表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
二章・力を手にした反逆者は復讐を開始する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/226

反逆者は校長と対面し、その牙を剥き出しにする

 



 …………コンコンコンッ!



「失礼しま~す!」




 一応、とばかりにノックだけ先にしたシェイドは、特に内部からの返事を待つ事無く、形ばかりの入室の断りを入れてから勝手に扉を押し開く。



 本来であれば、ノックして内部からの返事を待ったり、その上で入室の断りにも幾つかのルールが在ったりするのだが、そも元々呼ばれなければならない謂れは無かったシェイドには、そうして相手に対して敬意を払わなくてはならない理由は欠片も無かったが為に、それらを守らずに敢えて乱雑な手段に出る事にしたのだ。



 そうして、半ば無理矢理押し入った校長室の内部には、応接用のソファーセットに腰掛けている、柔和そうな出で立ちをした老人が一人、彼の方へと微笑みを浮かべながら視線を向けていた。




「ほっほっほっ!おやおや、随分と元気な様ですねぇ。

 待ちきれなかったのかも知れませんが、ノックをした時は相手が中から返事をするのを待つモノですよぉ?

 それと、君を迎えに行かせたゲレェツ先生はどうしましたかぁ?一緒では無かったのですかねぇ?」



「はっはっはっ!校長先生こそ、お年の割にはお元気そうなご様子で。

 こちらは何の用も無く呼び出されたのですから、多少そこら辺のマナーが大雑把になったとしても、ソコは年長者として笑って流すのが寛容さ、と言うモノではないのですかな?

 それと、ゲレェツ先生でしたら、ついさっきまでは同行していましたよ。まぁ、今回呼び出しを受けた件について質問したら、血相を変えて何処かへ行ってしまいましたけど、ね?」




 『礼儀のなっていない、ガサツなガキが調子に乗るなよ』



 そう、言外に伝えて来た校長に対してシェイドは



 『呼びつけておいて、あまりふざけた事を抜かすなよ老害』



 と、こちらも言外に意味を伏せた状態でカウンターパンチを叩き込んで行く。



 自らの発した嫌みを完全に理解されただけでなく、それと同じ様な内容にて反撃される事となった校長は一瞬驚きで目を見開く事になったが、その次の瞬間にはそれまでの態度と同じモノに戻っており、特に動揺していたりする風にはとても見えなくなっていた。



 そんな、この冒険者を育成する事を目的としたガイフィールド学校の校長であり、かつては自身も現役の特級冒険者として様々な活躍を行い、その上でラヴィニアに引き継ぐまではギルドマスターの責務を全うした経歴を持つ『怪物ランドン』と呼ばれた老怪、ランドン・ダンタレスに対して、欠片も遠慮する事も威圧される事も無く、至極詰まらなさそうに舌打ちを溢しながら、促されるよりも先にソファーへとドカリと腰掛けるシェイド。



 若々しい勢いと未熟さ、それに加えて言葉の裏に隠された真意を容易く見抜く洞察力にその口元の笑みを深めたランドン校長を、眉を潜め訝しむ様にして眺めたシェイドは、先のやり取りを前置きとして直接本題に切り込む事にした。




「……それで?一体、俺はどんな容疑でどんなお仕置きを食らう事になるんですかね?」



「ほっほっほっ。まだ、儂は何も言ってはいないのに、何故そう断定するのですかなぁ?

 何か、そうされる疚しい心当たりでもお在りなのかなぁ?」



「……はっ!惚けるなよ、爺。

 この状況で呼び出しを食らえば、どう言う用件なのか?なんて事は大方の予想位は嫌でも付くだろうがよ。

 それとも、本当に惚けて脳ミソ蕩けたか?なら、さっさと介護要員呼びつけるなり、施設に入るなりしておいた方が良いぞ?」



「…………ほっほっほっ、随分と口の悪い子供ですねぇ……。

 ですが、物事の裏を読んで真実を見抜くその洞察力は、中々見処は在りそうですねぇ。流石、あの二人の子供、と言った処でしょうか?」



「……そんなクソどうでも良い事だけ並べるんなら、俺はもう帰らせて貰うが?どうせ、呼び出した用事、ってヤツも大した事じゃねぇんだろうし、な」




 流石に聞き流せない言葉を放たれたシェイドは、話はここまでだ、と言わんばかりの態度にてソファーから立ち上がろうとする。


 確実に、そのまま背を向けて扉へと向かうであろう彼の雰囲気を感じ取ったからか、これからしようとしていた駆け引きを取り敢えず引っ込めると、溜め息と共に本題を切り出すランドン校長。




「……はぁ~、まったく……これだから最近の若いのは、とは言いたくは無いですが、そう言う堪え性の無い処は直すべきですよぉ?そうでないと、とんでも無い不利益を被る事になりかねないですからねぇ。

 ……さて、本題に入りましょうか。クラウン生徒会長の実家であるゲドリアス家は、君の処分を要求して来ました。当然の様に、退学処分を、とね。

 まぁ、まだ了承はしていませんが」



「…………あ?了承はしていない、だと?」




 その言葉に、不信感と警戒感を顕にしながら、視線を鋭くするシェイド。


 上げられ掛けていた腰はその場に固定され、彼の内心が部屋を出る(引く)腰を下ろす(進む)で迷っている、と言う状態を何よりも雄弁に語っていた。



 そんな彼の様子に笑みを深めたランドン校長が、仕草で席に着く様にと促して来る。



 このまま去る事は、既に出来なくなった。


 そう判断してしまったシェイドは、苦々しい顔を隠そうともせず、着かざるを得なくなってしまったソファーへと再び腰を下ろすと、手振りで続ける様にランドン校長へと促す。




「…………まぁ、今のには思う処が無いでもないですが、取り敢えず続けましょう。

 で、儂がまだゲドリアス家からの要求を了承していない理由、でしたよね?」



「…………あぁ、そうだ。

 この期に及んで、俺からの訴えを聞き届けなかったのだから、その公平性を保つために黙殺した、だなんて戯言を聞くつもりは無いし、信じるハズも無いなんて事は、言わなくても分かってるハズだが?」



「………………その点に関しては、儂の手落ちだった、と言わざるを得ないでしょうねぇ……。

 君からの訴えを聞き届け、事が小さい内に対処しておけば、ここまで事態が面倒な事になるのは避けられましたからねぇ……」



「……はっ!白々しい。

 そうやって、心情的に同情を煽るのは止めて貰おうか?臭すぎて反吐が出そうだし、何より見ていて不愉快だ。

 それこそ、反射的に殺したくなるほどに、な……!」



「……成る程、成る程。確かに確かに、これ程の魔力圧であれば、強ち戯れ言、と流す訳にも行きませんねぇ……。

 これ程であれば、確かに彼女では、ラヴィニアでは抑えが効かなかった、と言うのも頷けますねぇ。彼女とは、一番相性が悪いでしょうからねぇ」




 柔和そうな表情を崩す事は無かったものの、その額から一筋の冷や汗を滴らせるランドン校長。


 目の前の少年(シェイド)から放たれる魔力の量と質、そこに込められた殺意、更に言えば密かに発動直前の状態にて待機させて在る、複数の高位汎用魔術の存在を肌で感じ取り、昨日冒険者ギルドにて起こったと聞いている惨劇が、誇張でも欺瞞でも無く真実であったのだ、と言う事を改めて強制的に確信させられる事となってしまう。



 思わず、ゴクリッ、と生唾を飲み込んで乾いた喉を僅かにでも潤すと、目の前で腕を組み、応接セットのテーブルに不作法に足を投げ出して組み合わせた上で、更に『誤魔化せばその瞬間にお前を殺す』と視線で訴え掛けて来ているシェイドへと、どうにか震える事だけは抑えて続きを口にする。




「…………さて、儂が君を即座に退学処分にして、貴族家の中でもかなり規模の大きなゲドリアス家から受けるであろう利益供与を受け取らず、その上で予想される嫌がらせの類いを受け入れてまで処分を下そうとしていない理由、だったかね?

 それは、勿論そうする理由が少ないのと、そうしない方が儂に取っては利に繋がりそうであったから、と言う訳でしてねぇ」



「…………利、ねぇ……?」



「えぇ、利、ですよ。

 このまま、言われるがままに君を退学にすると、君としては儂やこの学校に対しての怨みが増幅されるでしょう?

 そうなると、この先大きく躍進するであろう君に対しての不興は、出来る限り買わないでおく方が良いですからねぇ。それに、そうやって活躍した君が、このガイフィールド学校の卒業生である、と言う事になっていた方が、よりこの学校に対しての評価も上がりますし、ゲドリアス家から寄せられるであろう寄付やその他の利権よりも、より大きな利益を儂らにもたらしてくれるのですよぉ。

 お分かり、頂けましたかなぁ?」



「…………はっ!んな処だと思ったよ!

 んで?その、クソッタレなクソ爺のクソ下らねぇ妄想の根幹として、アンタの下に俺が付かなきゃならないハズだが、ソレを俺がしてやらなきゃならねぇ理由は何だ?

 この、クソ下らねぇ学校をクビにならない、ってだけでアンタみたいなクソ爺の手下にならなきゃならねぇって抜かすつもりなら、こっちから願い下げだが?」



「……ほっほっほっ、手厳しいですねぇ……。

 儂としては、儂の直弟子としての扱いと、それに伴った諸々の権限、でどうにか頷いて欲しいのですけどねぇ……。

 君のその膨大な魔力、未だかつて人類が成し得ず、かのお伽噺に語られる『魔王』のみが同等の規模での魔術行使を成し遂げたと謳われる『第九階位』の汎用魔術ですら、単独で行使出来るであろう程の魔力量。君は、まだソレを完全に制御出来てはおらず、まだもて余しているのでしょう?その証拠に、君がさっき咄嗟に展開しかけたのは『第七階位』のソレであったハズです。制御しきれていないと言う、何よりの証拠でしょう?

 なら、それの活用法を得て完璧に制御する、と言う事は、君に取っては大きな利益となるかと思ったのですけどねぇ……」



「それこそ、余計なお世話、ってヤツだよ。

 そもそも、あの糞野郎共の恩師にして、あのクソウサギの先達ってだけで厄い案件のアンタに、なんで俺まで師事しなきゃならねぇんだ?

 自分の事は、自分でやる。例え、ソレで誰かの迷惑になろうと、邪魔になろうと知った事かよ。俺は、俺のやりたい様にさせて貰う。これは、絶対だ」




 そこまで言い切ったシェイドは、今度こそソファーから立ち上がると、ランドン校長から向けられる視線をその背で受けながら扉へと移動し、特に退室の断りも入れる事無くそのまま校長室を後にするのであった……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここで『退学を承認する』の言質を取ってないから、後々面倒な事になるそうだな……(笑) というか、学校に行かなければ単位とかで無事退学出来るか(笑) そしてそれを見過ごさなければ『平等』が崩…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ