりも太く大きく強くなってオーガの巨体に風穴を空けていた。




「…………こっちはこっちで、『バレット』やら『アロー』やらの系統じゃあ火力不足な上に特に弄れず、『トーレント』まで上げると森ごと更地になりそうだからパス、となると、やっぱり利便性が高いのはコレと『ランス』系統になるのかねぇ……まぁ、こっちはこっちで、調整ミスると消し飛びかねないのがネックだな。

 やっぱり、何かしらの得物が必要かなぁ……」




 唐突に得た膨大な魔力を制御する為の練習と、殲滅上等な状態を除いた『比較的綺麗な状態で倒す』と言う課題に向けた使用魔術の選定を行いつつ、オーガに対しての被害からそう結論付けるシェイド。



 通常よりも長く鋭い物質化させた闇の弾丸を放つ事で強靭なオーガの肌を撃ち抜いたり、通常よりも速度を上昇させた闇によって作られた矢で反応されるよりも先に眼球を撃ち抜いたりするが、そのどちらもダメージは与えられるものの決め手に欠けるらしく、余程上手いこと当てられない限りは一撃で倒れる事はなかなか無い。


 逆に、凄まじいまでの勢いにて放たれた闇の奔流は、数体のオーガを纏めて飲み込んで見せたものの、その付近に生えていた木立ごと、文字の通りに『何も残さず』に更地に変えてしまっており、こちらはこちらで彼の目的には合致していないと言えるだろう。



 その点、先程から使用している、闇色の光芒を放つ『レイ』ではほぼ確殺を約束されているのに、遺される死体にはそこまで大きな損傷を残す事無く倒す事に成功していた。



 今は使用していない様子だが、通常は魔力で射出する『ランス』の魔術で形成した魔力の槍を射出せず、その手に留めた状態で武器として振り回す、と言う事も少し前までは行っており、どうやらそちらは彼のお眼鏡に叶ったらしく、今後も使い処は多くなりそうな見立てとなっていた。



 当然、それら以外にも無数に攻撃型の汎用魔術は存在するが、基本的なモノと言えばそれら、と言う程度にはポピュラーなモノであり、その上癖無く使い易いモノ、として考えるとまず候補に昇るモノでも在った為に、シェイドとしても試すのならばこの辺りから、と言う考えで優先的に使っていたのだ。


 別段、使えないから、と言う訳では無いとだけは断言しておく。




 …………そうして、一通り自らが得た力の具合を確認する事に成功したシェイドは、最後に残された群れのリーダーの首を手にした『ランス』の魔術にて叩き落とすと、持ち込んでいた『道具袋(アイテムバッグ)』へと残っているだけのオーガの死体を回収して行くのであった……。






 ******






「………………お、お待たせ致しました……!

 こちら、解体費用を差し引いた、今回の買取り金額となります……っ!」




 怯えを隠せない程に含まれた声と共に、彼の目の前に小袋が差し出される。



 夕刻に迫る時間帯にギルドへと到着し、そのまま解体・買取り専用のカウンターに赴いたシェイドは、今回の戦闘で入手したオーガの死体を全て買取りに回していたのだ。



 大きさとカウンターに置かれた際の音から、前回キマイラを買取りに出した時よりは余程多く入っているのだろう、と言う事が察せられたが、思っていたよりも入っている訳では無い、と言う事も同時に察する事が出来た為に、カウンター越しに差し出して来た受付嬢へとギロリッ!と効果音がしそうな程に鋭い視線を差し向ける。



 先日の件を生で目撃し、その上にギルドに到着したばかりの時に他の冒険者から絡まれ、その相手を有無を言わさずに叩き潰している場面も目撃していた為に、まるで




『中抜きか、それとも改竄でもしやがったか?あぁ?』




 とでも言いたげな彼の視線を受け、瞬時に恐怖と緊張から背中を冷や汗でびしょ濡れにしながらも、必死に命乞いをする様に内訳の説明に入って行く。




「………あ、あああああああのあのあのあの!

 決して!決して買取り金額を不当に低く見積もっている訳でもなく、支払金かな中抜きしている訳でも無くですね!?こうなっているのには、ソレなりに理由が!?」



「…………ほう?ソレなりに理由が在る、と?

 なら、説明して貰おうか?最初から、最後まで、全部、な」



「……そそそそそそそ、そのっ!

 今回の持ち込みですが!確かに、前回のキマイラと同じく上位種であったので、本来ならば買取り金額も近くなるのですが!今回一つの群れ丸ごと分の素材が持ち込まれた事で、オーガ素材の値崩れが発生する事になりました!」



「…………だとしても、コレは少なすぎるだろう?

 少なくとも、三十体は持ち込んだハズなんだが……?」



「……その、大変申し上げ難いのですが……一部の個体は、辛うじて素材として使える骨や内臓の一部が取れた程度となっておりまして……本来、一番高く売れるのは頑強な革なのですが、製品として加工出来る程の大きさが取れるモノがあまり多く無く……」



「………………まぁ、そう言う理由なら、心当たりが無いでも無いからなぁ……」



「…………あの、私が申し上げるのも違うかも知れませんが、次回からはもう少し綺麗な状態か、もしくはパーツが大きく残っている状態で持ち込んで頂けると、こちらとしても高く買い取る事が出来るのですが……」



「……まぁ、仕方無い。

 次回からは、気を付けておこう」



「…………ご了承頂き、ありがとうございます。

 内訳ですが、革をまともに使える個体が十体で、その他が端切れや内臓、骨等の部分としてのみ素材として買取り査定を行った為に、合計で金貨換算にて千百枚となっております。

 お納め下さい」




 そう言って、受付嬢が改めて押し出して来た小袋を手にするシェイド。



 口を弛めて中身を確認すると、ソコには聞いていたソレには届かないながらも、それなりに大量に入った見慣れた金貨に加え、数枚の見慣れない色合いをした硬貨が鎮座していた。




「流石に、千枚を超える換金額でしたので、持ち運びの事も考えて約八割程度は金貨では無く白金貨にてお支払させて頂きました。

 なので、内訳としましては白金貨九枚と、金貨二百枚となります」



「…………心遣いに感謝する。では、コレで」



「……あ、あの!ご利用ありがとうございました!」




 謝辞の言葉を口にして背を向けるシェイドに対し、最初の恐怖を振り払う事が出来たのか、それとも基本的には紳士的な行動を取っている彼の姿に恐怖も薄れたのかは定かではないが、ギルドに多大な利益をもたらした彼に対して見送りの為に頭を下げる受付嬢。



 そんな彼女の行動に、幾分か冒険者ギルドその物に対して抱いていた不信感を薄れさせると、小袋を自らが持つ『道具袋(アイテムバッグ)』の中へと放り込み、ギルドを後にする。



 ……そして、未だに買い手が付いていない、と言う事で住居として使っている生家へと足を向けたシェイドは、今回の件で得られた教訓と、このアルカンシェル王国では解決するのが難しいであろう問題を再確認して行く。




「…………やっぱり、俺の扱う魔術だと、相手を大雑把に殺しすぎるみたいだな。ソレに、近接された時の対抗手段も無いと不味い。

 ……このアルカンシェル王国は流通の中心に在る国故に、ある程度までなら金に糸目を付けなければ何でも手に入りはするが、それでも一級品が限度。俺が求める様な、逸品は早々手に入りはしない。

 …………今後の事も考えると、やはり最低限の資金だけ作ったら、さっさと国を出るのが一番良い、か……」




 効率良く稼ぐ為には、得物が要る。


 が、その為には先に稼いでおく必要が在る。



 金をとるか、効率をとるか。



 その二択に対して彼は、効率を求める為の土台として、まず先に資金を稼ぐ事を、夕闇が迫る路地にて己の胸に誓うのであった……。




次回に閑話を入れて次の章に移る予定です

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