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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
終章・反逆者は己が意思を貫き通す

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反逆者は魔王へと向けて渾身の一撃を放つ

 


 苦々しい表情を浮かべながら、額に深いシワを寄せつつ青筋を立てていたサタニシスが、展開していた術式を解除する。


 流石の『魔王』であり、かつ『魔王』の代名詞とも呼べる第九階位の術式を本気で扱っている、とは言え、その魔力消費は馬鹿にはならないし、何より効果が無い事をし続ける意味が見出だせなかった、と言う訳なのだろう。



 そんな彼女の行動を目の当たりにしたからか、口許に半月の嗤みを浮かべていたシェイドも、一切の様子を変える事無くその場から歩み出し、それなりに開いていた両者の間の距離を僅かとは言え詰めて行く。


 その最中にて、互いに申し合わせた様に二人は言葉を交わし始める。




「…………ねぇ、シェイド君?

 君、確かに言ったよね?逃げも隠れもしないから、互いに一発ずつ撃ち合うのはどうだ?って」



「あぁ、確かにそう提案したな。

 一応は、逃げてもいなかったし、隠れてもいなかったハズだ、何か問題が?」



「寧ろ、無いとでも?

 完全に、逃げてもいたし、隠れてもいたとおもうんだけど?違う?」



「それこそ、失敬な。

 確かに俺は、逃げも隠れもしない、とは言ったぞ?でも、別段避けもしないし防ぎもしない、とは言ってはいないハズだ。

 違うかな?」



「…………そう、と言えばそうだけれども、流石に詭弁が過ぎるんじゃ無いのかな?

 言葉遊び、で済まされる範囲の事では最早無い、と思うのだけど?」



「だが、別段禁じられていた手を取った、と言う訳でも無いし、可能とされていた範囲の内側で持てる手段を講じて全力を出したに過ぎない。

 寧ろ、可能性を潰す為にそれらを禁じなかった、と言う事にこそ自身の落ち度が在ったと見るべきなんじゃないのかね?」



「でも、まさか君が『位相転移』が出来る、だなんて事は思う訳が無いでしょう?

 元々、魔族(私達)であったとしても滅多に使える者が出ない事で有名な、個人の資質が何よりもモノを言う超々高難易度な術式なのよ?

 それが、まさか魔術として編纂されていて、しかも君がその適性を持っていて、その上で君が習得している、だなんて予想できるハズが無いでしょうよ?

 普通、有り得ない事態・有り得ない確率ってモノは、元々考慮から外させるのが通例でしょうに」



「だが、現にその『有り得ない可能性』を俺が持っていた事によって、こうして無事に居られる訳だ。

 そこに、反則も卑怯も糞も無かろうよ。

 それに、どうせアレだろう?お前さんも、その『位相転移』とやら、使おうと思えば使えるんだろう?多分だけど、な」



「…………まぁ、消費する魔力だとか、制御の難易度だとかの問題であまり使いたくは無い手段では在るけど、それでも使えない事も無いのは確かね。

 それで?ソレを知った以上、自分の魔術も無効化されるのだろうから、ここは公平に引き分けって事にしておこう、だとか言うつもりなのかしらね?

 流石にあれだけ煽っておいて、その物言いが通るとは思っていないのでしょう?」



「俺としては、水入りって事にして一旦引いてくれても構わないんだがね?

 そうすれば、これ以上俺がこの戦いに介入する理由も無くなるからな。

 その方が、お前さんとしても都合が良いんじゃないのか?」



「『魔王』や『魔族』としての私的には、それでも構わないのだけどもね?

 でも、『女』としての私としては、流石にキチッと決めておきたい事だからね。だから、君にそのつもりが無かったとしても、これだけはハッキリとさせておきたいのよ。

 分かってくれるわよね?」



「…………はぁ、これも、惚れた弱味、ってヤツなのかね。

 じゃあ、覚悟しておけよ?俺だって、愛した女を傷だらけにしたり、血塗れにしたりするのは不本意なんだから、な。

 精々、耐えて見せろ」




 自身の納得の行く位置まで移動出来たらしいシェイドは、サタニシスからの言葉に対して顔をしかめながらも、最終的には溜め息を一つ吐いてから表情を引き締めると、それまでも展開を維持し続けていた巨大な魔法陣へと解放した圧縮魔力を注ぎ込んで行く。


『位相転移』の魔術と平行して展開を維持し続けていた為に、彼の魔力は枯渇寸前であり、その負荷から耳や鼻からの出血が続いていたが、ソレがどうしただったらなんだ?と言わんばかりの様子にて魔力の注入を続行し、遂に発動させるに至るだけの量を注ぐことに成功する。



 端から見れば、確実に『半死半生』の類いである状態であり、かつその魔力は文字通りに『枯渇寸前』となってしまっているが、その瞳は未だに強い反駁心を抱いたままであり、強い意思の光を宿したままとなっていた。


 そんな彼の瞳と視線を交わらせたサタニシスは、自らが言い出した事ながらも、確実にこれで様々な事に対して決着が着く、と言う確信と、彼程の存在が、自身の最愛として認められる異性が自身の為にここまでしてくれている、と言う事実にその大きな胸を高鳴らせながら、まるで抱擁を受け入れる様に両腕を大きく広げて彼へと告げるのであった。




「さぁ、君の番だよシェイド君!

 君の全てを私にぶつけて来ておくれ!その上で、私は君の全てを受け止めて見せると約束しようじゃないか!」



「…………良いだろう。

 なら、コレを食らっても無事に立っていて見せろ。死ぬことは、許さんぞ?【黒滅界壊】」






 ******






 シェイドが放った鍵言により、彼が展開していた魔法陣が激しく明滅を繰り返しながら急速に回転をし始める。


 そして、その中央部に、この世のモノとはとてもではないが思えない様な、真っ黒な球体が発生する。



 この世界にここまでの純度の『黒』が在るとは思えない程に黒いソレは、そこに在るだけで周囲の空間に目に見える形で『歪み』を発生させる程の存在感と圧力とを纏っており、一目見ただけで『アレはヤバい!?』と見る者全てに抱かせるだけの圧倒的な何かがそこには在った。



 当然の様に、ソレが放たれる事によって効果を発揮し、取り返しの付かない事態へと変移するよりも先にその『ヤバさ』を感じ取ったサタニシスは、残る魔力をかき集める事で自身の身体を『位相転移』させる事にした。



 …………最強の防御とは、一体何だろうか?


 その疑問に対する答えは数多在れども、彼ら魔導師の一派はかつて一つの答えに行き着いた。



 ソコに居て、ソコに居ない。


 そんな状態となってしまえば、全ての攻撃は意味を成さなくなるのでは無いだろうか?



 そんな事を考え、ソレがどうすれば実現化能であるのか、を研究し、遂にはソレを実現する事に成功したのだ。



 原理としては、至極簡単。


 闇属性の空間支配の権能を用いて、術者の存在そのものを『この世界』から()()()()()()()()()()()()()と言うだけの話である。



 同一空間の中に居れば致命的な状況であったとしても、ほんの紙一枚だけであったとしても空間の位相をずらしてしまえば、一切の影響を受けずに済む。


 何せ、紙一枚程度、とは言え『そことは別の空間』『隣り合わせとなっている別の世界』に存在している事となるのだから、物理的な距離は存在していなかったとしても、全く以て驚異とは成り得ない、と言う訳だ。



 隣接している別の空間、にまで干渉する事を可能としている類いの攻撃であれば話は変わるかも知れないが、そうでないのならば基本的には驚異となり得る事は有り得ないのだ。



 故に、そうして『位相転移』を発動させたサタニシスは、自身の無事と何事も起きはしないだろう、と言う事を確信すら抱いていた。




 …………しかし、その予想は呆気なく打ち砕かれる事となってしまう。




 彼が展開した魔法陣から、それまで形成されるだけであった黒い球体が放たれ、自身の間近へと迫りつつあった時にも、彼女は平静を保ったままであった。


 しかし、ソレが『位相転移』を使用する前に彼女が立っていた場所の近くへと到達し、その球体状であった本体を内側から崩壊させ、空間その物に真っ黒な『孔』としか形容できないモノを開けた段階にて、彼女は感じるハズの無かった『異常』を感じ取る事となったのだ。




 そう、それこそ、自身もその『孔』へと、引き寄せられて行く様な感覚を覚えてしまったが故に、である。



 先にも述べた通りに、基本的に『位相』が異なる場所に対しては何らかの干渉を行う事は難しいし、基本的に『不可能』な類いの事柄でもある。


 ………故に、本来であれば如何なる魔法・魔術を行使されたとしても、術式を解除した時ならば未だしも発動している最中に於いて、何かしらの影響を感じ取る、だなんて事は本来ならば起こり得ないハズであるにも関わらず、だ。



 その事実に、流石のサタニシスも呆然としそうになるものの、徐々にその漆黒の『孔』の方へと向けて引き寄せられながらもどうにかしてソレに抗おうと試みて行く。



 が、先の『極小の虚無(ヴォイド・セル)』に続いて『位相転移』まで使用している上に、片方は現在進行形にて使用し続けている状況に在る為に、魔力にも処理能力にも多大な負荷が掛かり、また掛かり続けている状態となってしまっていた。


 その為に、普段であれば、もしくは行使したのがどちらかのみであったのならばまだ話は違ったのかも知れないが、流石の彼女であったとしても、それらを連続にて行使してしまっていては碌に抵抗を示す事すら出来ずに徐々に『孔』へと向けて引き寄せられる事となってしまう。



 それでも彼女は容易に諦める事を良しとはせず、どうにか打開出来る手立ては無いものか!?として色々と試してみるものの、やはり有効な手立ては見付ける事は叶わなかった。


 故に、過負荷による流血によって顔面を真っ赤に染め上げているシェイドの目の前にて、彼が開いた漆黒の『孔』へと向けて、忸怩たる表情を浮かべながら吸い寄せられる事となるのであった……。




次回、決着(多分)

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